涼月式浦島太郎(下)
「ところでセンよ、どうやってそこまで行くんだ? 当然、城は海のそこなんだろう? 遠泳は嫌だぞ?」
二人は宝刀片手にさっきまでいた浜に来ています。
「ご心配には及びません! わたくしが乗ってきた乗り物があります!」
センはそう言ってスタスタと磯の方に歩いて行ってしまいます。仕方がないので、太郎もセンに従って歩いていきます。
「これがわたくしの乗ってきた乗り物です!」
磯の方に着くと、そこには一隻の黒光りする潜水艦が係留してありました。
「!」
流石の太郎も開いた口が塞がりません。亀なんだから泳げよとか、この時代にこんな物あるか! とか言いたい太郎ですが、色んなものが喉の辺りで渋滞を起こしてしまい、何一つ出てきません。
「さぁ太郎様! これであのにっくき乙姫をミンチにしに参りましょう!」
そう言って、センは太郎の手を引いてハッチから艦内へと潜り込みます。
「急速潜航!」
潜水艦は呆気にとられる太郎を載せて、海の中へと潜って行きました。
因みに、センの艦は伊号潜水艦でした。
「太郎様! もうすぐ竜宮城です!」
一時間ほど後、ヘッドホンを付けたセンが叫びます。どうやら太郎の横で副長をやっている様です。
「よし! 攻撃開始!」
一時間ですっかり順応した太郎が、発令所に仁王立ちして叫びます。艦の外では、何も知らない竜宮城で、平和な日常が繰り広げられています。
「諸元入力して下さい! 発射雷数6! 使用発射管1番から6番まで!」
平和をぶち壊すべく、センがてきぱきと命令を下します。
「太郎様、発射準備完了です!」
心の奥底まで完全に太郎の奴隷と化したセンが言います。
「撃て!」
それを聞いた太郎は容赦なく発射命令を下します。
発射管から飛び出した6本の魚雷は、全て竜宮城に命中します。突然の攻撃に、周囲の魚たちは無慈悲に引き裂かれ、辺りは血の海です。
「両舷全速! 突撃します!」
センはその機を逃さずに、艦を港に滑り込ませます。
「抜刀!」
なぜか空気のある城内に到達すると、太郎はすぐさま外に躍り出て、宝刀でバッサバッサと、センと同じような半神半魚たちを斬って捨てていきます。市民も兵士も関係ありません。増援の兵士だろうが民間人だろうが、手の届く範囲の者は全て切り捨てます。御伽話にあってはならないグロテスクさです。
その後ろでは、センが港に泊めてある潜水艦に侵入して、手際よく弾薬庫や機関部にC4爆薬を仕掛けていきます。これまた時代背景やキャラを完全に無視した、現実の特殊部隊も真っ青の、御伽話にあるまじきリアルさです。
「おらぁ!」
「点火!」
ドカーン。二人は係留してある潜水艦は燃え上がるのを背景に、屍の山を築きながら城の奥へ奥へと進んで行きます。
「貴様ら! 妾を乙姫と知っての狼藉か! セン! 貴様は妾を裏切る気か!」
二人はついに乙姫の元にたどり着きます。確かにちょっと化粧は濃いですが、人妻もののAVに出てきそうな程度には美人な乙姫が、額に青筋を浮かべて叫びます。
「クタバレクソババァ! 平和に泳いでるとことっ捕まえて、毎日毎日いびり倒してくれやがって! こちとら日ごろの恨みが爆発寸前なんだよ!」
センが浜での様子とは打って変わって、とんでもない勢いでシャウトします。キャラが完全に崩壊してしまっています。
「死ね! クソババァ! こちとら年増に用はねぇんだよ!」
太郎が宝刀を抜いて切りかかります。女性に対する発言とは思えないような暴言を吐きながら縮地で一気に接近すると、乙姫の首を叩き斬ります。
傷口からとんでもない量の血を吹きあげる乙姫。ところが、その首は地面には落ちませんでした。
「ふ、ははははは! バカめ! 妾は海神が一人、乙姫なるぞ! そのような何の変哲もない刀で斬られたところで、どうということはないわ!」
高笑いしながら首だけで宙を舞う乙姫。そんな彼女とは対照的に、太郎はいたって冷静に梵字を唱えます。その横では、センが笑顔で手を振っています。きっと、お前がいなくなって清々するぜ、的な笑顔でしょう。
「オン!」
その瞬間、今まで余裕ぶっこいていた乙姫の顔が歪みます。
「ぬぅ! きさま! まさかそれは、宝刀か! しかも、相当高位の坊主の気が込められている! おのれ! そんなものどこで手に入れた!!」
口上を垂れてる乙姫の身体がみるみる崩れていきます。黒い泡が傷口から浮き上がり、融けて黒い粘液と化す身体。ついでに首の方も、空中でアイスクリームみたいに融けていきます。それはもう、良い子の皆が見たらトラウマものです。
「きさ……ま……ら……」
あっさりと悪(?)は滅びました。
「さて、セン、この城の玉手箱の貯蔵庫はどこにあるんだ?」
太郎は刀の血をぬぐうと、何事もなかったかのように、笑顔で言います。それはもう、これまでに無いほどの笑顔です。
「はぁ……それならこちらで御座いますが……」
もとに戻ったセンがキョトンとした顔で言います。
「よし、案内せい!」
もしかしたら、人間はエロいこと考えている時が一番生き生き出来る生物、なのかもしれません。
「ゲヘヘヘヘ! 叫んだって無駄だぜ! 助けなんか来ないからな!」
太郎は四つん這いになったセンの髪の毛を掴み、首元に刃を突き付け、後ろから覆いかぶさっています。言うまでもなく、腰はヘコヘコしています。
「あぁ……いやぁ……センに、ひどいことしないで……はぁ、ン、いあなの……いますぐ……アッ、抜いて……」
センが絶望的な顔で言います。その顔からはすっかり生気が失われていました。
「くぅ、はは……その絶望的な表情、本当は、誘ってるんだろ?」
ですが、太郎はさらに興奮していきます。もはや、ゴールはすぐそこです。
「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ダメなの! 今すぐやめててえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
センが最後の抵抗とばかりに悲鳴を上げますが、むしろ太郎を興奮させるだけです。もう、どうにもなりません。
「いやぁ、やっぱああいうのは燃えるな。セン!」
「はい、太郎様……」
アンニュイな空気が漂う中、二人は荒い息を整えながら布団に横になっています。どうやら、さっきのはそういうプレイだったようです。
「太郎様、あの……」
センが運動した後だから、という理由だけでは説明ができないほど顔を真っ赤にして、太郎の胸にしなだれかかります。
「ん? なんだ、セン?」
太郎も、センを愛しむように頭を撫でてやります。
「あの、これから先、人が滅ぼうと、世界が滅ぼうと、ずっと一緒ですよ?」
「ああ、勿論だ」
竜宮城で乙姫を倒した後、二人は竜宮城の宝物庫を物色し、玉手箱を見つけ出した二人。そこから神になるものを幾つか見繕うと、二人はお互いに向かって煙を浴びせかけます。すると、センは完全な神となり、ついでに太郎も神になってしまいました。
こうして、不老不死で相手の命令には絶対に逆らえない身体を手に入れた二人は、人類が滅びた後も、世界が滅びた後も、パコパコパコパコ、いつまでもいつまでも淫らに楽しく暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。




