第六話 帰郷……そして別れ
話を聞いてみた所、部屋に居たらツバキが入ってきて、そして真っ黒に汚れていたから洗ってあげようと思い立ち、風呂場に連れていき洗い始めて水で泡を流そうと思ったら逃げ出し、なんとか逃げ惑うツバキと戦い、捕まえた所で遊び始めてしまった……と。
……なるほど。
「ふむ……大体わかった。それで、お前はなんて名前だ?」
名前を聞いてみたら何故か少しだけ悲しそうに微笑んだ、うむ?何故だ?
「わたしはね、ミルリーフって言うんだよ、お兄ちゃん。よろしくね」
なるほど、ミルリーフか……しかし、何だろうか……何か違和感が………
……っ!? 分かった!
「よし、ミルリーフよ、さっさとツバキを風呂場に連れていき、一緒に泡を流してこい。 話はそれからだ」
きっと泡が目障りなんだな。うむ。
そう俺が伝えるとミルリーフは暴れるツバキをしっかりと抱き締め「待っててね」と言い残して、風呂場らしき部屋に入っていった。
「ふむ、どっかで見たことあるような気がするんだよな……まぁ、取り合えずここから脱出するか、地球に戻る手段を見つけなければ」
しかし、勝手に部屋を物色するのも悪いし、出るのを待ってから話してみるか。そう思い立ち近くにあった柔らかそうなソファーに座ってみた。
思ったよりソファーは柔らかく、30㎝は沈んだな。
「おお、新感覚だ。まさかここまで柔らかいとは、しかし、ここまで沈みこむと逆に座りずらいな」
しかも少し横幅も縦幅も広く地球のベットより寝やすそうだな……やることも特に無いし、少しだけ眠らせて貰おうかな。
思い立ったが吉日とばかりに俺はやたらと柔らかいソファーに身を沈め、段々と意識も沈んでいった。
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真っ暗だ。
……でも声が聞こえる
………誰かが泣いてる、そして話しかけてる。誰に?
…………わからない。でもその声は聞いていてイライラする。何故かはわからない、分からないが泣きながら…悲しみながら発せられているその声は本当にイライラする。
ムカムカして、イライラする。そんな暗い声は聞きたくない。聞いてるこっちが何故か泣きたくなる。
そして段々と真っ黒にも関わらず暗くなっていく、なんか不思議な表現だな。
そして全てが真っ暗になったとき、身体中にズシリとした重さが走った、そして何故か息苦しくなり、呼吸が困難になっていく……
まるで底なし沼に頭まで入り、さらに押し付けられるような、そんな感覚だ………
不思議と身体が軽くなり、段々と息もしなくてよくなり……いや、ダメだろ、死ぬだろ。
大丈夫だ、死ぬものか、地球にかえるかあの異世界でやることが見つかるまで………
「まだ死ぬわけにはいかない!!」
目が覚めて、飛び起きたら目の前には………
「あら、しぶといわね、大丈夫かしら?酷くうなされていたわよ?」
ーーさっきのオカマ口調の奴が居た。
なんだ、こいつの口振りからすると俺が死にかけたのはこいつのせいか?
「あらら、ばれちゃったかしら?うふっ♪ごめんなさいね、でも残念ながら規則なのよ、この程度で死んでたらあの世界では何も出来ないわよ?」
「わかった、それはもうどうでもいい。それより地球に帰りたいんだが」
俺は一応何となくわかってることを聞いてみる。……因みにこいつの容姿は、ピンクのフリフリエプロンを着けたムキムキでかつガチでムチムチなおっさんだ。
「あ、因みにワタシは異世界オビュアリーの神、よく言われる世界神って奴ね」
お前のその取って付けたような自己紹介は聞いてない、地球に帰れるかどうか聞いてるんだよ。
「そうね~、頑張っても10分が限界ね、10分たったらまた異世界に戻されちゃうわね。こっちの世界に身体が馴染んじゃったのよ、ごめんなさいね」
わかった、10分でいい、地球の俺の家に帰せ、頼む。
「わかったわ、これは他の子には内緒よ?わたしはね貴方が気に入ったからがんばってあげるんだからね?」
そうか、まあ礼は言っておこう、だが俺にその気はない、だからミルリーフが来る前にさっさと地球に戻せ。
「あらあら、そうね、じゃあ行ってらっしゃい」
そして俺は光に包まれオカマに見送られながら地球に帰った。
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目を開くとそこは見慣れた俺の家のリビングだった、しかし時間が惜しい。さっさと必要なものをかき集めよう。
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リュックに必要なもの全てを詰め込んだ俺はひと息つく。
「………よし、もういいだろ。時間もちょうどいい」
しかし、残念な知らせがある、中学の連絡網に俺と織と輝彦の家の名前はなかった。完全に隠蔽されてる。つまりだ。
ーー俺達が地球に帰れる可能性はほぼ皆無。
そして、時が来たのか、また光に包まれた。
じゃあな、我が家。
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「おかえりなさい、最後の地球はどうだったかしら?」
帰ってきて早々オカマが話し掛けてくる、俺はそれを無視しリュックを置き、ソファーに横になる、そして答える。
「特に感想は無い、それより、さっさとオビュアリーのことを説明しろ」
こちらとしては、さっさとこの茶番を終わらせて異世界に旅立たなければ。
「んもう、せっかちさんね。いいわ、説明してあげる」
こうしてやっと本題に入ることができた。