第五話 誘い……そして邂逅
王様の話によると、俺達はまだ覚醒していなく、まだ弱いらしい。
そこで城の地下にある[神ノ智恵湖]とか言う所の奥になんか居るらしい。勇者の資格があるものしか出会えないらしく、その姿は見た人によって変わるだとか。
「どうでも良いが、一応俺はお前らに巻き込まれただけの一般人だからな?勇者の資格があるとは思えないぞ。そこら辺どうなんだよ?」
そう、俺の立ち位置は勇者の親友の友達。多少は恩恵があるかもしれないからその神ノなんちゃらに入ってみるが、絶対に脇役ですらない俺に勇者の資格があるとは思えない。
ぶっちゃけ魔王に挑んでも俺は無駄死にだろう。と遠回しに魔王討伐隊(仮)の離脱を試みる。
しかし……
「いや、そんなんやってみなきゃわかんねえっしょ。大体、霧夜みたいな立ち位置の人間が巻き込まれて転生、なんてことはテンプレ中のテンプレートだぞ?」
ーー等と、ふざけたことをぬかす脇役ポジションの織、てかお前はチート貰えるポジションだろ。どうせ俺はそこそこの能力でそこそこの敵を倒してそこそこの生活を送るんだよ、もしかしたらこのちょっと体が軽くなった程度の身体能力でこの弱肉強食のこの世を生きていかなければならないかもしれん。今の携帯小説では大抵転生してもザコなんだよ。
「大丈夫だよ、きっと霧夜は……うん、凄く強い能力を貰えるよ! ……きっと……………がんばって…」
ーーと、勇者ポジションの輝彦がなんかほざいてるが、もどうでもいい。思ったが別に強い能力とか要らねえし、お前らとは違って[魔王]とか[英雄]とか[宿敵]とか[最強]だとか興味ない、勝手に迫り来る強敵と遊んでてくれ。
「まあ、どちらにせよ俺は一人旅がしたいんでな、お前らとはいつか別れるかもな。」
「そんなのは俺が許さん!お前が居なくなったら俺達の飯はどうなるんだ!!」
「ご飯はともかく、個人行動はやめてほしいかな?」
こんな会話をしているうちにどんどん地下に降りていく、普通地下はもっとじめじめしてたり薄暗かったりキノコや苔が生えてたりするがそんな物は全くなく、心なしか空気が澄んでるきがしてきた。
そして地味に長い階段が終わり鉄っぽい素材の扉を開けると、そこにはいつかテレビでみたとても美しい湖……
「汚いな……」
ーーなんてことはなく、とても濁ったような色をしておきながらも地味に透明感がある不気味で、やたらとでかい水溜まりと形容してもいい感じな湖(仮)だった。
しかし、空気は澄んでいた。そう、空気だけは澄んでいた。
しかし、それは俺だけなのか王様は「相変わらずとても綺麗な湖だ、昔と変わらず神聖な……」とブツブツ と言ってるし織や輝彦も「輝いてるみたいだ……」と意味不なことを言っている。
正直、入りたくない。しかしこの世界の知識は欲しいし、何より役に立つ能力……最低でも火を着けたり、水を出したりする程度の魔法は覚えたい。
王様が言うにはこの水溜まりに生息する奴が全てやってくれるらしい。しかし、俺に資格が無いことはこの薄汚い水溜まり見ると明らかだろう。ああ、我が家が恋しい。
等と思っているうちに二人に半ば引き摺られながら水溜まりに沈んでいく、水面に映る俺の顔は全てを諦めたような酷い顔だった。
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水溜まりの中はやはり水溜まりだった、汚い。この一言だ。しかし水が濁っているのは栄養素だとかプランクトンがなんだとか聞いたことある。もしかしたらこの濁りが魔素だとか魔力だとかいう物なのかもしれない。
「正解よん♪」
ふとそんな声が聞こえた。男の声っぽいが、そこら辺はどうなんだろうか。声に警戒しながら周りを見てみたら、さっきまでいたはずの二人が居なかった。
しかし、遠くで叫び声が聴こえるから、無事なのだろう。しかし本当に水が濁っていて周りが見えずらい五メートル先は見えないぐらいだ。だから透明に見えるらしい二人におとなしく引き摺られていたのが……てか、時間が惜しい。さっさと姿を現せよ。こちとら暇で仕方ないんだ。
「あら、それはごめんなさいね?じゃあちょっと待っててね♪」
そしてパチン と指をならす音が聴こえ目の前が真っ白になった。
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気がつくとピンクやレース、フリルなどで飾られたとてもファンシーな場所に来ていた見ているだけで胃がムカムカする。幸い誰もいなく、外に続くドアがある様だ。
一刻も早く脱出しなければ、そう思いドアを開け、この部屋から逃げ出した。
「あんな所に居たら、流石に気分が悪くなるな」
部屋を出たのは良いものの、部屋の外は広かった、そして白かった。なんだここは。と思いつつも歩きだす。
そして……
シャー!!
ーーと頭の上に乗っていたツバキが威嚇した瞬間
「あらぁ~、勝手に部屋を出たら、ダ・メ・よ♪」
そんなオカマ口調のさっきの声が聞こえた。しかし、姿は見えない。そして俺が辺りを見回してる内にツバキが俺の頭から降りて何処かに走っていってしまった。
「誰か!誰か助けてー!!」
さらには何処からか織と輝彦の助けを呼ぶ声が聞こえた……
「さて、ツバキが心配だな、追いかけよう。」
ーーまあ、だからといってあいつらを助ける義理は無いけどな。なによりそこまで緊迫した状況じゃないのか、言葉に重みがないから大したことは無いんだろう。
そんなわけで、ツバキを追いかけるため全力で走り始めた。
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見失ったツバキの鳴き声をたどり、行き着いた先は真っ白で少し大きい扉だった。扉の奥からツバキの鳴き声が聴こえる。
俺は躊躇わずに扉を開けると……
ニャニャニャ!
何故か床にゴロゴロと寝ている泡だらけなツバキと……
「あははっ♪くすぐったいよ~猫さん♪」
ーー同じく何故か泡だらけなまだ年端もいかなさそうな小さな少女がいた。
その少女は白い無地のワンピースで、金髪で腰くらいまで伸びている綺麗なストレートな髪、そしてとても整った可愛らしい顔そして何故か後ろに小さな羽が付いている、あと泡。
つまり、大きなお友達が好きそうな容姿だった。
そして、その少女は俺の顔を見て一瞬、驚いたような表情をしてすぐに柔らかな微笑みをしてこう言った。
「おかえりなさい……お兄ちゃん」
……なんのこっちゃ。
………でも、あの微笑みは何故か懐かしい気がした。