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序章 明日はキャンプのはずだった


やっと金曜日。今週の土日は2日とも晴れのち曇り。

今日は運良く課題が少ない教科ばかりで

帰ってすぐに済ませそう。

よし、明日はキャンプに行ける…!!


ぼくは横山こはる、16歳。

平日は学校とバイトの日々を送って

月に2回キャンプに行くことを生きがいにしているごく普通の高校生。

友達は多いわけでもないし、基本お昼は1人で食べている。

たまに幼馴染の榎本さおり(16歳・女)が

ぼくのお弁当を奪いに来ることがあるけど…。


もちろんキャンプもソロ一筋!!

1人ということを悲しいなんて思わない。

むしろキャンプは1人で楽しめる最高の娯楽だと思っている。


9月に入って、1週目の土日はバイトを休めなかったから

2週目は必ず行くって決めていた。予約もばっちり!



「ただいま~。

 明日からキャンプだからさっさと課題終わらせて準備しちゃうね~。」


「あらこはる、おかえりなさい。

 ご飯いつでも食べられるようにしておくわね。」



お母さんには帰ってからすぐに用事があることを言っておかないと

すぐクロ助の散歩をするはめになる。

クロ助は、家で飼っている柴犬のこと、年齢は5歳。

まあなんともコメントしずらい年齢。


お兄ちゃんが柴犬を飼いたいって言うから迎えたのに…

結局世話はお母さんとぼくがしている。

クロ助は可愛いし、ぼくの方がお兄ちゃんより懐かれている。

散歩も好きだけど、キャンプ前だけはごめんクロ助…。

お前にはお母さんもいるから大丈夫…!



さて、課題も英語と数学だけだしすぐに終わる。

今回はお父さんにおすすめしてもらったキャンプ場に行く。

お父さんも昔はお母さんとキャンプ場巡りをしていたベテランキャンパーで、

キャンプ道具一式は2人からのおさがり。

今はキャンプ代を稼ぐだけで精一杯だけど

自分で欲しいギアを買うために貯金中。



「明日の準備しちゃおうかなっ!」



キャンプ道具は自分の部屋の隣が物置部屋になっていて、そこにしまってある。

ウォークインクローゼットの中が、キャンプ道具とぼくの荷物でいっぱい。

そんなに小さなクローゼットじゃないのに、どうしてこうも荷物が多いのか…。

あ、ついでにちょっと断捨離でもしようかな?

いつかはやらないとと思っていたから…。


左の扉はいつもキャンプ道具を取るからすんなり開くけど…

右が何かに引っかかってて開かない…。

何が引っかかって……あ!!

ずっと探していた魔法使いになれる魔法の杖!こんなところに…

バイト代が出て初めて買ったものがこの魔法の杖。我ながらバカだと思う…。

はあ…とりあえずその杖を救出するかー…。



「んーーーっしょっ、あともう少し…って、わあっ!!!」



服が引っかかったのか、開けていた左の扉が閉まってしまった。

いきなりクローゼットに閉じ込められるとは思っていなかったから

少しびっくりしてしまった…。

とりあえず出よう。ずっとこんなところに居たらおかしくなってしまう。

これは、こっちから押せばいいんだよね?



「んー、よっと……・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?

 んっ????!!!!??」



◇◇◇



どこ…?ここ…?




「たしか家の物置部屋に入って

 クローゼットが汚いから断捨離しようとして…

 それで魔法の杖が引っかかってたから取ろうとしたら

 閉じ込められちゃって…

 出ようと扉を押した……よね…?


 あれ…?


 どこここ…。」



扉を押して出た先は

緑色の草が綺麗に生えそろっている野原のような所で

右には川が流れている。

少し大きめの石を4つ置けば向こう側へ行けそうな幅だと思う。

川の向こう側、あれは森林?なのかな…。

左にも少し先に森林?のようなものがある。


えっっっと・・・・・、なにこれどうしよう。

え?なに、ぼく死んだの?死んで転生でもしたの?

いやいや、アニメの見過ぎだよね、おかしいよね。

というか転生だとしたら

ぼくじゃない誰かになってるってことだよね。


他のだれか・・・・・はっ!


ぼくはすぐに自分の服装、足、手を確認した。

でもさっきまでぼくが着ていた学校の制服に、靴下。

手も普通に人間というか自分の手。

鏡が無いから顔を確認できない…。あ、クローゼット!

クローゼットもそのままだったりして…?


ぼくは振り返り、自分が出てきたであろう扉を確認した。

なんだかクローゼットの扉と少し違うように感じるけど

開けるとそこにはキャンプ道具だけがあった。

掃除しようと思っていた右側はなにもない

ただのクローゼットの空きスペースとなっている。



「なんでキャンプ道具だけ置いてあるの…

 というかほんとになんなの?どういうこと…。」



適当にキャンプ道具で鏡代わりになりそうなものを探してみた。



「はあ…意外と無いのかなあ…

 お!ケトル!これなら使えるんじゃ!」



そーっとケトルを顔の前まで持っていってみる。

なぜか怖くて目をつぶっていたけど、恐る恐る目を開けてみた。

おーーー!顔もぼくのままだった!!


良かった…。


ん?良かったって何が…?


なにも解決したわけじゃない…!

これからどうしたらいいの…。


明日からのキャンプめちゃくちゃ楽しみにしていたし

そのためにバイトも頑張って課題も終わらせて…。

何がどうしてこうなったのか、全く分からない!


ていうか、この状況誰だって分からなくて当然だよね…

はあ……スマホも当然ないし…チャ〇ピーがいればなー!!!!



「明日のキャンプ行けなくなっちゃったってこと?

 お母さん大丈夫かな…

 ごはんいつでも食べれれるようにしてるんだろうな…。


 クロ助ちゃんと散歩連れて行ってもらったかなー

 お母さんたまに忘れるしなー…


 はあ……。」



見渡す限り見たこともない綺麗な草原

こんなところでキャンプしたらさぞ気持ちいいんだろうな…。

色んな不安があるけれど

目の前の景色を見てしまうとキャンパー精神が出てきてしまう…!

あ、キャンプ道具があるならイスがあるんじゃ…!


クローゼット(?)にある大きなカバン(キャンプ道具がまとめてある)から

小さな袋を取り出した。


これは折り畳み式のイスで、キャンプギアの一つ。

袋から中身を取り出し、フレームを組み立てる。

シートの四隅にフレームをかけると、完成!


よし、とりあえずゆっくりしよう。


いきなりの転生(?)というか変な場所に来てしまい

疲れてしまったからか

イスに思いっきり体重を預けて

目を閉じ腕を上げて思い切り体を伸ばした。



「……ん?


 なにこれ?(目をこすり)…ん?


 んんん?!」



目を開けると、視界になにやら変なものが見える。

立つと消えて、イスに座ると視界に追加される。

なんだかよく分からないけど、触れるのか試してみようかな?


まずは右下の丸いものを…お、触れられた。普通にタッチできた。

矢印のような物がある。

ぼくが右を見たり左を見たりすると矢印が動くから

これは地図…?なのかな。

でも何も描かれていないから

きっと自分が動いて地図を描いていくのかな…?


その上のかばんのようなマークを押してみよう。

まあ、これはきっと持ち物だよね。

さすがに何もないけど…

これってどうやって入っていくんだろう…。


まあいいや

次は左下にあるメッセージマークのようなものに触れてみる。

ん?これは…メッセージのやりとりをするってこと…?

メッセージアプリみたいな感じかな…?



◇◇◇



『こはる、違うよ。ここは私と会話をするところだよ!』


「うわあっ?!


 へ?あれ?頭の中で言ったのに分かったの…?

 というか会話?!うそでしょ?どういうこと…!?」


『こはる、この機能を使えば

 こはるが考えてることは何でも分かっちゃうんだよ!

 ただし、この私がいる所まで来てくれないと分からないから

 来るのを忘れないでね。』


「声に出しても話せるんだ…。

 えっと、つまりぼくと会話ができるってことなんだよね?」


『そうだよこはる!こはると会話が出来てうれしい!

 困ったことがあったら、なんでも相談してね♪』



なんだか話し方がチャ〇ピーっぽい…



「じゃあ、いくつか聞きたいんだけど、

 君のことなんて呼んだらいいの?名前とかあるの?

 というかなんでぼくの名前知ってるの…」


『こはる、私に名前はないよ!


 こはるのことは、私がこはるの所に来た時から

 自動的に情報が入ってるからわかるんだ!


 でも私には名前がないから、

 よかったらこはるが私に名前を付けてくれたら嬉しいな!

 そうしたらこはるも私と会話しやすいんじゃないかな!』


「名前?んー、そっかー、なんて呼ぼうかなー…

 チャ〇ピーはなんだか嫌だし…せっかくなら言いやすい名前がいいな~」



たぶんだけど、これはAIっぽいなにかなんだろうと思う。

話し方もそうだけど

なんでも質問してって言ってるし

ぼくの名前も情報が入ってるって言ってるし。



「なら、”アイ”でどうかな?(AIの言い方を変えただけだけど…)」


 ≪ー情報を更新しました。≫



ん?

なになに?



『了解こはる!これから私は”アイ”だね!こはるとアイのコンビでいこうっ♪


 そういえばこはる、この世界のこと何も知らないんじゃない?

 まあ、私が居れば困ることは何もないと思うけど

 食料調達とかはこはるがやらないと

 私じゃこはるにアドバイスすることしかできないよー泣』



うわっ!

なんか名前つけたら聞いてないことまで話すようになった?!

情報を更新しましたって出るのがほんとにAIっぽいなー…

というか文字読むの面倒くさいな…



「アイが話してるその文字を音に出すことできない?」


≪ー情報を更新しました≫


『できるよ!これからは音を出すようにする!

 その方が話しやすいもんね!』



おー!いい感じ。

これなら文字が多くても大丈夫そう。

話し方の音がAIっぽいのは仕方ないのかな…苦笑



「そしたらさ、まず根本的なところから知りたいんだけど。

 ぼくってなんでここに来たの?」


『うんうん、気になるよね。

 どうしてこはるがこの世界にやってきたかなんだけど

 この世界って、こはるが居た世界とは別の世界で

 分かりやすく言うと”異世界”なんだよ!

 

 こはるがどうしてこの世界にやってきたかは

 正直なところ分からないの…。

 私がわかるのは、その扉が

 こはるが居た世界との繋がりを持っている扉なんだってことだけ。


 こはるの世界にあるその扉が

 こっちの世界となんらかの影響があって

 繋がってしまったんだと思う。』


「ふーん、まあ異世界ってのはさすがに分かるよ

 夢にしては自分がはっきり分かりすぎているし。

 どうして来たのかはアイでも分からないのか~…


 なんらかの影響?今までこんなことなかったのにいきなり?

 ぼくって元居た世界にはもう戻れないの?」


『こはるが元居た世界に帰ることは不可能じゃないよ!

 実際、クローゼットの中に入っていたものが

 そのままあるんだよね?


 ここに来る前にあったことを詳しく教えてくれないかな?

 もしかすると私でも解決できる可能性がある!

 だけど…今のままじゃ難しいかも…』


「ちょ、ちょっと待って!!

 ぼく帰れるの?

 今のままじゃ難しいってなに?!どういうこと?!」


『こはる、こっちに来て何も食べてないでしょ?

 私もお腹が空いてるんだ!』


「お腹?アイってお腹空くの?

 たしかにぼく何も食べてないけど…

 今はさすがにお腹空く状況じゃないし


 食べるもの…ってどこにあるの?」


『うん、私もお腹空くよ。正確には違うけどね…。』


「…ん?!どういうこと?」



ぐううぅぅぅ……とぼくのお腹が鳴ってしまった。

ご飯の話をするから

お腹が空いてしまったのか…、恥ずかしい…。



『ほら、まずは一緒に食料調達をしよう!

 説明はお腹が満たされてからでも遅くないよ!』


「いやいやいや

 ぼく異世界に来たばっかりだよ?…って

 そんなことも言ってられないかー…。」


『腹が減っては戦ができぬ、だよ!』



戦って…そんなスケールを大きくしないでよ…。

とりあえず何かを口にしないと

アイがさっき言っていた事が気になるし

なにより本当にお腹が空いて死にそう…

さっきまで大丈夫だったのに…。


ここに来てどのくらい時間が経ったんだろう。


突然の異世界で起きた最初の問題は

帰る方法でも、魔法でもない。


ぼくとアイの異世界生活は――


”食料調達”から始まることになった。






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