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魔法無しの一般メイド。王宮にて奮闘中!~なぜか六家の使者に過保護にされてます……いや、私女神じゃないから!?~  作者: 月影朔夜


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プロローグ 〜シスターのお話と歴史の授業〜 

 「皆さんの中には”使者”がいるかもしれません」

 子供たちのざわめきが広がる。 

 コノアは大きく息を吸って話を続けた。


 「これまで使者になった方は、長い歴史を持つこの国でも数えられる程度です。

  けれど、それは決して有り得ない可能性ではないのです」


「今日、第一成人を迎えた皆には改めて使者とは何か、そして彼らの役目とは何か、国の歴史も踏まえてお話しようと思います」


 ユフィステリア第3教会のシスター・コノアは、教会の長椅子にお行儀よく座る子供たちおよそ二十名を見渡してそういった。子供の態度は、興味津々に目を輝かせるもの、辛酸でも嘗めているかのように眉を顰めるもの、寝ているものなど様々だ。

 

 この子供たちはみな孤児である。

 コノアの所属する第3教会が受け入れた百人近くの孤児のうち、祭日の本日、第一成人である14歳を迎えた子たちだけがここに集められた。

 第一成人は、魔法の発動が見つかる最後の年。

 ”使者”の魔法を発動しない限りは、見つかったものと見つからなかったもの、どちらも大した差異は無いのだが、有ると無いでは多少職の待遇も変わってくる。

 そこで、ユフィステリアの教会では、14歳を迎えた子供たちに一律でユフィステリアの歴史を教えているのだ。第3教会ではコノアが一番若いという理由だけで説明役に選ばれたのだが、”女神の転生先”を探す、という重圧にはやはり、胃が痛む。


 「シスター…?どうかされましたか?」

 幼いながらも、凛とした声が聞こえる。

 コノアが目を向けると、このグループの中で一番大人しく、冷静なミフユが首を傾げていた。

 長い黒髪と透き通るほどの深い青の瞳。

 見た目こそ年相応だが、その性格は孤児の誰よりも最年長という称号に相応しい。

 彼女が女神の使者ではないかとコノアは、発動を期待していた。

 が、残念ながら彼女に魔法の発動は認められなかった。


 「あ、あぁごめんなさいね。すぐに続きをお話します」

 こほん、と咳ばらいを一つ。


 軽く指を振って、空中に黒い板を作り出した。

 モノづくり、芸術の魔法の基礎応用だ。

 用意したいものをイメージし、指先に魔力を込める。

 周辺の水分を物体へと変化させる秋の女神・アン様の魔法だ。


 「それでは説明しますね」

 黒い板に、白いペンをあて文字を綴ってゆく。


 ”魔法の発動と、非発動について”


 「皆さんの中には、魔法を発動した人がいますね。

  例えば、ハルくん。

  貴方は穏やかな性格で人に対しても分け隔てなく接することができる優しい子です。そんな貴方が手に入れたのは春の女神・プリマベーラ様の力。優しい植物を生み出す魔法ですね」


 ハルは、顔を真っ赤にしては恥ずかしそうに俯いている。

 握り締めた指先から、小さなピンク色の花びらが舞っていた。

 そんな彼を揶揄うように、隣に座っていたタイキが彼を小突く。

 そのとたん、小さかった花びらが、大きな蕾となって美しい一輪のバラを咲かせた。

 人の背ほどあるそれは、小柄なハルを簡単に押しつぶしてしまう。


 「こら、タイキくん。止めなさい。貴方が発動した夏の女神・サーエスタ・テーマーケ様の力はプリマベーラ様と相性がいいんですから。教会をお花畑にしちゃだめよ」


 植物の女神と、太陽の女神。

 常識だろうけれど、この二つの力は当然相性がいい。

 本人たちの無意識であろうとも、相乗効果によって爆発的に大きな魔法を発動してしまうこともある。


 ごめんなさーい、と気の抜けたタイキの返事が聞こえた。

 まだ、子供だから、力の発動が体に大きな負担をかけることもある。

 これは、後でもう一度、魔法の修練をさせてあげないといけないかもしれない。


 「全く。シスターのお話を遮るなんてありえないでしょ!!」

 コノアが修練の時間を立てようと脳内でスケジュールを組んでいた時、溌溂とした声が響く。

 ミフユの隣に座っていたレイナが立ち上がっていた。


 「……っ…えい!!」


 「あ、こら…!!」

 コノアが止める間もなくレイナは大きなバラに向かって両手を突き出すと、その両手から白い冷風が溢れ出した。

 凍てつく風はバラを瞬時に凍結させると、パリン、と硝子の砕けるような音がして粉々になってしまった。

 破片がハルの上に降り注ぐ。

 すぐに、指先に力を込め、霧の膜を作り出し彼の体を覆った。

 冬の女神・ウィーネ様の力は気体を氷に変化させてしまう。

 そのため、サーエスタ様やプリマベーラ様と相性が悪く、逆に私のようにアン様の魔法を使うものにとっては相性がいい。


 鋭利な欠片が全部膜に刺さったのを確認すると指をぱちん、とはじいて霧散させた。

 「ふふん!!私にかかればこれくらい余裕だもんね!」

 レイナだけが、この状況で満足そうに頷いている。


 「こら、お話し中に魔法を使っちゃいけません」

 これは、少しばかりお仕置きが必要だ。

 コノアが指を振ると、3人の頭上に小さな雲が浮かび上がる。

 指で合図する。

 途端に、小さなピコピコハンマーが現れてこつん、と可愛い音がなった。


 「シスター酷い!!」

 タイキが大声で反論する。


 「じゃあ、まずは私のお話を聞いてください」

 そう諭せば、まだ反論したそうに立ち上がるが、後ろの席のミフユに肩を掴まれ止められた。

 ありがとうミフユさん、と声に出せば、タイキがずるいと反論するだろうから、心の中で感謝を伝えておく。


 「それじゃあ、お話の続きです。

  今、みんなが使った魔法はかつてこの国を作り上げた四人の神様のものでした。

  この国を彩る四季の神様たち。そこに歩みを共にしてくださった二人の軍神様。

  合わせて六人の神様を、この国では六女神としてお慕いしているのです」


 「神様たちは、遥か昔に人が神様に依存することを恐れて、それぞれの力を少しだけ人間たちに分け与えると、この国を去って行ってしまいました。

  今の力はまさに、そんな神様たちからのプレゼントなのです」

 

 この話しをするたびに、ずるーい、俺も欲しいーー!!など、子供たちからいっぱい文句を言われると笑って話していた第2教会のシスター・サマンダの顔が思い浮かぶ。

 あの教会には第3教会よりも元気いっぱいで活発な子供たちが多い。

 大人しく話を聞いてくれる子供たちに感謝の目を向けた後、コノアは話を続ける。


 「そして、魔法を持つ人々と持たない人々、お互い協力しあってこの国は発展してきました。

  ですがある日。

  そんな魔法を独り占めしてしまおう、国を乗っ取ってしまおうと考えた悪い人たちがいたのです。

  彼らは人々から魔法をはく奪する魔法を独自に創り出しました。

  魔法を奪われた人々は体の変化に耐えきれず亡くなってしまい、教会で埋葬されました。

  そんな極悪非道な彼らは”ミュージアム”と呼ばれています」

 

 子供たちの表情が引き締まる。

 幼いころからミュージアムに関する絵本を読み聞かせたのは正解だったらしい。


 「そんなミュージアムと対抗するため、人々はより洗練された魔法を使う人々を”神の使者”と呼び、ミュージアムと長い間戦ってもらっていたのです」


 「けれど、神の使者は、魔法を使う人々の中でも極わずか。

  しかも何百年と待たないと現れないこともありました。

  その間、ミュージアムの動きは当然活発になってしまいます。

 困った人々は神様に助言を求めました。神様たちは、なら、と協力を惜しまず自分の力を強く分け与えた一族を作ってくれました。

  こうして生まれた六つの家から、使者が多く生まれるようになったのです。彼らは現代まで続く由緒あるお家柄であり、この国の中心を担う大事な大事な役割を持っているのです」


 コノアは一度声を止めて、子供たちを見渡した。

 何人かは眠そうにしていたが、それでもきちんと話を聞いてくれている。

 

 「ここからが本題です」


  中に浮いた黒い板に文字を書き直した。


 ”使者になったら?”


 「基本的に、使者は六家以外から生まれることはありません。

  けれど、稀に、本当に稀に、1000年に一度ほど使者が生まれるのです」


 「第二成人、つまり18を超えた時に使者であることが確定するとその人は王宮へと招かれるのです」


 子供たちは楽しそうに上を向く。

 コノアも釣られて上を向いた。

 ステンドグラスの光が降り注ぐ、暖かな光が真っ先に目に飛び込む。

 この上空に王宮は存在していた。コノア自身一度しか行ったことはないがそれはまぁ、とてつもない広さと信じられないほど強力な魔法が飛び交い、息をするだけで緊張したものだ。


 パンパン、と手を叩き、子供たちの視線を黒い板に戻す。


 「使者の力は凄まじいものです。そうですね、ではここで一つ問題を」


 「春の使者であるエリシア・フィミア様が使者と認められた時、山二つ分の枯れ果てた大地に何を咲かせたでしょうか?」


 「は、はい…!!!」

 弱弱しい声とは反対に、ぴしっとまっすぐ伸びた手が見える。


 「ハルくん、どうぞ」


 「ミュアザクラです…!!小さなピンク色の花が5枚繋がっていて、傷薬や鎮静剤の材料に使われることがあります…!!」


 「正解です。さすがだねハルくん」

 ミュアザクラの効能まで答えてくれるとは、将来の夢は植物園で働きたいと言っていた勤勉な彼らしい。今度新しい本を買いに行った方がよさそうだ。


 「という風に、使者の力は街一つに簡単に影響してしまいます。

  だから、18を超えたとき、自分の中の魔法の力が強いとそう感じたら、私やほかのシスターに相談しましょう」 


 コノアは話を続ける。

 だんだんと目を閉じる子供がいる中で、ハル、タイキ、レイナ、そしてミフユだけが最後までまっすぐ背筋を伸ばして、話を真剣に聞いているのがよく見えた。

 

 







 レイナはシスターの話を聞きながら、心の中で何度もガッツポーズをしていた。


(やった!!!!私は選ばれたんだ!!)


 ただでさえ発動が珍しい冬の女神の魔法。

 それに選ばれた自分は、きっと特別なのだ。

 王宮で働く自分の姿を想像しながら、レイナは講義が終わるまで高鳴る胸に心を弾ませていた。

 



 


始めて書いてみたファンタジー作品になります!

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― 新着の感想 ―
Xから来ました。全体的に読みやすい筆致でした! ここから王宮に行き、どう物語が展開していくのか楽しみにしています。
基本的な説明が読みやすく書かれていて良い導入ですね! 残酷あり+ハッピーエンド は好きなタイプの作品です。苦難を乗り越えてたどり着く物語に期待します。
Xの企画からやってきました。 まだプロローグの段階ですが、壮大なストーリーが始まる予感があって良いですね! 世界観の説明と子どもたちの能力をさりげなく説明していてスムーズに読めます。 ブクマと☆付けさ…
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