NO.2 流星突撃
そこからどう走ったのかわからない。でも、俺は気づくと、平原に寝転がっていた。
分かったことは、村規模の拠点でも、NPCがいなかったことだ。
時間設定は夜・・・。つまり、3時間以上走った上に、ここで寝ころんだことになる。
見ると、隣にはレイトが座っていた。
「5日後にな、50人規模の大規模攻勢を、敵の城にかける予定なんだと。参加者には、一定の報酬が渡されるらしい。俺たちも参加するか?」
レイトの言葉に俺は飛び起きて答えた。
「いかないはず・・・」
「ないよな!」
完全にハモった。
翌朝、洞窟に籠り惰性で経験値を稼ぐ。経験値・・・。俺たちや職人・商人以外には縁遠い存在。レベルが10になったことを告げるファンファーレは、洞窟の中で反響し、大音響を作り上げる。この世界の囚人となっているのは3000人。そのうち、俺たちのように攻略にいそしむ、プレイヤーはおよそ70人。NPCがいないこの世界の命綱である《職人プレイヤー》、つまり武器鍛冶、防具鍛冶などの、生産系を行うプレイヤーが100人。それを売りさばく《商人プレイヤー》が30人。残りの2800人は外部からの救出を待ち、始まりの城に籠り続けるプレイヤーだ。
洞窟のモンスター、《前線駐在兵》という、NPC軍団のモンスターは、槍、弓、剣などと多種多様な武器による攻撃のため、攻撃パターンは覚えられない。
それでも、経験値の量が他のモンスターの比ではない。体力自体は低いが、攻撃力はなめてかかると、痛い目を見る。今の俺のHPは2990だが、奴らの攻撃を食らうと3割近くを持っていかれる。
剣タイプの突進技の刃先が俺の肩をかすめ、HPが1割減少する。しかし、突進技を外した前線兵は、一時的な硬直を強いられる。俺の剣は、その、わずかなスキを見逃さなかった。
ザシュッという斬撃音。そして、モンスター四散音。
この洞窟のある山の少し向こうには、敵軍団の野営地がある。5日後の攻勢はそこの攻略が目的だろう。でも、その前には2000を超える敵の前線があり、偵察隊によると迂回は不可なのだという。偵察隊は敵前線の奥にある大規模野営地にも3000以上の敵が居ることを攻略本部に伝えた。
攻略本部とは15人ほどの精鋭攻略集団で、始まりの城の赤竜宮を本部としている。俺はその本部の一員として、攻略組のリーダー格に入っている。
俺はそんなことを思いながら洞窟を出る。でも、出たらすぐに山のすそ野に見えるはずの始まりの城が黒の何かに包囲されていたのだ。近くの洞窟から帰ってきて、合流したレイトも驚いている。
「あれは…!敵だ!始まりの城が包囲されている!」
俺の言葉にハッとしたレイトは一気に山を駆け降りる。
「オラァァァァァァ!」
恐怖のかけらを押しつぶすかの如く、絶叫とともに黒の波の中にレイトは消えた。
俺も…行かなきゃ!そう思っても足が震えて前に出ない。中で何かが動いた。同時に、数人の兵士が宙を舞う。レイトの刀スキル《風神》だ。竜巻の中に揺られる敵は次第に四散する。
俺の最強突進技《流星突撃》なら、突破口を開くことができる。
でも、その先がつながらない。中からの援護がない限り…!思考が回る中、俺は走り出した。
流星突撃の構えを固め、最初の敵をロックオンする。1体目の剣兵を切り上げ、2体目の槍兵を1撃で仕留める。3体目は腹部に剣を突き立て、切り裂く。4体目を切り捨てたところで、レイトの姿が見えた。
俺は残りのスタミナをすべて振り絞って、《ストームレイヴ》というジャンプ技を発動させる。
「ドラァァァァァァ!」
俺の一撃はうまく、目標地点に着地し、衝撃波を発生させる。レイトにまとわりついていた兵士たちはいっせいに吹き飛ぶ。
「助かった…!サンキュ。出るぞ!」
「あぁ!頑張れ…俺はもう動けん。先に行け」
「そんな・・・っ!」
レイトの驚きの声が終わらない間に男性の声が響く。
「弓隊ッ!撃てぇぇぇぇぇッ!」
どうも。LYONです。ここまで読んでいただきありがとうございます。
まだまだ初心者ですが温かい目で頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それではまた次回でお会いしましょう。see you next time.
ちな、そろそろ、夏季休暇なので投稿頻度が上がるかも!?