NO.1 ラストダンジョン
システムアナウンスを伝える鐘の音。音は、城中に響き渡る。そして、今、この世界にいる約3000人が、城の中央広場に転移される。なんだ…?急に前触れもなく…?
「ただいま、バグが発見されました。今後、解決まで、有効NPCに対する接触、会話が不可能となり、NPCが消失します。解決まで今しばらくお待ちください」
無機質な声が俺たちの耳に届く。運よく、すぐそこにいたレイトの顔を除いてみた困惑を隠しきれていない。当然か…。心の声がつぶやいた。
「な、アイテムって購入済みか?」
覗いているのに気づいたのかレイトは、俺に話しかけてきた。俺は無言でうなずく。
「なら、ちょっと来い」
レイトの言葉に導かれるまま、俺たちは城の東門前に移動する。
「これは、ただのバグじゃない。こんな致命的なバグ、《ネクサスクリエイト》が許すはずがない。俺は、このバグ、当分だけど直る気配がしないと思う。なら、さっさとログアウトして、復旧を待つのが最善の手だ。そう思わないか?」
「そうだよな。このままこの世界にいてもあまり意味はないと思う」
「じゃ、復旧次第、この世界に集合な」
「わかった」
手をかざし、閉じた手を、パッと開く。「ウォン」という音とともに、システムメニューウインドウが出現する。下のほうにスクロール・・・。おかしい。ログアウトボタンがない。これも・・バグ!?
レイトも驚愕の表情を浮かべている。
「キ、キヅイタカ・・・。コレガ、貴様ラニ対スル報復ダ・・・!」
ギシギシといった金属音をまとった声が俺の脳裏をよぎる。
再び、俺は青白い光に包まれる。青い光が消えた先に見えたのは、さっきまで居たあの広場だった。
「ザーッ・・・!バ■・・・▲見・・・。ログアウト・・・不可●になりまし・・・▲。ザーッ・・・」
砂嵐や雑音、ノイズに阻まれた言葉は俺たちに「絶望」の二文字を与えた。
「ログアウト・・・不可!」
レイトと俺の声は重なり、虚しく散った。再び、ノイズまみれの言葉が天界から降ってくる。
「ザ―――ッ!緊#脱出用システム干渉台%ラストダンジョン□ボスの間▼ザ――――ッ!あ・・・り」
脱出の方法が空から降ってくる。
「ラスト・・・ダンジョン・・・。ボスの間・・・」
俺の言葉が断片的に発せられる。
「つまり・・・!ラスボスを倒せば脱出が可能になるってこと!?」
レイトの叫び声が木霊する。
ヘッドギアという名の地獄の錠前、イバラの冠は、俺たちをこの世界から出ることを許してこない。
ぐるりと周りを見渡すと、泣き崩れる人、怒りに震える人、様々な人間がいた。
平常心を保っているように見える俺も、内心の不安は隠しきれていない。
俺は、レイトの腕をつかむと走り出す。東門前にやってきても止まらない。レイトも俺のしようとすることが分かったのか大人しく走ってきている。やがて前に、スケルトン兵士がやってくる。剣を抜くと、ログイン得点の剣技、フレイムスラッシュを繰り出す。剣先が赤く染まり、やがて炎を吹く。
「ラァァァァァァァァッ」
雄叫びとともに、剣がスケルトンの骨に触れる。ガツンッ!という衝撃。スケルトンは、俺の炎の剣に両断される。四散音がはるか後方に消えた。
どうも。LYONです。ここまで読んでいただきありがとうございます。
まだまだ初心者ですが温かい目で頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それではまた次回でお会いしましょう。see you next time.