第4話 冒険者ギルドとお姉さん受付嬢
「……やっと、街の中に入れた……」
門を越え、グランフェルト王国の首都――カレストに足を踏み入れた俺は、思わずため息をついた。
石畳がどこまでも続く広い道。
その脇には、色とりどりのテントが並び、活気ある声が響いている。
焼きたてのパンの匂い、甘い果実を売る店、見たこともない獣の毛皮が並ぶ露店。
まさに異世界、ファンタジーの世界ってやつだ。
「すげぇ……ゲームやアニメで見たまんまだ……」
こんな状況なのに、ちょっとテンション上がってる自分がいる。
……いや、上がるだろ、普通。
異世界転生して、これぞファンタジー!って景色が目の前に広がってんだぜ?
まあ、実際は金も仕事もなくて、この先どう生きていくかすら決まってないんだけど。
「とりあえず……冒険者ギルド、だよな」
助けた行商人のおじさんに勧められた、異世界の生計手段の一つ。
モンスター退治や依頼をこなして報酬をもらう――冒険者。
ゲームの世界では何度もなったことあるけど、現実でやるなんて思ってもみなかった。
*
人の流れを辿って歩くこと数分。
街の中心部に、ひときわ目立つ木造二階建ての建物があった。
屋根には剣と盾の紋章が掲げられ、建物の前には筋骨隆々の男や、軽装の若い冒険者たちが集まっている。
「ここだな……冒険者ギルド」
扉を押し開けると、すぐに酒と汗と革の匂いが鼻を突いた。
高い天井に、壁一面の掲示板。
そこに貼られた大量の依頼書。
カウンターの奥では、数人の受付嬢が冒険者たちとやりとりしている。
「はーい、次の方どうぞー!」
明るい声に誘われて、俺はカウンターに近づいた。
対応してくれたのは――
(……うわ、綺麗なお姉さん……)
金髪のポニーテールに、白と青の制服。
胸元がちょっと開いてて、目のやり場に困る。
いや、別にいやらしい気持ちがあるわけじゃなくて、視線が自然とそっちに……ごめんなさい。
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ! 本日はどういったご用件でしょうか?」
「えっと……冒険者登録、できますか?」
緊張して声が上ずった。
こんな美人とまともに話すの、何年ぶりだよ。
ていうか、日本でもこんな機会なかったんだけど。
「もちろんです! お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「れ、蓮です……篠崎 蓮……。でも、こっちではレンって呼ばれてるみたいで」
「あら、珍しいお名前ですね。でも素敵ですよ、レンさん!」
(は、ハードル高ぇ……!)
受付嬢さん、笑顔がまぶしすぎるんだけど。
こんな対応されたら、勘違いする男、多いんじゃないか?
「では、登録の前に簡単な試験を受けていただきますね。冒険者は危険なお仕事なので、最低限の実力確認が必要なんです」
「試験……って?」
「はい、こちらへどうぞ!」
お姉さんに手招きされ、俺はギルドの奥へ。
そこは訓練場のような空間で、木製のゴーレム――訓練用の人形が立っていた。
見た目はただの木製人形だけど、魔法耐性があるらしく、普通に攻撃しても壊れないらしい。
「このゴーレムを相手に、何か一撃でもダメージを与えてください。
武器がなければ、素手でも魔法でも構いませんよ?」
「そ、そんなのできるのか……?」
俺、武器なんて持ってないんだけど。
それに、魔法ってどうやって使うんだ?
でも、試験に落ちたら登録できないわけで――
(くっ……頼む、俺のスキル……!)
俺は静かに、ゴーレムに意識を向けた。
すると――
『解析』が自動的に発動する。
――対象:訓練用ゴーレム。動力源:魔力核(胸部)。防御特化型。弱点:関節部。
(よし……)
情報を掴んだ俺は、右手を前に出し、呟いた。
「生成:鋭槍」
右手に、透明な光が集まり、次の瞬間、鋭い槍が生み出された。
まるで光の粒子が集まって形作られるような、不思議な感覚。
「――っ!」
その槍を、ゴーレムの膝関節に突き刺す!
「ガギィン!」
木が軋む音とともに、ゴーレムが片膝をついた。
完全には倒せなかったけど、ダメージは確実に通ったらしい。
「お見事です、レンさん!」
拍手しながら受付嬢が駆け寄ってくる。
「これで冒険者登録は完了です! ランクはEランクからのスタートですが、初めてにしては素晴らしいです!」
「そ、そうすか……」
いや、褒められるのは嬉しいけど、目が合うと緊張する。
美人すぎるんだよなぁ、このお姉さん。
「こちらが冒険者カードになります。
失くさないようにしてくださいね。
今後は依頼掲示板からお好きな依頼を受けられますので!」
銀色のカードを手渡され、俺はようやく冒険者としての第一歩を踏み出した。
何とか無事に登録できたものの、これからどうなるかはわからない。
でも、少しだけ――胸が高鳴っていた。