2隠れる者
「ツフィナ、今日も早起きじゃないの。」
ツフィナの顔を触りながらそういうアンさん、ちょっと怖いのアンさん。
「昨日旦那様と奥様にワインの試飲を任されて飲み過ぎたの、すぐ眠ってしまったの。」
手を放して口臭を確認しようとしなでなのアンさん。
アンさん、次は自分の顔に手を当ててるけどなにか考えてるの。
「ツフィナってお酒弱いってよね。」
「あの二人が異常なの、結婚記念日で十本もあけてたの。」
それでもう一本飲もうとしてたの。
「飲み過ぎかもしれませんの、酔ってきましたの。」
私がそう言うと二人とも気にしてやめてくれたの。よかったの。
「その試飲しても一杯分だと思うわよ。ツフィナが弱いのよ。」
顔に手を当てて弱いと一緒に飲めないから寂しいよってごめんさいアンさん、私も普通に飲んでたの。
アンさん、歳いくつなのか気になるの。私にそんなことするけどちょっと痛々しいの。
アンさんは私がお酒弱いことにそんな風に思うなら教えるの。
「わかりました白状しますの。二本は二人に勧められて飲んだの、それを昨日の晩御飯を食べてた時に飲んだの。」
やってしまったのとツフィナは思った。クワトロに飲み過ぎないように言われているの。
原則一本しか一日に飲んではいけない決まりなの。それなのに昨日は二本飲んだこと自供してしまったの。
「ツフィナ、注意しなさいよ。あなたはわたしが一番話しやすい人なのよ。不祥事とかしたら悲しいわよ。」
そんなだらしなく見えるのアンさん。
「はい、アンさん。気をつけますの。ごめんなさい。」
「メイド長なのよツフィナ、気をつけるなさいよ。」
今さらなの、顔を触るのやめてなのメイド長。
「ごめんなさい、メイド長。」
俯くとアゴクイするメイド長。
「わかってくれればいいのよ。私も毎日飲んでるのよ。」
笑って夜に飲みながら話しましょうよと誘われて話すことになったの。
一日中アンメイド長との飲み会のことを考えるツフィナ。ちょっとだけ足取りが重いの、自室の二人がどう思うかわからないの。
「こんばんは、メイド長。」
「あらー、ツフィナちゃん。今日もかわいいわよ。来てくれてうれしいわよ。ほら座ってよ。そんなところで立ってたら疲れちゃうのよ。」
たったの十秒くらいしかいないけどもう帰りたいの。
相部屋の二人にメイド長とお酒を飲むって言ったらやめといた方がいいって言ってた意味がよく分かったの。
ニレカがリネイの言葉を遮ったからどうしてかわからなかったけどよくわかったの。
帰ろうとしたのに帰れなかったの。
「ごめんなさい、アンさん。部屋に忘れもの置いて来たから待ってなの。」
「そんなこと言わないでよツフィナ。飽きさせないって約束するわよ。座るってよツフィナ。」
ツフィナは少し考えてアンに勧められた椅子に座る。
「アンさん大丈夫なの。」
「大丈夫よなに言ってるのよツフィナ。大丈夫よ。」
「大丈夫なのアンさん、どうしたの。」
「どうしたって普通よ。ツフィナちゃんはかわいいわよ。来てくれてよかったのよ。前にいた人はいなくなったのよ。」
「どういうことなの。」
抱き着いて泣き出したの。
しばらくして泣き止んだアン。
「前に仲良くなったイドラは旦那様の護衛に隠れていたのがバレてたのよ。イドラは旦那様と話す機会を探っていたのよ。旦那様と話すにはお酒がいいって教えたのよ。護衛と四人で寝室でお酒を飲んでた時があったけど、旦那様の飲む量が多すぎて護衛もイドラもつぶれちゃったのよ。」
相槌をかわしながらお酒を飲むツフィナはアンの言うイドラの話を半信半疑で聞いている。
「翌日に私が起こしに行った時に護衛二人と旦那様しかいなかったのよ。」
「どういうことなの。」
「ちょっと待つのよ。護衛二人と旦那様しか寝室にはいなかったのよ、イドラを見たか旦那様と護衛に聞かれたけど見てないって言ったのよ。護衛と旦那様は私が来るより前に出てたと思ったみたいなのよ。」
そうなのと相槌をうち酒を飲むツフィナはアンの作り話だろうと思いながら聞く。
「その時ベットの下にいて私達が出た後に出て来たそうなのよ。
私が来なかったらイドラは旦那様を暗殺しようとしてたそうなのよ。」
そこでツフィナはアンの話に興味を持った。どうしてその話をアンは知っているのか知りたいの。
「え、どうして気づかなかったの。」
「気になってるわよ、ツフィナ。どうしてなのよ。」
ツフィナが顔を見てくれてうれしそうなにしたアン。
「気になるから教えてほしいの。」
「教えるわよ。イドラの目的は暗殺だったのよ。旦那様の寝室に来た時いることに気づかなかったのよ。」
イドラが影ってことなのとツフィナは思った。
「その日にイドラとは話したのよ、メイドとしての話を話してたのよ。イドラはその日の旦那様が湯船に浸かってる時に寝室で暗殺のために隠れたのよ。ベットに隠れればよかったのにタンスと壁の間に隠れていたそうなのよ。旦那様が浴室から戻って来て護衛が寝室に誰か隠れていないか探してたらイドラが見つかったらしいのよ。怪しかったイドラだけど二日酔いで二度寝して眠ってたからここにいたって言い訳して護衛に通じたのよ。」
そうなの、怪しいの。
「トイレじゃなくてそんな所で眠ってるなんて怪しいから気づくと思うの。」
「二日酔いで疲れてたから仕方ないって話になったのよ。次の日は窓が開いててカーテンに隠れていたことに護衛も気づかなかれなかったのよ、イドラはクローゼットの奥にも隠れてたのよ。そこで翌日まで眠ってしまったそうのよ。」
「なにしてるのイドラさん。笑えるの。」
「そうなのよ、面白い場面よ。それで仲良かったのよ。ツフィナはかわいいわよ。」
はいはい、わざわざそんな話をしてお世辞を言わなくていいの。
「一か月経ってイドラは奥様と仲良くなったのよ。旦那様と護衛二人と五人で飲んだのよ。その日の夜イドラは実行したのよ。ベットの下に隠れてナイフをベットに突き刺したのよ。ベットの下に生えたナイフと赤く染まるベットで暗殺されたのよ。」
暗殺ってなにを言ってるの、旦那様は生きてるの。
「暗殺って誰をやったの。」
「旦那様はやられてないわよ、護衛の一人が暗殺されたわよ。イドラが犯人ってその日にバレたのよ。あの日旦那様は奥様と床で寝てたのよ。ベットじゃなくて二人で寄り添いながら床で眠りたかったそうなのよ。それを知らずにベットに突き刺してベットで寝てた護衛のもう一人が叫び声をあげたのよ。」
「それでイドラはなったの、今この屋敷にはいないの。」
「その怪しい行動で解雇されたわよ。今どうなったかは知らないわよ。」
アンの顔は暗くなる、どうしてアンの顔が暗くなったのかわからないツフィナ。
自分がメイドになれたかツフィナは不思議に思った。