表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

傾国の美少年王子、隣国を滅ぼす

作者: 麻の葉りり

ゆるゆる設定です。

ある国に、大変美しい王子がいました。

幼い頃から美しい王子。

乳母や侍従、侍女達を虜にし、クビになった者は数知れず。


婚約者を決める場を設けたら、令嬢達が一斉に惚れて決められず。

側近を決める場を設けても、令息達が惚けてしまい決まらず。


成長と共に美貌にも磨きがかかり、ベールを付けて行動するようにしても、外す場面はあるわけで。


姿を見た者は仕事が手に付かず、声だけでも魅了してしまう為

聞いた者は放心してしまい、仕事が滞る始末。


家族である国王や王妃、兄王子や妹王女は平気。

ですが家族以外は皆虜になり、仕事や執務が出来なくなる為に、

王子は表に出ず、着替えや湯浴みなども自分で学び、行っていました。

学園にも通えず勉強は城で独学。

友人も1人もいません。


世間には、病弱で表に出られない、と公表して表舞台には一切出ませんでした。

家族以外に見せたらどうなるか分らないという懸念があったからです。

しかし、誕生した事は民には知らされていましたが、その後一切表に出ていない為、

『実はとっくに死亡している』という噂が立つほど。


そんな王子のいる国に、ある日隣国から国王夫妻と王女、王子が訪れました。

国同士の繋がりを深くする為。

王太女となり初めての外交をする王女とこれが外交デビューである王子。


城では歓迎のパーティーが開かれます。

王子は参加出来ないので自分に与えられた離宮(家族以外誰も接しないようにと配慮)で過ごします。


ところがそこに、初めての海外でのパーティーに浮かれて抜けだし、道に迷ってしまった王子と

抜け出した王子に気づき追いかけて来た王太女が現れます。

離宮は会場から離れているのに、好奇心に駆られてここまで来てしまった王子。

王子に追いついた王太女も、足の速い王子を見失わないように集中していたせいで、

王子を捕まえて帰ろうとするも見慣れぬ景色、迷ってしまった事に即座に気付きますが、

人はいません。


目の前に門番はいないが灯りは着いている奇妙な建物があるので、

人がいるのだろうと思い、声を上げますが静寂が帰ってくるだけ。

王子も門を叩き、大声を上げますが誰も出てきません。

途方に暮れていると、建物の扉が開き、そこから白いベールを被り、シンプルな服を着た長身の人が現れます。

そして美しい声で

「どうしたのですか?」と聞きます。

声を聞いた2人は惚けますが「何かご用ですか?」

という声を聞き、

「ここはどこでしょう?ええっと・・わたくし達、城にいたのですが弟が抜け出してしまって・・・、

・・・追いかけたらここまで来てしまいました。

あ、貴方は、ど、どなた?・・・お城の方??

何故、こんな所に住んでいるの?」

そう聞かれて

「・・・訳がありまして」と答えると、

申し訳なさそうにする王太女。

「私は隣国メイリール王国王太女のティアラ。

こっちは弟のランド。

ランドがパーティーを抜け出してしまって、

追いかけたらここに来てしまって。

・・・城へ戻る道を教えてもらえませんか?」

もじもじしながらそう言うティアラ王太女に

「この道をまっすぐ行けば王城の裏に着きます。

そこまで行けばあとは灯りを頼りに行けば会場まではたどり着けると思います」

と指を指し、道を示します。

「ありがとうございます」

ティアラがお礼を言った瞬間。


強風が吹き、ベールが飛んでいってしまい王子の素顔があらわになりました。

運悪く雲に隠れていた月が王子を映し出します。


整いすぎて、女性と間違われそうなほどの顔立ち。

サラサラの短い髪の毛。

真っ白なシンプルな服がかえって美貌を際立たせる。


すぐに顔を背けたが既に遅し。

王子の素顔を見たティアラとランドは、

顔を赤らめた後でぐいっと王子に近寄ります。

「あ、貴方!その顔!

・・・美しいわ!!今まで見たことが無い!!!

病弱と言うのは嘘ね!?そうでしょ!?

隠していたのねその美貌を!!

そのまま歩いていたら皆貴方に囚われてしまって、仕事なんか出来ないもの!!


ねえ、貴方、わたくしの婚約者にならない?

今の婚約者は誠実だけれど、つまらないの。

貴方はわたくしをドキドキさせたわ」

突然そう言うティアラ。

するとランドも

「うんうん、それいいね!

優秀で、ねえさまを支えてくれてるけど地味だし、

つまらないんだもん!!

国同士の繋がりも強くなるし」


やはりこうなったか、と内心げんなりする王子。

小さい頃令嬢令息達が向けた視線と言葉。


「いいえ、私はこの容姿なので、勉学もままならず・・・。表にも出られません。

王配になるには相応しくありません。

誰か探しているかもしれませんし、

速くお帰りを」

そう言う王子、だが

「表に出なくてもいいわ!

毎日わたくしが愛してあげる!!

お父様にも話をしなきゃ!

貴方も一緒に行きましょう!」

そう言って腕を掴んでくる。

その手をやんわりと外し、

王子は冷たい声を出す。 

「私が出れば混乱がおきますので。

お帰りを」

絶対零度の声にランドは目が醒めたのか、

はっとして姉を引っ張ります。

ティアラはポカンとし、ランドに引っ張られて

「怒らせると怖いよ」の言葉で諦め、

「失礼しました」とカーテシーをし、

渋々歩き出します。


大人しく帰った2人を見て、王子は建物の中に戻りました。


◇◇◇


それから隣国の2人はパーティーの日に会った王子を知る為、ティアラ王太女は王配にする為に城の人間に書き込みをし始めます。

外交そっちのけで。


王太女と王子が外交の場に出ないという事態に、

隣国の王と王妃は困惑し。

なにがあったかと2人を問いただします。

「パーティーの夜に出会った者をわたくしの王配にしたいのです!

その為に情報を集めているのです!

離宮に住む方。

何処の誰だか尋ねるのを忘れたの!

あんな素敵な方は初めて!!!

凄い美貌だったわ!!」

「ねえさまに相応しい人がいたから誰だか聞いているだけです。

心配しないで下さい」


2人の話を聞いて首を傾げる隣国王と王妃。

その足でこの国の王の元に向かいます。

「リチャード王、いきなりすまないな。

実は聞きたいことがあってな。

我が娘達がパーティーの時に出会ったという者なのだが・・・」

それを聞いて首を傾げるリチャード。

「離宮に住む、凄い美貌の持ち主だと。

わたくしに相応しいから王配にしたいとも言っていた。

まるで別人だ。

外交もせずに城の者に話を聞いてまわっているのはそれが理由だ。

儂は病弱な王子なのではと疑っているのだが

どうなのだ?」

聞かれたリチャードはため息をひとつつき、

「・・・たしかに王太女殿下が会ったのは

第2王子のようです。あの子はその美貌故、

離宮に住まわせています。

家族以外の者は皆、あの子の顔を見たり、声を聞くと惚けてしまい・・・。

令嬢達に至っては自分が婚約者になりたいと迫り、

命の危険も。

令息も惚けて側にいる事が難しく。

ベールを付けていても声だけで魅了してしまい、

仕方なく離宮で1人暮らしをしています。

王太女殿下達は素顔を見てしまったのでしょう。

熱をあげているようです。

でなければ、王配にしたいなどと言わないでしょう?

婚約者がいたと記憶していますが」

「ああ、そうだ。

婚約者はいる。変える気などない。

どうすれば良いのか・・・」

「幸い正体と住む離宮には辿り着けてはいないようですね。

あそこは離れていて緑に囲まれているので。

・・・そろそろ昼食の時間ですね。

私はあの子の所に行こうと思いますが、

くれぐれも後をつけないように。

貴方も惚けてしまいますから」

「そこまでか」

「はい」

そう言って立ち上がり、退出を促す。

素直に部屋を出ていく隣国王。

姿を見送り、歩いていくリチャード。

その少し後ろをこっそりとつけていく者が・・・。


◇◇◇


離宮に到着した王。警護していた近衛兵は下がらせ

門を叩く。

少しして出てくる王子パステル。

父の顔を見て、花が綻ぶような笑顔を見せる。

その時

がさっ と音がしてそこを見る2人。

そこには王太女と王子。と何故か隣国王妃まで。

「後をつけてきたのですか?

王妃陛下まで連れてくるとは・・・」

王妃は惚けてしまっている。


「貴方が噂のパステル王子?

美しい・・・」

「お初にお目に掛かります。

リリン王妃陛下。

パステルと申します」

綺麗なお辞儀をした王子にときめく王妃。

慌てた王が下がるよう視線で促すが既に遅し。

「美しい礼だ。

教養もきちんと身についているようだ。

王太女に、ティアラに相応しい!!!

貴方をティアラの王配にする事を認めよう!

王には私から話をする故案ずるな」

王妃も虜になってしまいました。


とそこに、王妃達が居ないのに気付き、近衛を捕まえて離宮に案内させた隣国王もやってきました。

「王妃!ここに居たか!ランドに誘われたと聞いて、もしやここに連れていくつもりだと思ったがその通りたったとは! ん?

其方が噂のパステル王子か。

なんと・・・これほどの美貌とは!」

唖然し、頬を染める隣国王。

すると王妃が

「陛下、この者を、ティアラの王配に致しましょう」

と言い出した。

青ざめる王と驚く隣国王。

「何を言う王妃よ!

王配は決まっている!!

今更覆さぬ!」

「わたくし、あの者が良いのです。

類稀なる美貌。

先ほど綺麗な礼をしてくれました。

教養もあるようです。

陛下もよくご覧になって?」

そう言うと、手をパステル王子のほうに向けます。

その手の先を見てしまう王。

顔を背ける訳にもいかず、とっさに

下を向くパステル。

しばしの間沈黙が落ちる。


「何卒お許しを。

パステルを外に出す訳にはいかぬのです」

パステルの父であるダンテ王が発言するも

「心配は無用。パステル王子は民に見せない。

優秀だが病弱だと言えばいい。

あとは何とかなる」

パステル王子をじっくり見て考えが変わってしまった王が発言する。

「しかし」

「ダンテ王よ、

こレアメタルが発掘された鉱山を持っている。

まだ発見されたばかりの所だ。

そこを進呈しよう。

あと国境にあるラステールの肥沃な大地も。

ダイヤモンド鉱山も付けよう。

だから王子をこちらに渡してもらおうか」

隣国王の顔は真剣そのものでした。

「逆らったらどうなるか、分かるな?」

同盟を破棄し、この国に攻め込むぞ、と暗に脅しをかける王。

攻められたら勝ち目はない。

王の頬は赤く、目はトロリとしている。

魅せられてしまった。

王は王妃に弱いと聞いているのでそれもあるのだろう。

だが・・・と考えるダンテ王。

そこに

「国王陛下、私は隣国へと嫁ぎます。

何卒お許しを」

パステルがそう言いました。

「このままでは同盟は破棄され、

この国は攻められ滅ぼされる。

そんな事はあってはならない。

私が原因ならば、私が責任を取らなければ」

そう言うパステル。

「ふむ、賢いな。

すぐに荷造りの準備をせよ。

婚約の書類作成後、すぐに出立する。

譲渡する土地も書類も作成せねばな」

そう言うと王妃達を連れてもと来た道を歩いていく隣国王。


姿が見えなくなると、ダンテ王は

パステル王子を叱責します。

「何故勝手な事を言った!

同盟が破棄され戦になれば我が国は滅ぶ。

だが!」

「私は犠牲になるつもりはありません。

必ず戻ってきます。

その為に、お願いがあるのですが・・・」

頼み事をする王子。

それを聞いた王は

「分かった」

「ありがとうございます。父上」

礼をとった王子になんとも言えない顔をする王。

「何故こんな事に・・・」

そう呟くと、踵を返し王城に戻って行きました。


◇◇◇


それから第2王子と隣国王太女の婚約は速やかに交され、

両国の国民に周知されました。

王子の国レインドラの国民は、王子が実在していたのかという驚きと、急な婚約話に困惑し。

王太女の国メイリールの国民は、

王太女の王配の交代に首を傾げ、新たな婚約者が病弱で外には出られない隣国王子という、王太女に相応しいのか?と疑問が残る者達が多く。


その上鉱山や肥沃な土地を隣国に差し出すという王家の決定に疑問を持つ貴族も沢山いました。

肥沃な土地に住む者達は立ち退かなければいかず、

土地近くの領地に人が一気に入り、

受け入れ準備が間に合わずに混乱する領もありました。

また移り住んだ土地に馴染めない者、

ダイアモンド鉱山で働いていた者達は、

職を解雇され、次の仕事が見つからない者も。


問題があっても解決しないまま、

パステル王子がメイリール国にやって来ました。

そして王家の馬車で速やかに城へと向かいました。


城へと着くと王族達が勢揃いでお出迎えをします。

「おお!よく来たな!パステル王子!

今日から私達は家族だ!」

「ようこそ、私達の国へ!」

「これからわたくしがたつぷり愛してあげますわ」

「よろしくね、義理兄さま(にいさま)


それから部屋に案内されます。案内したのは王太女。

調度品は最高級。カーテンの色は金色。

「わたくしからのプレゼント」

と言って渡された寝間着も高級布を使った物。

密かにため息をつき、荷物を解く。

持って来た物は少ない。

寝間着や普段着る服が数着とベール。

「見つかったら捨てられるか・・・?」

ふと呟くと、ベールと普段着だけ出してベッドの下に置く。


その夜は歓迎パーティーを開くと言って、

スーツを持ってやって来たティアラ。

「これを着て、皆の前で紹介するから!

ベールはしておいて」

というティアラ。

「私は出ません。長旅で疲れました」

パステルはそう言う。

「疲れているのなら仕方がないわね。

食事を持って来るわ」

そう言って素直に引き下がる。

あとから食事が運ばれて来たが、

豪勢な食事。

あまり食さなかった。


◇◇◇


それから毎日ティアラ王太女はやって来た。

アクセサリーなどを持って。

「これ、貴方の為に買ったの!

アレキサンドライトのブローチよ!

ほらすごく似合う!」

王妃もお茶会によく呼んだ。

「これ、パティシエに作らせた新作タルトよ。

食べてみて頂戴?」

王子も勉強をサボり部屋に来る。

「教師がうるさいんだ。遊ぼう義理兄さま(にいさま)!」

王も執務を放棄して部屋に来るようになった。

「やぁ、パステル、今日はチェスで勝負をしようと思ってな!」


パステル王子を迎え入れてから様子のおかしくなった王達。

王太女はプレゼントを毎日のように贈るため、

婚約者用のお金は早くに尽き国庫にも手を出し始め、

王妃はお菓子を沢山食べているせいで贅肉がつき、

王子は勉強から逃げ回ってるせいで学園の成績は底辺。

王は執務をせず、執務室には決済待ちの書類で溢れ返る始末。

宰相達は頭を抱えて執務をして欲しいと王に進言すると、

「儂に向かって不快だぞ!誰か!宰相を拘束して地下牢に放り込んでおけ!!

他の者達も今すぐ出て行け!!さもなくば、

地下牢に放り込むぞ!!」

近衛が宰相を拘束して連れて行きます。

それを見た重臣達は、王の変わりように驚くと同時に怒りに触れる事を嫌い、

何も言わないようにと心に決めました。


執務の滞りはあちこちに影響を及ぼし、

予算の成立などが出来なくなり、

インフラ整備や、災害に備える為の備蓄が出来なくなり、中断したりする事業が増えました。


王太女が国庫に手を出した為にお金も無くなりかけ、

王が税の引き上げを何回も行う為、

民の負担が増し生活が苦しくなる者達が増えました。


民達は不満を口にします。 

「王様が税を引き上げるそうだ。

この間引き上げたかばっかりだろ?」

「隣国から王子様を迎え入れてからおかしくなったような?」

「ああ。なんでも、大層美しい王子様で、

王様達がぞっこんなんだって」

「病弱じゃなかったのか?」

「あんまりにも美しすぎるから、病弱って事にしてたんだと。親しくしてる隣国の商人から教えてもらった。商人も誕生した時は話題になってたけど、その後は表に出てこない王子だったから生きているとは思ってなかったとか。

国から婚約にまつわる話を聞かされて驚いたんだって」

「へぇ、そんなに美人なんだその王子様。

でも最近、隣国から来る人達は王子様の事について教えてくれるよね。確か

王子様を見染めた王太女殿下達が無理矢理連れて来たって。

ラステールの土地も、ダイヤモンドが獲れる鉱山も

あげるからって言ってあげたんだって」

「珍しい金属が獲れる山もあげたって聞いたぜ?

鉱山で働いていた親戚が解雇されて、次の仕事探してるんだけど、なかなか見つからないんだと」

「ラステールに住んでた人達だって、

無理矢理引っ越しさせられて、引っ越した土地に合わなかって体調崩した人もいるって」

「引越し先見つからなくて国境付近で寝泊まりしてる人もいるんだって」

「仕事しろって宰相さまがおっしゃって捕まって毒飲まされたって。怖え」

「工事が止まっている所が多くて遠回りしたり、橋が崩落したって」

「この先どうなるんだろう・・・」


と話をしていると、空からヒラヒラと紙が降って来ました。

拾った人が呟きます。

「何だこれ?

『次の日曜日、民達は外に出るべからず。

扉を閉ざし、決して外に出ぬ様に』

どういう事だ?」

「何かあるのかしら?」

皆が首を傾げますが、

「大人しくしてろよ?

王太女殿下の元婚約者の家が王家を討つんだって。

民を巻き込みたくないからこうやって紙をばら撒いてるんだと。

ついでに言うと、隣国も力を貸してるそうだ」

と旅人風の男が言う。

「こんなに派手にしたら王家にバレるんじゃないか?」

1人がそう言うが、

「あー今は誰も王族に近づきたくないからって、

騎士団も放置してるんだと。

今の王家に仕えたくないからって辞める人が増えてるんだと」

「そう言えば門番すらいなかったな、城」


「なら決まりだな」

皆んなが頷きました。


そして当日。

王都は閑散としています。

そこに武装した一団が。

そのまま街を通り過ぎ、門番のいない王城へ。

城に入るとそのまま王族がいる奥へと進みます。

数少ない侍女などは逃げたりその場にへたりこんだり。

それらを無視してとある扉を乱暴に開く。


そこには王族がパステルを囲んでいました。

「何だ?貴様達は?」

王が言葉を発すると

「ルメイル公爵家の方達ですよ」

パステルが言いました。

「貴方達を拘束させて頂きます」

1人の男がそう言い、後ろにいた兵達が瞬く間に王族全員を拘束します。

「何をする、離せ!?」

「痛い!」 「きゃあ、何でよ!?」

「不敬だ!?誰かいないか!」


「貴方がパステル王子ですね?

初めまして、私は王太の婚約者だった

タクト・ルメイルと言います」

さっとベールをつけたパステル。

「初めまして。

レインドラ王国第2王子、

パステル・レインドラです。

よく来てくれました。


そうだこれを。

王太女が私にプレゼントした物のリストです。

王達の記録も書いてあります。

プレゼントは全部この部屋にありますので、

全部引き取って下さい」

そう言って分厚い書類を渡す。


渡されたタクトは眉を上げつつ

「ありがとうございます」

と受け取る。


「パステル、助けてよ!?

わたくしの婚約者でしょう!?

タクトも何でこんな事するの!?

婚約破棄した事を怒っているの?

謝るわ!」

王太女が言う。


「何故です?

貴方がパステル王子婚約者にしたいと願い、

この国に連れて来た。

肥沃な土地や、鉱山をあげてしまった。

プレゼントを国庫から出し、政務を放棄し、

それを糾そうとした宰相を処刑した。

税を引き上げ民を苦しめた。

このままだとこの国は滅ぶ。そう判断したから

私は貴方達から王位を簒奪しようと決意した」

「パステルは何故捕まえないの!?元凶じゃない」

「王子は被害者だからですよ。

同盟を破棄して攻め込むと暗に脅したと聞きましたよ?

それを回避する為に自分から行くと仰ったとか。

そうですよね?」

と王子に聞く。

「ああ、そうだよ。

私の顔を見て惚れた貴女が婚約者にと言い、

王子も賛成して。

王妃を連れて来て私の顔を見て賛成し、

王も賛成してしまった。


私は美貌で人を狂わせないように隠されていた。

だが、貴女が来て、私の顔を見て変わってしまった」


「そ、それは、貴方が美しいからよ!

その美貌を見れば、誰だって」

「そもそも王子がはしゃいで抜け出さなければ、

といっても仕方ないですね」

王が口を挟む

「まて、何故公爵家が王位簒奪する事を知っていた?

それにその記録・・・」

ああ、とパステル

「私が婚約者になる時に公爵家に連絡をしたのですよ。この後の事は予測できていたので。

まだ国にいる時に父に頼みまして、

商人達に私が無理矢理連れて行かれたと話を広めてもらいました。

あと貴方達から貰った物も、行動記録もきちんとつけています。

公爵家とは鳩を使って

定期的に連絡を貰っていました」


隣国の事を調べあげていたパステルは、

公爵家に連絡を取り事情を説明し、

これからの事も伝えました。

『おそらく貢物などが増え、政務も疎かになるだろう。

政務をしろと誰かが言うかもしれない。

説得しようとしても無駄になると思うから、

王位を継いで欲しい。

貴方の家なら任せられる』と。

「王が処刑を命じた宰相は生きています。

今は隣国にいます」


「さてと、色々する事がありますからこれで失礼します。

今から隣国に連絡しますので、

帰国までもう少々お待ちください。


連れて行け」

少々乱暴に連れて行かれる王達。

タクトはパステルにお辞儀をすると、

部屋から出て行きました。


「はぁ、疲れた。

ようやく帰れる」

パステルはそう呟きました。


◇◇◇


その後元王族達は全員処刑。

ルメイル公爵家が王位を継いでルメイル王国と改名し、

元王太女とパステル王子の婚約は解消。

婚約時に隣国に渡された土地や鉱山を元に戻し、

住民や鉱山で働いていた人達も元に戻る事ができて大喜び。

パステル王子は迎えに来た父王達と、

唯一美貌に魅了されず、王子の性格を愛したルメイル公爵の娘と婚約し、故郷へと帰る事ができました。



          終










































薬屋のひとりごとの女装して舞った壬氏を見て閃いたという・・・。

アニメ版の綺麗でしたね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ