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【青い毛並みは王様のあかし。大人になったら狼たちの王様になると言われていました。


 青い毛並みのランは、毎日おいしいものを食べ、毎日好きなように遊び、毎日お昼まで眠ります。


 でも、妹のレンは赤いしっぽをしています。全身の毛は白いのにしっぽは赤いのです。赤いしっぽは悪魔のしるし、レンは毎日他の狼にいじめられていました。


「ねえレン、いっしょにあそぼうよ」


 ある日、ランが果物を差し出して言いました。


「それはできないよ」


 レンは悲しそうに言います。


「あそぼうよ。だってランはボクのいもうとじゃないか」

「それでもできないよ。だってレンはけなみがあおいから」

「でもボクはランのおにいちゃんだよ」

「それでもできないよ。だってわたしはしっぽがあかいから」


 ランは走ってどこかに行ってしまいました。


 レンはどうしてランが遊んでくれないのかわかりません。


 レンはおかあさんに聞きました。


「おかあさん、どうしてランはボクとあそんでくれないの?」


 おかあさんはレンの前足を撫でながら言いました。


「ランはレンとは違うからよ」

「でもランはボクのいもうとだよ?」

「それでもダメなのよ。アナタは選ばれた狼だから」


 おかあさんはいつもそう言います。


 今度はおとうさんにき聞いてみました。


「おとうさん、どうしてランはボクとあそんでくれないの?」


 おとうさんは頭をなでながら言いました。


「ランは私たちとは違うからだよ」

「でもランはボクのいもうとだよ?」

「それでもダメなんだよ。ランは悪魔の子供だから」


 おとうさんは悲しそうに言いました。


 それでもレンはランが好きでした。小さくてかわいい、自慢の妹だからです。いつも下を向いて悲しい顔をするランのことを見ていたくなかったのです。


 大人も子供も、みんなランのことが嫌いです。でもランはなにもしていません。どうしてみんながランのことをいじめるのか気になって仕方がないのです。


「そうだ、王様におねがいしよう」


 レンは一人で森の中へと入っていきます。森の奥のずっと奥にいる王様にランを守ってもらおうと思ったのです。


 レンが森の中を歩いていると「ザワザワ、ザワザワ」と木が騒ぎ始めます。


「おやおやそこの坊っちゃん、一人でどこに行くんだい?」


 木のおじいさんが話しかけてきました。


「これからおうさまのところにいくんだ」

「でも狼の王様はとても怖いんだよ? 坊っちゃん一人で大丈夫かい?」

「だいじょうぶ、ボクひとりでもちゃんといかれるよ」

「そうかい、じゃあ気をつけていくんだよ。もしも困ったら大きな声で助けを呼ぶんだよ。きっと誰かが助けてくれるからね」

「うん、そうするよ」


 木のおじいさんと別れてから、森の奥へと入っていきます


 空が少しだけオレンジ色になってきました。


 森を歩いているとウサギのおねえさんが飛び出してきました――】




 寝息が聞こえてきて読むのをやめた。隣を見ると、フィーネはあどけない寝顔を見せていた。思わず顔がほころんでしまう。長い髪の毛はさらさらしていて手触りがよかった。


「ありがとうな」


 フィーネに毛布をかけてからベッドを降りた。まだ宿題が終わっていないからだ。


 ランプを持ってテーブルへと向かった。イスに座ると大きくため息をつき頬を二回ほど平手打ちしてからペンを取る。勉強などしたくはない。けれどここでさじを投げては今までとなんら変わらない。いや、元の町に帰っても前のような暮らしはできないとわかっているから、前に進むことを選んだのだ。


 眠ってしまいそうな目をこすりながらもペンを動かし続けた。結局、課題が終わったのは朝日がのぼる二時間ほど前だった。


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