1話
ネオンが輝く夜の街
そんな町には似つかない少女が1人
彼女は話しかけてくる人たちを華麗に躱しながら一際目立つビルの中に足を踏み入れた。
◇ ◇ ◇
「いらっしゃいませ〜、って、お嬢じゃん!」
入ってきたのがお客さんじゃなく、私だと気づいて急いでカウンターから出てくるのは、黒服の清河。
「あれ、今日店に来る日だったっけ?」
「いや、鍵忘れちゃったから、来た。」
ここは、私__朝霧 怜菜__の父である朝霧 誠一郎の経営するホストクラブ__MYST__。
ここへは基本的に月、水、金の平日と休日にくる。
来る時は最寄りまで誰かしらがむかえにきて一緒に行くのだが、今日は連絡無しに来たので、1人で店まで来た。
「連絡してよ、危ないでしょ?」
「大丈夫、迷子になんかならないよ?もう子供じゃないし。」
「迷子とかの問題じゃないんだよな……」
迷子とかの問題じゃなかったらどんな問題だ。
「誰かに声掛けられたりしなかった?」
声かけられてついて行くような子供に思われてるの?
「かけられてないし、かけられてもついて行かないよ?」
「ついて行かれたら困る」
私は現在19歳なんだけど、5歳児とかに見えてるの?
「そんなことより、パパいる?」
「誠一郎さんなら今ホール見てる。呼ぶから待ってて、」
そう言って清河がカウンターに戻っていくが、私はそれを止めた。
「あ、まって、別に呼ばなくていいよ、急いでるわけじゃないから。私裏で手伝いしながら待ってるから、私が来たことだけつたえてくれれば。」
パパの仕事の邪魔はしたくない。
「わかった、今裏にカケルいると思うから、なんかあったら聞いて。」
清河の言葉に頷いて裏に入る。
「カケルー。」
「はーい!って、その声はお嬢じゃん!なんでいるの!」
この無駄に「!」をつけて話すのが新人黒服のカケル。
「鍵を忘れちゃってね、ドリンク?手伝うことある?」
「ドリンクっす!…まさか、一人で来たんですか?」
「そのまさかだけど、、、。」
「は!?!?」
一人で来たことを告げた瞬間「ありえない」みたいな顔して私を見るカケル。
どうしてそんなに驚かれるんだろう。