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限界転生初日後半

さて、今俺は飯を食っている。

食っているのだが、なんというか、こう、状況が非常にまずい。

飯もまずい。


まあなんというか死体が多分この今俺を拘束している連中の仲間だったのだろう。

言語が何一つ通じていないのでしこたまブタれながら大声を浴びせられたのだが。


囚人服のようなものを着て飯を食う俺に対し、この【透明な牢獄】の外側に恐らくいるフードを被った人間は監視以外の目的がないのか、俺の方を見ている以外は何も特にしてくる様子はない。


状況を整頓しよう。


デカ鳥vs俺!

敗北…。

リスポーンしたわけではなく、謎の球体の中に呼吸できる液体が充満していた感じで怪我を恐らく治す系のやつかな。

何者かに回収されて治療を受けた後にカナシバリのような状態にさせられ、礼も言えず、拾った剣を見せつけられ、殴られ、この3畳くらいの【透明な牢獄】に入れられている。


柵も策もないので逃げようとしたら壁にぶつかったので間違いない。


出されたなんかよくわからん焼いたヤバそうなキノコとお茶…なんかわからんがそういう系の飲み物を胃にとりあえず放り込んで思う。

せめて意思疎通ができればなぁ。


そんなときだった。


「おめでとう、これで君もこちら側だ」


フードの男が声をかけてくる。

あまりのことに言葉が出ない。


いろいろと聞きたいことというか、言いたいことというか、意思疎通出来たのに殴られとんの見てたんかい!というか。


「どうした、感動で声も出ないか。もう少し面白いリアクションを期待してたが」


フードから覗く口元が笑っているように見える。悪趣味な挨拶をされ、クソ悪態付いて生きていこうと心に決めた。


「アンタこそ人が飯食ってるとこダラダラ眺めてなんのリアクションもねえじゃねえか。何時間も黙ってて今更どういうこったよ」

胡坐をかいて言い放つ俺に、男は返答する。


「ヨモツヘグイという言葉を知っているか。…知らなそうだな。さっき我々が与えたものを食して初めてお前は我々と話せるようになったのだ。今まで黙っていたのは伝わらないことがわかっていたからだ。勘違いから虚勢の悪態をつくのは止めたまえ」

ヨモツヘグイが何なのかは後日学ぶわけだが、まあようはあの世の食い物を食うと現世に帰れなくなるみたいなものらしい。

「まあ実際はそんなかまどで煮込んでいるものではなく、お前が疑いもせず食したキノコがそういう類の効能なんだがな」


こっちがチンプンカンプンなのはつゆ知らず、勝手に話を続ける男。


「全然意味が分かんねぇからとりあえずアンタの名前とここがどこで何すればいいのか教えてくれ」


俺の本音であった。


「私はヒノン、お前のように引っ張られてこの世界に来た者たちを回収しているとでも言えばいいだろうか。ここは我々の集合施設のようなものだな。君が何をするべきかはまだ定まっていないが、君が持っていた剣は我々の仲間が使っていたものでな。皆君が敵か何か図りかねていたわけだ」


なんで殴ったんだよじゃあ…と思っている俺の思考を先読みして、

「そうだな、殴られたのはあのツルギの持ち主がここのトップ層の人格者だったのでな。庇われたりした挙句装備を盗んだのではないか、と思われたのだよ」

とのこと。


仕方なしに俺はここへ来てからの短い冒険譚を聞かせる。

「…だから、あれは死体から剝ぎ取ったような形になっちまったが、少なくともそこまで不義理な対応ってわけじゃないだろ。それに俺が拾ってなければ過去他に探してた奴らが回収できてなかったものが朽ちてたわけだしまあ半分くらい感謝をしてほしいもんだが」


姿勢を崩したて肘で寝っ転がる俺の話を、ヒノンは黙って聞いていた。

ちょうど話がひと段落したころ、ヒノンの後ろから俺を殴ってた連中のうち二人くらいが歩いてくる。


「ヒノン、もう会話はできるのかそいつ」

「やはりシェロの聖剣を盗もうとしたトコヨの犬だったか?だから即座に処刑でいいといったんだ」

「そもそも43代目の貴方が持つべきだったのでは…そうすればブリオが死ぬことはなかった」


会話しつつ近づいてくる物騒な鎧を着た3人。よく見ると俺が着なかった最初の鎧に似ている。

一人は女声だが、他二人はイケボだ…。とかのんきなことを考えてた。


「お前たちには周辺の警護を頼んでいたと思ったが…」

俺の方を見たままヒノンは言う。


3人のうちの先頭の男がそれに対し返す。

「シェロの聖剣から【濃度のおかしな魔力残滓】が出ていた。それがこの男なら流石に見過ごせない。出る前にそれだけは見極めるべきだと判断した」

後ろに並ぶ二人も同意見、というように待機している。

「それについては私もそう思うが、少なくともこの男ではない。この男は戦力になるような能力は身に着けていない。あのワイバーンロードとの戦闘も、その前に私とエニアルが狙いを定めていた時も、この男には警戒心や魔術の発動が見受けられなかったのは報告したとおりだが」

「そこまではわかっている。だが確証がない以上、記憶を改ざんされた【リンカー】の可能性もある」

「だから私がこうして手ずから捕縛している。この施設に私以上にこの役割に適切な人材もいないだろう」


3人が黙る。


少しして、後ろの女声の方が喋る

「わかった、我々は我々の仕事をこなそう。だがそれはそれとしてその男の名前くらいは聞いてもいいだろう」


予想外だったのか、ヒノンが少し笑った。

「ああ確かに、私も君の名前をまだ聞いていなかったな、教えてくれ」


思わず口にしそうになる本名を飲み込み、なんかちょうどいい名前がないか2秒ほど思案した。


「俺の名前は───」


正直もう少し考えて名乗ればよかったなとなる、俺の後悔の一幕である

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