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限界転生初日

異世界転生。


いい響きだと思う。

現実のつらいところから逃げられるしそれ以上にチート能力とかウハウハになれるっていうイメージがあるし、ホントうらやましいなぁって思う。

いや、思ってた。

実際、28歳にもなってそんなところに憧れている人間は相当に人生詰み側にいるのでまあ察してほしい。

ただまぁこれが本当にそんなことにあったらどうなるのかという話。


あったんだよなこれが。

起きてしまったわけだ、そういうのが。


トラックに跳ねられたわけでも地下鉄に乗ったとかでもないし、路地裏のポータルに入ったり戦場で銃で撃たれたりしたわけでもない。

本当にいつものように帰って寝て起きたら…そんな感じだったと思う。


一面の草原。


少しだけ背の高い草が顔を掠めるのがくすぐったくて起きたわけだが、状況は何も飲み込めていない。

朝早い時間なのか暑いけど日に強く当たることはない。


初見、夢か何かだろうと思った俺は空でも飛べないかと試したもののできなかった。

速く走るわけでもなく、瞬間移動できるでもなく、ただただ草原を歩くことになる。

歩き始めるくらいで気が付いたが、全裸だったんだよな。


夢にしてはナガナガ歩かされた先で、陽の光が反射している何かが落ちているのが見えて、俺はそこに近づいて、夢にしては趣味の悪い死体を発見したわけで。

今思うとこの瞬間こそがきっかけというか、偶然にもコッチの世界でなんとかなったターニングポイントだったのかもしれん。


まだ夢かなんかだと思ってる俺は死体から適当に衣服とか取れんかな、とか悠長なことを考えてガチャガチャやってた。

反射していたのは鎧のようなものだったのだがこれは重いので捨てた。

死体は干からびてるような、中途半端に腐っているような、でも白骨でも虫が湧いてるでもないような、いわゆる博物館のミイラみたいなものを想像してもらえればいいか。

死体の着ていたモモヒキみたいななんかとか、Tシャツみたいななんかとか、この辺は汚くて取る気にもならず、その上に巻いていた適当な腰巻と、その腰巻にぶら下がっている剣とポーチ、あと中身のボロい地図みたいなもんをもらうことにした。ゲームのキャラとかよく死体漁りできるよな、後にも先にもこれしか俺はねえ。


地図に書いてあるのは多分現在地付近だろう、ってコトで北に向かえば湖みたいなとこが描いてあったのでのども乾いていたしそこを目指す。

方角はさっきより暑いし陽が差してる方を南ってことにして影の向き側に歩く。

マジでこの時逆に歩いていたらこのお話はここで終わってたんだろう。終わってた方が楽だったやもしれぬ。南無南無つって。


で。


本当になんで覚めないんやこの夢リアルすぎやろ。もしかして異世界はクソ社畜とともに的なアレですかこれ!?ってなりだしたのがこの湖を目指している最中の話。


2分間の探検だかなんだかっていう子供のころに読んだ小説のこととか思い出しながら歩いていくと、だんだんとなだらかな丘陵になってきて、そのまま進むと湖と森が見えてきた。

陽は傾きつつあるが、まだそんな夕方と呼ぶには早い程度だった。

森なんて形容したが直進したら100メートルもない、横に広いファンタジー作品によくある森だった。

到着と同時に、ほとんど裸みたいなもんだし、汗を流したいしポーチだけ外して腰巻洗いついでに湖に入る。

ここまで鞘から抜きもしなかった剣が、湖の中に入った瞬間どうにも気になった。腰巻を洗い流してたから一緒に洗いたかった説もあるが、なんというか、ご都合主義の異世界転生物語にありがちな出会いのシーンだったのかな。


引き抜いた剣が水中で一瞬光る。反射ではなく発光した。そうして脳内に直接イメージが流れていく…普通言葉だったり女神が出てきたりそういう感じじゃないの…?と思った。


流れたイメージはこう、北欧神話のラグナロクじゃないが、そういうもの。なんかのゲームで似たようなシーンなかったかこれとか思いつつ、それとは別のイメージが三つ。


一つめは街かなんかで誰かと酒を飲むイメージ。二つめは剣を持って戦うさっき漁った鎧の男のイメージ。三つめは俺が死体漁りするイメージ。


ああこれもしかして剣の記憶というか記録というかみたいなやつ?武器強化でだんだん出るタイプのやりこみ要素や。とまあ即座に理解はしたものの、あまりにもヤバそうなイメージが一発目に出てきてるせいで正直この剣捨てたいと思った。


過去いろんなゲームや漫画やアニメや映画に触って生きていたことがこんな形で適応力に生きるとはおもってなかったので自嘲気味に笑ってしまった。


んでひとしきり水浴びをしたがタオルなんてないので全身ブルブル犬みたいにして少し乾いてきたところで地図を読む。ここから西の方角に町があるが、草原を下ってきた限りだとそんなものは全く見えなかった。しかも森を突っ切らないといけないので正直あんまり行きたくない。日暮れも近いしどうにか一晩ここで過ごせないか、と考えていた時のこと。


1メートルくらいの鳥があらわれた。

いや鳥というかこれはこう、ワイバーン的な…なんだあの鋭利な爪は。

明らかにこっちを見ているんですねこれが。


よくあるお話ならここで初戦闘!剣の能力が覚醒して勝利!ヒロインに見られてて仲良くなる!みたいな感じになるもんなんで俺も剣を握って睨みあっている状況。

直後、身を翻し飛び掛かってくる怪鳥、とりあえず振られる剣、当たるはずのない現実、襲い来る鋭利な爪、回避できず激痛が走る左肩、体勢を崩し湖に倒れ盛大な水飛沫が上がる。

当然湖はめっちゃ深いわけじゃないから倒れた衝撃で右半身にもダメージはあるは顔も撃ってるから頭もガンガンだわ鼻血も出るわ最悪ですね。某ソウルレベルの一撃の重さのくせに回復アイテムがねえことにくそ痛い中冷静にキレてたのを覚えてる。


映画とかみたいに追い込まれてると動けなくても本当に剣を杖のように使って立つんだな、そうして何とか怪鳥を視界に入れる。正確には入れようとした。そのタイミングで意識が遠のいて…。




気が付けば全裸で変なカプセルの中にいた。

また全裸かよ。

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