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2)そもそもなんだってお見合いお茶会なんてものが開かれているのか

 この国には、適齢期の王子が三人いる。

 第一王子アルフレッド。

 第二王子ブラッドリー。

 第三王子チャールズ。

 上から順に二十一歳、十八歳、十四歳。


 この三王子から次代の王が選ばれる予定 。であるにも関わらず、三人が三人とも、未だ婚約者を置いていない。

 お世継ぎ確保は国家存続の一丁目一番地。お相手なくしては叶わない王家の義務だ。

 つまり、結婚しない王族の価値は極めて低いのである。

 ならばここはいっちょ国中の適齢期の貴族令嬢を城にかき集めて盛大にお見合い茶会を開催しちゃいましょう!と、お偉いさんたちは思ったらしい。

 そしてまんまと実行されてしまった。


 王家の、王家による、王家のためだけの、出会いの場である。


 かくしてキャロライン含む令嬢たちは今現在、王城の茶会に集められているわけだ。

 お見合い期間は半月。内、最短でも三日間は城に留まる義務がある。……王命である。


(胡散臭いとは思ってたけど、まさかここまでとはね……)


 嘆息を禁じえないキャロラインである。場の中心人物を見やる眼差しは、どうあっても白けたものにならざるをえない。


 茶会や夜会が若い世代の見合いを兼ねているのは当然のこと。しかし主催側がこうもあからさまに欲望を爆発させているというのはみっともないことこの上ない。それが国家の長たる王家となれば、目を覆いたくもなる。


 表向き茶会の主役は三王子だが、メインディッシュは明らかに第一王子だ。第二王子はせいぜい前菜で、第三王子に至っては皿の隅の添え物がいいところ。これについては令嬢側の需要と主催側の目論見とが一致している。


 王太子に一番近いのは第一王子。金髪碧眼、浮世離れした美貌も随一。次代の王としての資質も、辣腕で知られる宰相殿のお墨付きがあるとかないとか。適齢期の令嬢にとってはまさに国一番の優良物件なのである。……表向きには。


 そして、どうやら主催側のイチオシも第一王子であるらしい。招待のされ方から茶会始めのお偉いさんの挨拶、果ては侍従やメイドの一挙手一投足まで、至るところにその本音がにじみ出ている気がしてならない。


 さて、これらの情報を総合して、王家の腹を探ってみるに……。


「……とんだお茶会になってしまったこと」


 茶会二日目、キャロラインの傍らで吐息混じりに呟いたのは、この茶会で知り合った中位貴族の令嬢だった。

 同じ卓を囲んでうんうんと頷く他の面々も、似たりよったりの立場の令嬢たち。皆、初日の第一王子のトンデモ暴言に対して、キャロラインと概ね同じムーブを見せてくれた同士である。



 茶会初日、例の「生理的に無理」発言が放たれた直後。令嬢たちの行動は概ね三分された。


 パターン1「気にせずそのまま第一王子に猛アタック」。

 上位貴族の気位の高い令嬢や、肉食系令嬢に多い反応である。逃げ去る辺境令嬢に愉悦や蔑みの視線を送っていたのもこの手合いがほとんど。ライバルが減った今がチャンス、という短絡的な現金さもにじみ出ている。


 パターン2「さりげなく第一王子から離れる」。

 一番多かったのがこの反応。まあそれはそうだ。今回たまたま被害者にならなかっただけで、いつ自分があのような暴言を吐かれるかわかったものではない。自分の価値に絶対的自信があるか、第一王子に対してよほど強烈な執着や目的意識でもない限り、一般的な貴族令嬢メンタルの持ち主ならば距離を取りたがるだろう。賢明な判断である。


 パターン3「短時間離席する」。

 最も少数派にして、キャロライン的にはお友達になりたいナンバーワン令嬢たちである。

 傾向としては下位から中位の貴族令嬢の中でも、初めから衣装も態度も控えめに振る舞っていた手合いが多い。目立ちすぎず、うずもれすぎず、義務はしっかり果たしてますよというポーズだけはとって、腹の底では何を考えているのか計り知れないタイプ。

 王子たちや主催側に気取られぬよう、最低限失礼に見られぬよう、一気には動き出さず、人の流れを読み、不自然でない人数ごとに入れ代わり立ち代わり席をはずしてはほどなく帰ってくる。示し合わせたわけでもないのに統制されているかのような令嬢たちの連携っぷりに、ちょっと笑ってしまったキャロラインである。

 離席中の行動はおおかた想像がつく。なぜならキャロライン自身がこのパターンの典型だからだ。


 彼女たちのほとんどは、自己の判断で、あるいは身内に言い聞かされていた通りに、第一王子の言動と茶会の雰囲気について実家に報せを送ったに違いない。

 その上で、今後についての判断を仰いだのだ。できればとっとと帰りたい、という願望を胸に。

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