42-2 謀反人
「ツカサ殿に?!」
「なんということだ!」
「主の分家が謀反を起こすつもりであると仰るのか!」
「そうだ。トクカー家がこの度の魔物暴走に関与されていないことは確認している。むしろこちらによる策略だと思われていた始末だった」
「………双方に裏切り者がいると?」
家臣の中で一際体が大きく、そして身なりの良い片眼鏡をした男が前に出てきた。その場の家臣全員は少し後ろに下がった。
「理解が早くて助かる。ヨイチの言うとおりだ」
ヨイチは片眼鏡の位置を直すとこちらに目を向けてきた。
「カズマサ殿とアイリ殿は如何様な理由でこちらに参られたのでしょうか」
「我らはカガリ殿の言を信じてその証を目視することと、アイリはこの地に残って双方の伝達役となるためにカガリ殿に同行して参った」
「なるほど委細承知しました」
それからじっとこちらを見詰めてきた。
「もしやアイリ殿はハナ様の……」
「その通りだ」
カズマサの答えを聞いたヨイチは私の前に来て片膝をついた。
「え?!あの」
「よくぞ参られました、アイリ様」
?!
「……ハナ殿は俺の叔母、父上の姉にあたるんだ。そのことを知らないのだと途中で気付いてはいたんだが、伝えるタイミングを逸していた」
「父上が口止めしていたからアイリは知らなかったことだ」
オダ本家の?それなら、カガリ様は私の従兄弟ということですか……。
「そうだったのですね」
「すまない」
「いえ。ずっと怒涛のように物事が進められていましたから…」
「本来、太陽と月の関係が良好であったならアイリは……いや、なんでもない。それよりもこれからの作戦を決めていきたい」
カズマサはそういうとカガリと頷きあった。家臣たちはまだついていけていない者もいるようではあったけれど、ぐっと気を引き締めた表情をしていた――
――作戦会議が終わり、当初の予定通り進められることが決まった。
ユリが月の人質兼証人としてカズマサと共に太陽の国に戻ること、そして、すぐにツカサ一派、裏切り者に対して捕縛の動きをとること。
「それから、ツカサより太陽の国の裏切り者を聞き出せたなら、すぐに連絡の鷹をユリに向けて飛ばす。あれはどこにいても見つけ出して手紙を届けてくれるはずだ」
「わかった。速度を優先しそれぞれ動く。予定通り進めよう」
カズマサはそれから私のところに近づいてきた。じっと見つめられるのでつい目をそらしてしまった。
「アイリ。お前はここに残る。だが、オダ家の娘として自信をもって仕事をしろ」
「!」
彼の瞳を見つめ返すとそこには疑いのない眼差しがあった。私を信頼している。それが分かった。
「……はい。一生懸命、オダ家の一子として務めを果たします」
「うむ。カガリ殿、妹を頼みます」
「!」
「承知している。だが今生の別れというわけではない。また会おう」
カズマサとカガリは握手を交わしていた。
カズマサとユリを見送るとすぐに軍の準備が進められ、オダの分家、ツカサのいる領地に向けて侵攻の準備が進められることに。集会場に集められた家臣たちはカガリの指示を受けながら兵をそろえ、武器を選定しているところだった。
私はそれを少し離れたところから眺めていた。と、胸元の冠が…。
キン!キン!カキン!
『聞こえる?』
はい。ティターニア様。
『よしよし。冠を使った心での会話も慣れてきた感じね。見ていたけど、そのツカサとかいう奴の捕縛に参戦しなさい。アイリの力を見せつけるのよ』
え?
『今やアイリの右に出る者はそうそういなくなっているはず。ぐっといってぱっとやっつけて、そんでもって鮮烈な英雄デビューを飾るの』
ぐっといって?
『そ。とにかく、がんばってね』
……。
作戦を確認しあっているところのカガリの近くへ向かった。
「カガリ様」
「ん?どうしたんだ?」
「私も参戦したく、お願いいたします」
「……張り切るのはいいが、この国においては隣国からの客人ということになっているんだ。だから、俺たちのために内戦に参加させるようなことは――」
「どうか。お願いいたします」
「……いや……」
「ううううう」
え?
泣き声にびっくりして二人でそちらを見ると、そこで爺と呼ばれていた家臣が泣いていた。
「おい。どうしたんだ」
「泣いておりませんぞ!拙者!しかし、感動しているのでございます!なんともハナ様やカオル様の生き写しのようではございませぬか。この勇ましさ、素晴らしいですぞ!」
「おお……そうか」
ほぼ号泣している古参の家臣はそういうと、急に走り出してどこかに行ってしまった。あっけにとられているとすぐに戻ってきて、その手に持っていたものを私の目の前に突き出してきた。
「これは」
「もともとカオル様の使われていたものでございます!」
銀色に光る、メリケンサック一つがそこにあった。
「拙者にはわかりますぞ。その纏われている雰囲気。おそらくカガリ様やカオル様と同じなのでしょう。これはカオル様が使われていた武具でございますれば、アイリ様であれば使いこなせるのではないでしょうか」
『懐かしい。カオルへ渡したプレゼントで、聖力を込めると先端から爆撃を繰り出せる仕組みになっているのよ。マジックアイテムの拳銃シリーズから発想を得たものであたしの自信作よ』
女神のギフト「聖職者の拳鍔」。
差し出されていたそれを受け取って左手にはめてみるとしっくりとはまった。相手が刀をもっていてもこれで受け止められる。
『あと良い物を右腕に着けているじゃない?そのアイテムは魔力がなくても使えるし、むしろ魔力がない人用のアイテムといった方がいいかもしれないわね』
日守聖域で手に入れていた木製のブレスレッドを見た。
『それは「エンジュの円環」。装備中は魔法を使えなくなって、また、魔法によるバフも得られないけど、その代わりにあらゆる魔法から守られるっていうアイテム。アイリはどうせ魔法使えないからデメリットなしで攻撃魔法の防御用アイテムになるわね。聖力は阻害されず関係なく使えるわ』
レア度はレジェンダリーランクじゃないかとのこと。
『さあ、もはやアイリが負ける要素はなくなったんじゃない?自信もっていきましょう!』
ぐっと両手を握ってカガリを見つめた。
「……分かった。ただ、俺のそばを離れないように」
「……はい!」
*****
ご覧いただきありがとうございました。
ぜひお気に入り登録をお願いします。また、いいねなどいただけると励みになります。




