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賢者の叡智なコレクション  作者: 永頼水ロキ
第三章 賢者の機兵
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16-2 魔法士見習いの双子

 ――ダンジョン「砂丘遺跡」の入口は街外れに佇む小屋。


 ギルドが入口を管理していて、一見するとどこにでもある木造の小屋だ。けれど、その入口の扉を開くとその先は闇。転移魔法がかけられていて、扉の先は異界に繋がっている。

 この転移門の稼働原理はわかっていないけれど、事実そこにある。


 転移先は黄色い砂漠が広がっている。大きな砂丘がいくつも連なる広大な砂漠であり、どの時間に入っても昼日中で、空に浮かぶ二つの太陽が影を消し、暑さで殺しにくる。


 出現するモンスターは砂に潜るタイプや空中から襲いくるタイプ。そのいずれもとにかく面倒くさい攻撃をしてきて、さらに、あまり有用なアイテムをドロップせず、道中にも何も落ちていない。


 ここまで言えばもう十分、不人気ナンバーワンのダンジョンだ。


 そんな不人気なダンジョンを選んでやって来たのには理由があった。

 それは「(いにしえ)のアイテム」が産出するピラミッドが砂丘をいくつか越えた先に存在しているから。ピラミッドで手に入るアイテムの多くは、単に魔法効果が付いているだけではなく、古代文字を刻んだ物が産出する。大賢者の生きていた時代よりさらに前の世紀の失われたアイテムが産出していると考えられていた。


「はー、すごい景色ですね、太陽が二つありますよ!師匠」

「うむ。こういった異界系のダンジョンは珍しいから研究のしがいがあるな」


 不思議な仮面を被った子供二人がダンジョン談義に花を咲かせていた。もう一人の子供の冒険者はそれをすこし離れた位置から冷めた目で見ている。

 ……という、なんともシュールな状況にずっと困惑させられていた。


 こそっとクロエが耳打ちしてくる。


「兄さん、この子達変だわ」

「……えっと、エマだったかな。とりあえず俺たちの依頼は理解しているよな?」

「うむ。大丈夫だ。君達が求める古のダンジョン産出品を獲得できるよう、共に探索を行うこと。何か見つけた場合はその状況を報告することであろう」


 エマの声は幼い少女のようで、しかし、どこか存在感というか、強い印象を受けるのでその歪さに戸惑っていた。言葉遣いも妙に大人びているというか、老人のようだった。

 彼女がリーダーとして、そのメンバーには同い年位の少女のアリスと、ジャックという少年がいた。ジャックは体格が一番小さく、変わった服装をしていて、唯一レンジャータイプの冒険者だと分かった。


 しばらく砂丘を歩いて分かったことは、アリスがとても優れた魔法を使えるということ。まだ幼いせいか魔力量は大したことはないが、体温調節のための冷気の魔法を見たとき、その陣に描かれた式は無駄のない精密なものだった。


 ……これほど精密な魔法を……どういう経歴なんだ?


 クロエもその魔法に感心していて、また、驚いていた。


「あの」

「ん?何かな?」

「アリスはどこで魔法を習ったの?」

「私は師匠から教わりました!ね、師匠?」

「そうだな」


 エマも魔法が使えるってことなのか。今のところは一度も使っていないようだが。


「そ、そうなんだ。えっと……三人はこの辺の生まれなの?」

「いや、そうではない。『賢者の機兵』を探しにきたのだ……そういえば君達は知らないか?」

「賢者の機兵なら機歯聖域にあるだろ?だが、入るにしてもレベル違いだとは思うが」


 彼らは最低ランクのはずだった。

 それを聞くとすこし考えて、それからエマは口を開く。


「……そのとおりだ。まあ……忘れてくれ」


 秘宝館を目指している若い冒険者ってことか?なんか、しっくりこないな……。


 そうしてしばらく歩いていくと地面が揺れ始めた。


「皆、気を付けろ!サンドワームだ!」


 このダンジョンをよりいっそう不人気にしているモンスターの一種がサンドワーム。

 ドロップアイテムはコモンランクしかださない上に、地面の下から襲ってくるという面倒くさい戦闘スタイルのモンスターだ。


「アリス、頼めるか?」

「はい!師匠!」


 アリスは地面に手をおいて魔法陣を展開した。

 彼女が展開したのは音消しの魔法。サンドワームは足音を聞いて襲ってくるから、姿消しに近い効果が期待できる。


 何も得られないなら戦うのはただの無駄骨だろう。一行はサンドワームを避けて歩みを続けた。アリスはずっと音消しの魔法を展開し続けていた。


 無駄のない魔法式だからこそ、彼女の少ない魔力量でも問題なく稼働していたようだった。


 自分より少し幼いようなのに、魔法式の組み上げ方で負けているような……。


 ……砂丘をいくつか越えると、ついに、このダンジョンの唯一のうまみ、ピラミッドが見えた。砂丘の上から見ても大きい。入口には魔像というモンスターが二体守護しているのも確認できた。


「ピラミッドはボス級のモンスターが守護しているから入るのも苦労するとは聞いていたが……かなり厄介だな」

「魔像か。アリス、あれをどう攻略するのがよいと思う?」

「……倒すのもありですが、いっそ……魔力封印を一時的にここにいる全員にかけるというのはどうでしょう?」

「なに?それはどういう……?」

「マテオさんは御存知ないのですか?魔像は敵の魔力に反応するモンスターなので、魔力を探知できなければ攻撃できないんですよ」

「そんな話聞いたことが……そうか。敵を前にして自分の魔力を封じるなんてことはしないから」

「でも、万が一戦闘になったら」


 魔法使い四人の魔法が使えない、その時に戦闘になったら致命的だ。まともに戦えるのがジャック一人になってしまう。


「せっかくだからその戦術を試してみよう。マテオ殿とクロエ殿は不安であればジャックの後ろに」

「おいおい、いや、もしも――」

「大丈夫ですよ。ほんとはジャックだけでも瞬殺できますから。実験ですよ、実験!」


 まじか……。


 アリスは全員に魔力封印をかけてきた。最後に自分自身にかけて。魔法式を見る限り、効果時間を定めているようだった。ここから歩いてピラミッドに至り、中に入った頃合いで切れるようにしているようだった。

 それから、全員で歩いて進み、魔像二体の目の前まで来た。


 どきどきと心臓が高鳴っていた。目の前に、強大な魔像の黒い体が、ピラミッドの入り口両側に浮かんでいた。じっくり見る機会なんてないので初めて見たが、黒い石でできた成人男性の彫刻のようだった。


 確かに魔像は全く反応せず。五人は素通りしてピラミッドに入った。


「実験セイコーですね!」

「うむ。理論は正しかったな」


 無茶苦茶だ……命を懸けて実験をする?これが冒険者か?いや、違う。そんなはずはない。こんなのは狂気の沙汰だ。

 横でクロエもため息をついていた。ほっとしたからなのか、あきれ返ったからなのか。


「勘弁してくれよ……」

「どうしたのかね?さあ、行こう」


 ピラミッドの中は、少し薄茶色の大きな石組の廊下が縦横無尽に迷路のようになっていた。

 燃料は分からないが燃え続けている不思議な松明が道を照らし、時々、マミータイプのモンスターが現れた。


 ただ、火炎の魔法をすぐにアリスが使うので、全く歩みを止めずに前に進めていた。彼女の魔法は信じられないほど早く、そして相変わらず正確無比だった。


 アリスが弟子として、エマは……化け物か?


「せっかくだから確実に古のアイテムが手に入るところに向かうとしよう」


 目の前にボスエリアの入口らしき、荘厳な石の扉が姿を現していた。


「エマはここに入ったことがあったのか?」

「いや、初めてだ」


 まるで地図でも見ながら歩いていたようだった。

 迷いの無い様につられて、気付けばエマの案内で進んでいた。


 なんなんだ?これがFランク?ほとんど俺とクロエは何もしていないじゃないか。


「さあ、入ってみよう」

「わくわくしますね!」


 ボスエリアの入口らしく、見た目とは異なり簡単に開く。中は広大な広場になっていて、石造りの壁と床と天井が。至るところに松明が光る。

 そして、マテオとクロエにとって初めてのボス戦が始まる。

*****

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