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賢者の叡智なコレクション  作者: 永頼水ロキ
第二章 賢者の写本
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12-3 ニーグレトの作戦

 ――街に隣接する森の奥、そこにある炭焼き小屋の隠された地下の施設にニーグレトのメンバーは集まっていた。

 捕らえたガイウスをそこの牢に入れたことでようやく一息つける。


 何人かの仲間に小屋周辺の警備に出てもらい、私たちは大部屋に集まっていた。


「ニトさん、ギルドに残しておいた仲間からの連絡です」


 カールが渡してきたのは「アルハラの手紙」というアイテム。

 同じ印のついた手紙同士が繋がっていて、一方の手紙に書いた文字が別の手紙にも浮かび上がるため、連絡用のアイテムとして使われる。同じ印の手紙がいくつ流通しているか不明なのが難点だが、暗号化した文章を使って連絡すれば問題なく使える。


「……まだ周辺からの兵の増員はないみたいね」


 手紙の片割れを持たせた仲間にはギルドに残ってもらい、そこから情勢を確認し次第、手紙を通じて連絡を入れるようにさせていた。


「時間の問題ではあると思います。首長が盗賊に誘拐されたということはすでに領主の方にも連絡は入っているはずですから」

「そのとおりね。まずは街道の要所に兵を配置して、私たちが他の領に逃げられないようにすることからかしら」

「動き方としてはそうだろう。逃げる予定はないからその点は俺たちに影響しない。だが、各所の転移門を使って兵を配置してくる可能性もあるから油断はできないぞ」

「そのとおりね。それで、ガイウスの横暴の証拠だけど、どのくらい集まっているのかしら」

「誘拐されていた少女と、あとは集めておいた証拠がいくつかはある」

「では、これも追加すると良い」


 そう言いながらエマが書類の束を取り出して、目の前のテーブルに置いた。

 それを開くと、そこにはガイウスの裏帳簿が入っていた。


「これは?!」

「ガイウスという男は、意外と家計簿をきちんとつけるタイプだったようだな。中身の確認がしやすい帳簿となっている。それに裏金の保管庫の場所も記載されているから、その場所を押さえればもっと悪事の証拠が出てくる可能性がある」

「……いつの間にこれを?」

「二手に分かれ、邸に潜っていた時に」


 これで十分な証拠がそろいそうね。


「よっしゃ!それじゃあ、ガイウスを民衆に突き出す準備を進めておくぜ」

「ええ。街に残った仲間に連絡を。保管庫を押さえて、それからガイウスを晒す準備をするの」


 準備はおそらく明日の朝には済むだろう。ついに、ガイウスを排除し、この街を少しは正常化できるはず。ただ、盗賊として活動してきた私たちを国や領主がどう扱うのか、それはわからない。

 自分たちの正義に従って、決して後ろめたいことはしてきていない。けれど、法を犯してきたことに違いはない。その帰結がどこに向かうことになるのか。


 いいえ。もう覚悟はできているじゃない。


 ギルドの腐敗を感じ、そして、ガイウスの横暴を見て見ぬふりはできなかった。だから、暁の旅団のメンバーと一緒にここまでやってきた。

 後悔はない。


「さあ!作戦は大詰めよ!みんな気合を入れなおしてね!」

「おう」

「了解です」


 と、その時、手元の手紙が熱を帯びた。


「……どうした?」

「ええ。どうやら甘かったみたい。ギルバートが出てきたようね」

「誰だ?」

「ギルバート・ベリンガム。ガイウスの弟で、隣街の首長をしている男よ。ガイウスほどの悪事を行っているわけではないけれど、正直言っていけ好かない貴族の一角ってところかしら」

「そのギルバートがどうしたんだ?」

「兵を率いてこの街を包囲するように展開しているって。転移門か何かを使ったのかしら?ずいぶんと早いわ。まだガイウスの誘拐を認知して間もないでしょうに」


 正直言って想定外の早さね。


「ふむ」


 エマは急に壁際をじっと眺め、それから頷いた。


「……ずいぶんと規模の大きい軍隊のようだ。二個大隊、連隊規模の500人といったところか」


 見えているの…?


「手際が良すぎる。どういうことだ?まさか、作戦が漏れていたっていうのか」

「そうだとしても作戦決行を決めたのもついさっきのことだぞ」

「……タイミング、か。軍の規模が大きすぎて常設の転移門では一度に移動できはしないだろう。我々の作戦実行のタイミングも計れるものではなかったから、おそらく何か別の目的でやってきたと考えた方がよい」

「つまり、たまたまってこと?」

「偶然にしては不自然ではあるが、ガイウス誘拐をきっかけとするには早すぎる、ということだ」


 エマはそう言うとジャックを一瞥し、それから出口に向かって歩き始めた。ジャックも立ち上がりそれに従って歩き出す。


「ニト殿達は予定通り作戦を進めてくれたまえ。私が包囲している軍の方を退ける」

「二人だけで?!無理だろう!」

「問題ない。それに、彼らがなぜやってきたのか。それを確認しておきたい」

「……分かったわ。任せる」

「本当ですか?!」


 エマの後ろ姿を眺めながら、私はその場の皆を見回した。


「どうせ軍隊に適うほどの戦力はあたし達にはない。それならとにかく作戦通り、あたし達はガイウスのしてきたことを白日の下にさらすことに集中しましょう」

「……」

「もしも、あたし達が逆賊として討たれることになったとしても、ガイウスはどうしたって責任を取らざるを得なくなる。それってあたし達の勝利と同義じゃない?」

「そうですね」


 皆、頷いてくれた。

*****

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