5-3 グリーンリリーの過去
少し離れたところから様子を伺っていた。
レオナルドはスカーレットをボロ小屋に押し込めると、早速ポーションの作成を急がせたようだった。物言いはジョシュアよりマシだが結局のところスカーレットに対する扱い方は変わらない。
……せっかくログハウスの中で準備をしておいたのだが、無駄になった。相変わらずせっかちな。
「やれやれ」
小屋の窓から覗き込むと、先程の要領でスカーレットが準備を進めているところであった。
改めて材料を揃え、煎じて、それから魔方陣を用意した。それからそこに魔力を注ぎ込めば、オッドアイ化のポーションが完成した。
「………それが、よし。よこしてくれ」
なかば奪い取るようにしてレオナルドがポーションを手に取ると、暫く眺めていた。
……もう一人来る。誰だ?……チャルレスか。
妙な動きだった。小屋に近寄ると周りを見回し、まるで警戒するような仕草で歩き回っている。
「何をしておるんじゃ……?」
この姿も声も隠されていて、彼らはここに私がいることに気付いていない。
窓の側にいる私の目の前を通って、チャルレスはその窓から様子をちらりと覗き込んだ。それから、家の裏手に回り込んでいく。
その様子をレオナルドもちらりと見て、それから――
「スカーレット、ありがとう」
そう言うやいなや、レオナルドは足早に小屋から出ていった。
「え?」
呆然とするスカーレットは小屋に残され。そこに、すぐさまチャルレスが入れ替わるように入ってきた。
と、気付いた時にはチャルレスが、いつの間にか手にしていたこん棒のようなもので、スカーレットの頭を殴りつけていた。
「な?!」
倒されたスカーレットは床に突っ伏していた。
倒れた時、ごすっという鈍い音が聞こえた。
頭に血が昇ってきて、それから次の瞬間には部屋の中、チャルレスの首を後ろから掴みかけ……すんでのところで止めた。
「……くそ……」
力業は使えない。
ここはボスエリアではない。さらに、この男もモンスターを殺したことはないようだ。
例の魔法薬のせいで……単なる力だけなら、私よりその辺のネズミの方が強いぐらいだ。
真正面からでは敵わない。
何か錬金術の薬なら……。
そう思った時、スカーレットが動いた。
「うぁ……」
「……意外と丈夫じゃないか、スカーレット?」
「な、んで……?」
気付かれないように、昏倒薬を調合するための材料を目で探した。
「なんでだと?お前のせいで俺達家族の金策が数年遅れたんだ。このくらい許されるさ、なあ?」
「………」
「……最近、状況が変わったんだ。お前が生きていると邪魔になったんだよ」
一つ、二つ……材料を静かに揃えた。それから調合を始める。
もどかしいがしかたない。魔法攻撃も今の私では期待薄だ。
「まあ、知る必要はないから安心しろ」
チャルレスがこん棒を振り上げた!
とっさに壁にガラス瓶を投げつけた。
バリン!
「な?なんだ?!」
急げ。早く……よし。
「勝手に落ちた?」
砕けたガラス、そこに近づこうとスカーレットからチャルレスが離れた。それを見て、作り出した昏倒薬を勢いよくチャルレスに投げつける。
「な、なん…………」
ぐらりと足元が覚束なくなり、ばたりと倒れこんで動かなくなった。
「……くそ。スカー!大丈夫か?!」
抱き上げ、頭をさすり回復魔法をかける。
攻撃は制限されていてもこれは使えて良かった。
「う……リリー?私……」
「突然チャルレスがお主を襲ったのじゃ」
そっとスカーレットは奴を覗いた。昏倒薬で気絶していてピクリとも動かなかった。
「なんで、どうしてチャルレスが……」
「分からぬ。が、何か理由はありそうだったがのう」
「ううう……」
ポロポロと泣き始めた彼女の頭を撫でながら、暫く。それから、二人で小屋をあとにした。昏倒したチャルレスはそのまま。
「……スカー、街に下りて通報するほうがよかろう」
理由が分からないまま、義理とは言え兄に命を奪われかけた。その衝撃はいかほどか、想像も出来ない。
スカーレットの涙は止まらなかった。その背中を支え、街に向けて二人で歩き始めた。
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