表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の叡智なコレクション  作者: 永頼水ロキ
第一章 賢者の妙薬
12/85

5-3 グリーンリリーの過去

 少し離れたところから様子を伺っていた。

 レオナルドはスカーレットをボロ小屋に押し込めると、早速ポーションの作成を急がせたようだった。物言いはジョシュアよりマシだが結局のところスカーレットに対する扱い方は変わらない。


 ……せっかくログハウスの中で準備をしておいたのだが、無駄になった。相変わらずせっかちな。


「やれやれ」


 小屋の窓から覗き込むと、先程の要領でスカーレットが準備を進めているところであった。

 改めて材料を揃え、煎じて、それから魔方陣を用意した。それからそこに魔力を注ぎ込めば、オッドアイ化のポーションが完成した。


「………それが、よし。よこしてくれ」


 なかば奪い取るようにしてレオナルドがポーションを手に取ると、暫く眺めていた。


 ……もう一人来る。誰だ?……チャルレスか。


 妙な動きだった。小屋に近寄ると周りを見回し、まるで警戒するような仕草で歩き回っている。


「何をしておるんじゃ……?」


 この姿も声も隠されていて、彼らはここに私がいることに気付いていない。

 窓の側にいる私の目の前を通って、チャルレスはその窓から様子をちらりと覗き込んだ。それから、家の裏手に回り込んでいく。

 その様子をレオナルドもちらりと見て、それから――


「スカーレット、ありがとう」


 そう言うやいなや、レオナルドは足早に小屋から出ていった。


「え?」


 呆然とするスカーレットは小屋に残され。そこに、すぐさまチャルレスが入れ替わるように入ってきた。


 と、気付いた時にはチャルレスが、いつの間にか手にしていたこん棒のようなもので、スカーレットの頭を殴りつけていた。


「な?!」


 倒されたスカーレットは床に突っ伏していた。

 倒れた時、ごすっという鈍い音が聞こえた。


 頭に血が昇ってきて、それから次の瞬間には部屋の中、チャルレスの首を後ろから掴みかけ……すんでのところで止めた。


「……くそ……」


 力業は使えない。

 ここはボスエリアではない。さらに、この男もモンスターを殺したことはないようだ。

 例の魔法薬のせいで……単なる力だけなら、私よりその辺のネズミの方が強いぐらいだ。


 真正面からでは敵わない。


 何か錬金術の薬なら……。

 そう思った時、スカーレットが動いた。


「うぁ……」

「……意外と丈夫じゃないか、スカーレット?」

「な、んで……?」


 気付かれないように、昏倒薬を調合するための材料を目で探した。


「なんでだと?お前のせいで俺達家族の金策が数年遅れたんだ。このくらい許されるさ、なあ?」

「………」

「……最近、状況が変わったんだ。お前が生きていると邪魔になったんだよ」


 一つ、二つ……材料を静かに揃えた。それから調合を始める。

 もどかしいがしかたない。魔法攻撃も今の私では期待薄だ。


「まあ、知る必要はないから安心しろ」


 チャルレスがこん棒を振り上げた!

 とっさに壁にガラス瓶を投げつけた。


 バリン!


「な?なんだ?!」


 急げ。早く……よし。


「勝手に落ちた?」


 砕けたガラス、そこに近づこうとスカーレットからチャルレスが離れた。それを見て、作り出した昏倒薬を勢いよくチャルレスに投げつける。


「な、なん…………」


 ぐらりと足元が覚束なくなり、ばたりと倒れこんで動かなくなった。


「……くそ。スカー!大丈夫か?!」


 抱き上げ、頭をさすり回復魔法をかける。

 攻撃は制限されていてもこれは使えて良かった。


「う……リリー?私……」

「突然チャルレスがお主を襲ったのじゃ」


 そっとスカーレットは奴を覗いた。昏倒薬で気絶していてピクリとも動かなかった。


「なんで、どうしてチャルレスが……」

「分からぬ。が、何か理由はありそうだったがのう」

「ううう……」


 ポロポロと泣き始めた彼女の頭を撫でながら、暫く。それから、二人で小屋をあとにした。昏倒したチャルレスはそのまま。


「……スカー、街に下りて通報するほうがよかろう」


 理由が分からないまま、義理とは言え兄に命を奪われかけた。その衝撃はいかほどか、想像も出来ない。


 スカーレットの涙は止まらなかった。その背中を支え、街に向けて二人で歩き始めた。

*****

ご覧いただきありがとうございました。

もしもよろしければお気に入り登録をお願いします。やる気になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ