第97話 ミディアムを訪れて
タタラ達はルルに連れられて死後の都市ミディアムの門前に来た。白塗りにされた都市を囲んだ壁は異様な程に均一で、少しの色むらも凹凸もなく、薄暗い森林の中で突如として人工物が姿を現す景観となっていた。
幽世の民の亡骸は森林の外の水中に沈んでいるにも関わらず、ミディアムはさらに濃度の濃い末那で満たされていることにタタラは不可解に感じた。
都市の門をくぐると、様々な霊や念が不気味に渦巻いていた。末那の扱いに長けていない者は、呪われ、祟られる可能性があることにタタラは身震いした。
「ルルさん、ここに住んでいて何ともないのですか?」
「何ともと言われましても、ここで産まれ、育ちましたから。」
「霊がそこら中で蠢いていますよ。家の中にいて、おかしな出来事が起きませんか?勝手に物が落ちたり、燃料に火が灯ったり。」
「そんなこと勝手に起きるわけありませんよ。寝てる時に身体が宙を浮くことはありますが。怖いこと言わないで下さい。」
「そそそそ、そ、そうですね。」
タタラは茶々丸と真珠丸の背中を撫でた。
「大丈夫かい?しんどくない?」
「にゃあああん。」
「きいいぃ。」
「これから、あなた方を平編者の元へとお連れします。平編者とは11人制議会の参加資格を有する議員のことです。ミディアムの方針はこの平編者の多数決によって決められています。」
ミディアムは中央に冥府殿と呼ばれる政務用の建物があり、都市はそこから放射状に広がる構造で建築物が配置されていた。
ミディアムの中は、湿原よりもさらに濃い末那で満たされているため、タタラはあまりに多くの霊の存在を知覚してしまうことで、情報過多となり、他者の言葉を上手く理解出来なかったり、思考がまとまらなくなったりして、疲労が蓄積していった。
幽世の民は通りを歩く茶々丸と真珠丸をじっと見て、ひそひそと話した。茶々丸は2本の尾の先に、常に火を灯し、真珠丸はタタラの肩に乗って薄い霧を周囲に発出させた。
都市の中を歩いている時、タタラは白装束を纏った者達を目にした。その者達は幽世の民ではなく、体格が良いものや魔法が得意そうな者がいて、見るからに戦士としての風格を醸し出していた。
「あの方々は外から来たみたいですね。」
「はい。スメラギ国の者達です。」
「スメラギ?まさか、ダークスターを討伐しに来ているのですか?」
「はい。昔、かの国でもダークスターが暴れたようですね。ダークスターを屠るなら、この地はうってつけです。必ず姿を見せると分かっているのですから。」
「スメラギ国には勝算があるのですか?」
「かの者達はそのように申しております。4年程前にも挑戦しており、その時はたった1人を除いて全滅した挙げ句、中途半端にダークスターを傷つけ、怒らせてしまい、畑と都市の一部を爆撃されてしまいました。あの時は本当に恐ろしかった。空からの攻撃により成す術なく、ヒトも建物も、多くが木っ端微塵となりました。また、それ以前の戦闘において、ダークスターが本気で私達を相手にしていなかったことも明らかとなりました。奴との力の差がこんなにも大きかったのかと痛感させられました。絶望。それが奴のもたらす物です。」




