第96話 分福丸の狐とカボチャに関する考察
分福丸は枯れたカボチャの前でごろんと仰向けに寝転がり、雲を眺めた。昔はこうして一日中ダラダラしていたのを思い出した。学習意欲が湧いてからというもの、この態勢で様々なことを考察するようになった。
九尾の狐はカボチャ畑に案内した。区画の半面はカボチャが良く育ち、もう半面のカボチャはほとんど枯れていた。それぞれの面に植えられているカボチャは品種が異なるようであった。九尾の狐は何を訴えたかったのか。
「びいぃ。」
分福丸は、九尾の狐はカボチャが好きで、枯れないようにしたい、そう思っていると結論付けた。
分福丸は、カボチャが好きだなんて、変な狐、と思った。いや、もしかすると、狐が食べたくなる程、美味しいのかもしれない。
そう思った分福丸は、ほとんど枯死している方の品種で枯れずに残ったカボチャの前に行った。そのカボチャの実は分福丸よりも大きく、鮮やかな濃い橙色をしていて、芳醇な香りを放っていた。
うっとりとするような匂いに負けて、分福丸は実を齧ってみた。分厚い皮の部分を捨てて、柔らかな実の部分を食べた。
頬がとろけて落っこちたような感覚と、甘くて濃厚な味わいに意識が飛びそうな感覚に襲われた。それは分福丸の味覚をとろりと刺激した。電気信号やホルモンの分泌が活発になり、脳内が旨味を表現するのにありとあらゆる反応で満たされた。
分福丸はカボチャの実に頭を突っ込んで、貪った。
暫くして、農作業をしていた幽世の民が異変に気付いた。音のする方を確認すると、枯れずに残った貴重なカボチャの実から狸の胴体が生えている光景が目に飛び込んできた。
幽世の民は叫び声を上げると、ようやく見つかったことを認識した分福丸がカボチャの実から顔を出した。幽世の民は怒号を上げ、鍬で分福丸を襲った。
驚いた分福丸は結界術で身を守った後、お地蔵様の幻で自身を覆い、動きを止めた。狸が突然お地蔵様の姿となったことに、訝しんだ幽世の民の男は、鍬の柄でお地蔵様の胴体を軽く突付いてみた。コツコツと硬い感触だった。
彼は鍬を振りかぶった。我慢出来なくなった分福丸は幻を解き、何十もの分身を出現させ、逃走した。
幽世の民の目は血走り、都市へと戻って、この大事件を仲間に報告した。




