第95話 九尾の狐が差し示す物
死後の都市の周囲に広がる森林地帯の一部は、畑として開拓されていた。分福丸は農作業に精を出す幽世の民に見つからないようにコソコソと動き、様子を観察しながら、畑の脇を素早く移動した。
畑には主に大豆が栽培されていたが、ある広い一画では、全てカボチャで占められていた。ところが、その区画の半面に植えられたカボチャのほとんどが枯死していた。
分福丸は実がなる前のカボチャの葉や茎が枯れた姿を残念に思いながら、辺りを見回した。九尾の狐は何を伝えたかったのだろうと、分福丸は考えた。
シヴァと分福丸はダラストゥク村から上空を移動してエバユース湿原を渡り、森林地帯が見えると、その手前に小屋を発見したため、降り立った。監視小屋から3名の幽世の民が姿を現した。シヴァは自分達がここへやってきた目的を明確に述べた。しかし、肉か戦士かの選択を迫られたため、口論となり、戦闘に発展し、その者達を倒して気絶させた。
そして、都市に向けて森林の中を歩いていると、不思議な狐と出くわした。その狐には九つの尾があり、まるで、通せんぼをするかのようにシヴァと分福丸に立ちはだかった。
シヴァは九尾の狐の目を見て、知性があることを感じとり、再び、この地へと赴いた趣旨を述べた。それを聴いた九尾の狐は、コン、と鳴き、森林の道なき道を歩き始めた。
シヴァは九尾の狐についてこいと言われたような気がして、分福丸と共に九尾の狐の跡を追った。
やがて、遠くの位置に死後の都市が見えた。それは森林の中に突如として現れるかのような不気味さを醸し出していた。都市の周囲はぐるりと壁で囲まれており、壁の上部に突き出た建物を見ると、内部では木と煉瓦を組み合わせた建物が密着して建てられているようであった。
九尾の狐は遠くに見える都市を一旦通りすぎ、幽世の民に見つからないように、遠回りに迂回して都市に近付き、やがて、都市の壁の外側にある広い畑に到達した。
九尾の狐はカボチャ畑でちょこんと腰を下ろした。シヴァと分福丸は視線を交わした。九尾の狐は一体どのような目的で自分達をここに連れてきたのか、皆目検討がつかなかった。
訳が分からず、枯れたカボチャをじっと見ていると、幽世の民に見つかり、大声を出されて仲間を呼ばれてしまった。
シヴァはとにかく、話がしたかった。幽世の民が子どもを生け贄にしていないのであれば、そもそもこの地に用はないのだ。戦闘を続けても答えに至らないと考えたシヴァは、まずは大人しく捕まることにした。ただ、都市へと連行されたシヴァは、九尾の狐の意味ありげな行動が引っかかり、分福丸にこそっと調査を依頼した。
そこで、分福丸は何十もの分身を造りだし、幽世の民を混乱させ、逃げ出していたのだった。




