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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第9話 魂の器

 巨大な骨格が追い付いてきて、タタラを()り上げた。しかし、タタラは結界術を発動し、それを防いだ。結界術の硬さに負けて、足の甲の骨が飛び散ったが、餓者髑髏(がしゃどくろ)(かま)わずに残った足の骨でタタラを踏み潰そうと(こころ)み続けた。その度に、爆音が辺りに響いた。


 一方で、タタラが鋸鎌(のこぎりがま)で地面を叩き続けると、土がはけて骨の板が顔を出した。しかし、その骨板(こつばん)は、タタラがどれだけ叩いても割れることはなかった。


「無駄だ。最硬度の骨だ。どこの馬の骨とも分からん野郎に破壊できる代物(しろもの)じゃねぇ。」


 巨大な骨格は、今度は(こぶし)でタタラを何度も何度も殴った。骨の破片が散っていったが、餓者髑髏は気にせずに、骨格を操り、殴打(おうだ)を続けた。


(すご)い衝撃。僕の結界術 羅生門(らしょうもん)でも響いてくる。末那(まな)の消耗も甚大(じんだい)だ。でも、僕には奥の手があるんだよ。」


 タタラはカマキリの腕をヒトの腕に戻し、合掌(がっしょう)した。


生体術(せいたいじゅつ) 破骨(はこつ)。」


 タタラは(てのひら)に破骨細胞を生成し、末那を()って細胞を活性化させ、地面に埋まっている骨板(こつばん)に両手を当てた。その瞬間、餓者髑髏に悪寒(おかん)が走った。それはまるで、手の届かない背中に虫が()っているかのような感覚だった。


「貴様、何をしている?」


「君の骨を溶かしているんだよ。肉体を持たない君は、骨を作る骨芽細胞(こつがさいぼう)を有していないから対抗できない。他の骨で補修はできるだろうけど、溶かした箇所に僕の結界を(すべ)り込ませているからそれもできない。」


 (あせ)った餓者髑髏は腕の骨を補強して大きくし、タタラを(にぎ)り潰そうとした。しかし、効果はなかった。


(馬鹿な。敗ける?この私が?)


「畜生ぁ。」


 巨大な髑髏が口を開け、タタラを噛んだ。ぎりぎりという音が鳴り響いた。歯がばきっと折れ、(あご)の骨がぐしゃりと崩れ落ちた。その間、タタラの手は、じわじわと骨板に沈み込んでいった。


「だああぁ、くそっ。破れねぇ。何なんだ、その結界。」


 もはや、立ち尽くさんばかりの餓者髑髏は、一転して冷静になり、タタラのエネルギーを探ることにした。地獄嶽(じごくだけ)に来た時と比べて、大きく消耗していることが分かった。攻撃を続けると、いずれ結界を破ることが出来ると推察(すいさつ)したが、その前に、地面の骨板を溶かされてしまう。この状況を打破するためには一撃必殺しかないと判断した。


 餓者髑髏は静かな声で言った。


「次で最後だ。これで駄目なら、貴様の勝ちでいい。」


 餓者髑髏は巨大な骨格を分解し、めきめきと音を立てながら寸分の隙間なく骨を凝集(ぎょうしゅう)させて、巨大な薙刀(なぎなた)を造り上げた。それは、骨の山があった箇所まで移動して距離をとり、()の先端をタタラに向けて、(すさ)まじい速度で飛んだ。そして、タタラの手前で薙刀が半回転することで、さらに加速し、その刃がタタラを襲った。


 その時、茶々丸が火炎術 迦具矢(かぐや)を薙刀に放った。閃光と共に、(はじ)かれた薙刀の軌道(きどう)が変わり、タタラの頭上をぐるぐると回転しながら通りすぎていった。


流石(さすが)だね、茶々丸(ちゃちゃまる)。全く、何て(すご)い子なの。」


「にゃあ。」


 タタラが分厚い骨板を溶かしていくと中に空洞があった。そこには、硬い骨板に包まれるようにして、一つの骨が鎮座(ちんざ)していた。タタラは、(てのひら)を通常の細胞に戻して、その骨を手に取った。それは、軸椎(じくつい)であった。


「この骨に、君の魂が宿っているんだね。」


 観念した餓者髑髏は残った骨をガシャガシャと動かして、何とか聞き取れる言葉の音を発した。


「こんな日が来るなんてな。まぁ、仕方ねぇ。」

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