第84話 テチス海での宴
一行は海坊主の島へと戻った。そこで、宴会が催された。海坊主の部下も集結し、島中がお祭り騒ぎとなった。タタラは、一度、目を覚ましたフェイレイにコロコが心配している状況を説明し、コロコの前に連れて行ってあげた。コロコは大きな足の先端でフェイレイの手に触れ、ずっと元気になるのを待っているという気持ちを伝えた。それから、フェイレイは再び深い眠りについた。
茶々丸はマシュが自由に宙を浮いているのを羨ましがり、マシュに、にゃあにゃあとせがんだ。マシュは魔法の霧を絨毯のように広げた。茶々丸はそこに乗り、前足を上げてにゃんと鳴いた。
マシュは霧を浮かせて、茶々丸と一緒に空へと上がった。茶々丸は満足そうに気持ちの良い海の風を全身に浴びた。それを見たツバキは、風の魔法で霧の絨毯の隣まで飛んでいき、すました表情でマシュと茶々丸と一緒に空中散歩を満喫したが、心の中は興奮の嵐だった。
タタラは美味しい魚介類でお腹を満たし、憧れのココナッツミルクをたらふく飲んだ。落ち着いたら、シヴァと分福丸を連れて来てあげようと思った。そこへ、海坊主がやって来た。
「双竜兄妹がパンゲア大陸とも貿易をしたいと言っていたが、あんたもそう考えているのか?」
「パンゲア大陸、エル大陸、それに、ヨミ大陸の他の国とも貿易をしたい。つまり、世界中とね。そのためには、平和の実現が不可欠なんだ。正確には逆なんだけどね。貿易のために平和にするわけではなくて、平和のために貿易を始めたいんだ。お互いに相手の生身のヒトと成りを知れば、感情的な争いは軽減されると思ってる。それにさ、色んな国の美味しい物を食べることが出来るのって、幸せなことじゃない?」
「まぁな。」
「僕達に協力して欲しいんだ。テチス海から海賊を排除する。海賊行為をやらざるを得ない理由があるなら、それを解決する方策も考える。」
「サーペンスの最期の言葉を聞いていたか?」
「彼は、後任が派遣されてくる、と言っていたね。」
「そうだ。その意味が分かるか?」
タタラはこくんと頷いた。
「彼は皇家の家臣だった。」
「知っていたか。その通りだ。連中は世界と貿易をしたいんじゃない。支配したいんだ。海賊ってのは、元来、自由なもんだ。海蛇党の規模がそんなに大きくならなかったのは支配を拒む海賊が多かったからだ。讐怨亭がその典型だな。だが、その讐怨亭は瓦解した。つまり、俺が何を言いていのかというと、下手をすりゃ、テチス海の海賊がスメラギ一色で染まっちまう可能性もあるってことだ。それを肝に銘じておきな。」
「勉強になります。」
「それとな、あれだ、リョウコのことなんだが」
言いにくそうにしている海坊主に、タタラが掌を向けて制止した。
「リョウコのことは言わなくていいよ。彼女は君の部下じゃなくて、取り引きをしているんでしょう?」
「お見通しってわけか。」
そこへ、マシュと茶々丸とツバキが空から戻ってきた。タタラはマシュと茶々丸を両脇に抱えた。
「テチス海の情勢はこれからも注視する必要がある。君の協力が不可欠だよ。」
タタラとマシュと茶々丸は海坊主をじっと見た。
「にゃあ。」
「きぃぃ。」
「分かったって。やってやるよ。もう、マシュをだしにすんじゃねぇぞ。」
ツバキはどこかで見たことのある光景だなと思った。




