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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第8話 地獄嶽の攻防

 タタラは思わず低い声を()らした。


「あっ。」


 飛び散った火花が何本かの樹木を焼き、次第に辺りは煌々(こうこう)となっていった。


「許さねぇ、この猫。」


 激情した餓者髑髏(がしゃどくろ)は辺りに散った何本もの肋骨(ろっこつ)を宙に浮かせ、茶々丸(ちゃちゃまる)を攻撃した。


「よせっ。やめろ。」


 茶々丸は駆け出し、飛んだり()ねたりして肋骨を見事に(かわ)し続けたが、(ごう)を煮やした餓者髑髏はさらに肋骨を増やし、茶々丸を取り囲んで、それらを一度に突き刺そうと(こころ)みた。茶々丸は結界術を発動し、(なん)(のが)れた。


「やめろと言っているだろう。こんな(あい)らしいにゃんこに、そんな硬く(とが)ったものを一斉(いっせい)にぶつけようとするなんて、ひどい。」


「やかましいわ。そんなとんでもねぇ化け猫ほっとけるか。貴様こそ、あっ、やっちまったな、みたいな雰囲気を(かも)し出してたじゃねぇか。それだけのことを猫がしでかしたからだろうが。」


「何さ。ちょっと骨が()げ付いた位で。」


「何が、()()()()()()()()()()()()だ。骨の山が半分以上もぶっ飛んでんじゃねえか。何だお前ら。」


「とにかく、茶々丸への攻撃をやめないと、退治するよ。」


 餓者髑髏は怒号(どごう)を上げた。


上等(じょうとう)だこらぁ。」


 激昂(げきこう)した餓者髑髏は茶々丸を攻撃している肋骨を含め、数十箇所で骨を一塊(ひとかたまり)に集合させた。それらの骨はガシャガシャと音を立てたながら、次第に人間や天使、獣や鳥の骨格を形成し、タタラと茶々丸に襲いかかった。


 タタラは全身に末那(まな)()り、腕を通して槍に末那を行き渡らせて頑強にし、向かってくる骸骨を砕いていった。破損させた骨はすぐに他の骨で補修され、再び襲いかかってきたが、タタラの槍術は骨の戦士達を圧倒した。茶々丸は結界術 羅生門(らしょうもん)と火炎術 迦具矢(かぐや)を上手に両立させ、次々に敵を破砕していった。


 タタラが無数の骨格と戦闘している後方で、茶々丸が吹き飛ばした骨の山の骨片(こつへん)がびくびくと(うごめ)いて集合し、タタラの身長の倍はある高さの骨格を形成した。その骨の戦士は背骨がやや湾曲(わんきょく)し、山羊(やぎ)に似た頭蓋骨で、太くて長い角が生えていた。さらに、骨で造られた薙刀(なぎなた)を手に持っており、後方から一足飛(いっそくと)びでタタラの間合いに入り、脳天を目掛けて攻撃してきた。


 タタラは咄嗟(とっさ)に槍で防御したが、その骸骨の戦士が振るう薙刀は驚くほど高度で、他の骨の戦士との力量が桁違(けたちが)いであった。タタラの槍術をもってしても、その骸骨の戦士を打ち破ることは出来なかったが、両者の槍と薙刀の技は拮抗(きっこう)しており、勝負がつかなかった。


 どれだけ時間をかけて多勢で襲っても、強力な戦士を造り上げても、タタラと茶々丸を倒せないと判断した餓者髑髏は、全ての戦士達の骨を1箇所に集めた。骨の集合体は次第に髑髏(どくろ)と成し、脊柱(せきちゅう)、両腕、肋骨、骨盤、両足となり、周囲の木々よりも遥かに背の高い巨大な骨格が完成した。


 それは巨体にも関わらず、異様な速さで動き、タタラに襲いかかった。タタラは槍で応戦したが、強靭(きょうじん)な骨の(こぶし)にボキンッと折られてしまった。さらに、餓者髑髏は何度もタタラを踏みつけようとし、手で(つか)もうとした。タタラはひらりと身を(ひるがえ)して(かわ)した。餓者髑髏は樹木をなぎ倒しながら暴れ回った。


「そろそろ頃合いだね。骨とやりあっても意味がないこと位、分かっているんだよ。」


 タタラは骨格の股の間をくぐり抜け、骨の山があった場所を通り過ぎ、全力で走った。50歩程進んだ先に泉があり、その手前でタタラは奥義 受肉改変(じゅにくかいへん)により両腕をカマキリの前足に変化させた。鋸鎌(のこぎりがま)の組織に鉄分を凝集(ぎょうしゅう)させて頑丈(がんじょう)にし、力強く地面を叩いた。ガァンと(にぶ)い音が響いた。


「貴様、なんでここだと。」


「上手に隠していたようだけど、ここから(わずか)かに君の末那が発出されていたからね。僕の末那識(まなしき)(すご)いんだから。つまり、君の魂はこの下にあるよね。」


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