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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第79話 炎と水の激突

 サーペンスは残った水妖(すいよう)海蛇(うみへび)を合体させ、先端を(するど)くし、海坊主(うみぼうず)へと放った。それは意思を持った()の長い矢のように風を切って飛んだ。


海坊主(うみぼうず)咄嗟(とっさ)時雨(しぐれ)(かば)って、彼女に(おお)(かぶ)さった。全てを(つらぬ)かんと発射された水妖(すいよう)は、突如、姿を現したタタラの結界術 羅生門(らしょうもん)によって(はじ)かれた。


タタラは周囲の末那(まな)を深く知覚した。意識を喪失(そうしつ)したリョウコをちらりと見た後、マシュの不在に気がついた。


「マシュは?」


海坊主(うみぼうず)はサーペンスを指差して、力無く答えた。


「あいつが、ピットの宝箱をディープホールへと投げ捨てやがったんだ。マシュはそれを追って」


海坊主(うみぼうず)は言葉を()まらせた。タタラの眼光は(するど)さを増し、サーペンスを(にら)みつけ、ギリギリと歯を()みしめた。


「僕の名はタタラ・マドリーナ。そして、お前は、僕の敵だ。」


「私の目的はテチス海を平定することです。争いの無い世界を私と共に築きましょう。あなた方は、ただ、我らに支配されるだけで良いのです。」


 タタラは秘術 飛縁魔(ひのえんま)を発動し、猛烈な勢いで火炎をサーペンスに放射した。それに対し、サーペンスは水妖(すいよう)海蛇(うみへび)をタタラに向けて放った。2つの魔法はぶつかり合い、拮抗(きっこう)した。サーペンスは、さらに、頭上から水妖(すいよう)海蛇(うみへび)を出現させた。天へ登った水妖(すいよう)海蛇(うみへび)は一転してタタラに向かって急降下した。タタラは結界術を展開し、直撃を阻止した。


 サーペンスがふと気付くと、いつの間にか彼の真横に、頭部が山羊(やぎ)頭蓋骨(とうがいこつ)で、背の高い2本足の骨の戦士が(たたず)んでいた。そして、戦士の数は2体、3体と増えていき、船の甲板(かんぱん)は骨の戦士で埋め尽くされた。


サーペンスは狼狽(ろうばい)したが、あまりの非現実的な事態に、自分を落ち着かせた。


「違う。これは、幻術だ。」


1体の骨の戦士が、手に持った薙刀(なぎなた)でサーペンスに斬りかかった。サーペンスはタタラに向けて放っていた水妖(すいよう)()き、タタラの火炎術と薙刀(なぎなた)の一撃を同時に(かわ)した。


「消えよ、幻。」


サーペンスは強大な魔力を()って、全身に(まと)わせた海水を猛烈な勢いで周囲に放った。それは、サーペンスを起点に、衝撃波のような圧力となって、タタラが出現させた秘術 隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)による幻術をかき消した。


しかし、タタラはその直後に新たな幻術を発動し、先程と同じ骨の戦士を(またた)く間に創り出した。それによって、大いに困惑(こんわく)したサーペンスに、タタラは全ての骨の戦士にサーペンスを襲わせた。


(あわ)てたサーペンスは杖の刀身で応戦したが、どれだけ切っても幻は両断できなかった。そこへタタラが秘術 餓者髑髏(がしゃどくろ)により、幻術の中に紛れ込ませていた本物の骨の戦士の薙刀(なぎなた)に、サーペンスは肩から脇腹(わきばら)にかけて(なな)めに斬られた。


「ぐっ。ば、馬鹿な。幻術ではないのか?」


なおも襲いかかってくる骨の戦士に刀身を吹き飛ばされ、横一線に胸を斬られた。サーペンスは残りの力を全て振り(しぼ)り、上半身の筋肉を爆発的に増強させ、骨の戦士を()(かか)え、さば折りにした。そこへ、サーペンスが手離した刀身を持った海坊主(うみぼうず)が突進し、サーペンスの腹を(つらぬ)いた。


「お前は救えねぇ。これで終わりだ。」

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