第77話 テチス海における死闘
「フェイレイは、今、生死の境を彷徨っている。コロコにはフェイレイのそばに行ってもらったよ。」
ベルケとノイド、それにマグナもタタラの発言に驚いた。
「頭は生きてんのか?」
「うん。危ない状態だけどね。」
ベルケがタタラに懇願した。
「頼む。頭に会わせてくれ。」
「君達が海賊行為を二度としないと宣言してくれるなら考えるよ。」
双子は顔を見合わせ、言葉を詰まらせた。赤の女王が前に出て、マグナに言った。
「とにかく、君は早く宝箱を出して。」
「分かった。上着の内側に入れてる。取れよ。」
赤の女王がマグナに近づき、彼の上着に触れた瞬間、マグナは口から毒霧を吐いた。しかし、それを予期していた赤の女王は全の鳴動の斥力で、一滴残らずマグナに反射させた。
赤の女王はマグナの腹を縛っていた血液の輪を上部へと移動させ、彼の脇の下からさらに上へと移し、マグナの両腕を上へと上げさせ、首回りの箇所で強く縛った。そして、マグナの上着の内側を探り、黄金の宝箱を取り出した。
「おお。金ピカ。凄い。」
赤の女王は海坊主の船の縁にいたマシュに向かって声を上げた。
「やったよ。取り返したよ。」
赤の女王がタタラのいる所まで歩いて行った時、船に何かがぶつかったような大きな衝撃が起こり、膝をついた。船の甲板にいた者達がヨロヨロと立ち上がった瞬間、海から2体の巨大な海蛇、レビュラスが姿を現し、タタラとリョウコを襲った。
タタラは結界術を発動したが、結界ごと噛み付かれ、そのまま海中へと引きずり込まれた。赤の女王は咄嗟にリョウコを庇ってレビュラスに喰われたが、海中へと引きずり込まれる前に宝箱を離した。押されて転倒したリョウコが声を漏らした。
「どうしよう。あのヒト、また海蛇に食べられた。」
さらに1体のレビュラスが現れ、讐怨亭の大型船の甲板に頭部を乗せた。大きな口が開くと中から海蛇党の党首、サーペンスが姿を現した。
「讐怨亭に海坊主、それに我らが宿敵。長年、邪魔だったあなた方をまとめて始末できる良い機会です。」
サーペンスは仕込み杖から刀身を抜き、リョウコに襲いかかった。それと同時に、サーペンスを口内に入れていたレビュラスが隣の船の甲板にいた海坊主を襲った。
一方、赤の女王の血液から解放されていたマグナは思い通りの展開にならない事態に怒りを露にし、カジキの形をした水妖を周囲に乱発した。讐怨亭の他の乗組員達は混乱の続く状況の中、海へと飛び込んで逃げようにもディープホールがすぐそばにあるためそれも叶わず、船上で右往左往していた。その中には、マグナの水妖に貫かれた者もいた。
「あなたはもう退場しなさい。」
サーペンスは横一線に刃を振るって、リョウコもろともマグナを範囲内に収めた強力な水圧の水妖の斬撃を放った。リョウコは伏せてその一撃を躱し、マグナは両腕に溜めた水妖で防御したが、ベルケとノイドを含め、讐怨亭の多くの乗組員は船外へと吹き飛ばされていった。マグナは腰に差していた三日月刀でサーペンスに切りかかった。
「退場するのはお前だよ。テチス海に何の思い入れもねぇお前は、どの海賊共よりタチが悪い。フェイレイが嫌っていたぜ。」
マグナとサーペンスが刃を交えている隙を付き、リョウコが電気の魔法、電界を2人に放った。それに気付いたサーペンスは後退して電撃を躱したがマグナは電気を浴びた衝撃で身体が硬直した。
リョウコが素早くマグナの懐に入り、手甲型の短剣で彼の頸動脈を切った。マグナは手で首を押さえ、尻もちをついた。
「どいつもこいつも嫌になる。海坊主、船幽霊、アカガミ、スメラギ、それに陸を牛耳るあの天使。」
マグナの視界がぼやけてきた。
「頭。やっぱり、あんた無しじゃ俺達は駄目だった。」
マグナは倒れ、息絶えた。




