第69話 怒りと悲しみのコロコ
コロコは目を見開き、銛が飛んできた方向を見た。
「頭と言えど、裏切りは許されねぇぜ。」
マグナは続けて言った。
「これからは俺が讐怨亭の頭だ。」
コロコは腕でマグナを叩こうとしたが、水の魔法、水妖を発動したマグナは人工的に造り出した波に乗って回避し、船幽霊の島へと戻って行った。
フェイレイは海に沈み、腹から血が滲み出した。コロコは彼を持ち上げた。複数の腕で海面を激しく叩き、怒りと悲しみを海にぶつけた。そして、ぼろぼろ、ぼろぼろと涙をこぼした。
タタラはコロコに憑依した後、フェイレイにも憑依しており、その時に背中側から銛で刺された。その時のフェイレイの気持ちがタタラにも伝わってきた。驚きの感情の後は、死にゆく恐怖や刺された怒りは微塵もなかった。ただひたすら、コロコへの感謝の気持ちが伝わってきた。
タタラはコロコの腕に縛り付けていた肉体に戻り、フェイレイの手当てを始めた。コロコはタタラが動き出したことに驚いた。タタラはコロコに触れて、フェイレイを助ける気持ちを伝えた。そして、タタラはフェイレイを抱き抱えて、茶々丸達の元へと向かった。
マグナは島に戻り、船幽霊撃退組と合流して、フェイレイがタタラ王と相討ちになり、死んだと皆に伝えた。それを聞いた讐怨亭の戦闘員は驚愕し、落胆し、当惑した。マグナが双子のベルケとノイドに状況の説明を求めた。
「船幽霊を仕留めた手応えはあった。だが、どれだけ捜索しても本体が見つからねぇ。そもそも、実態がある奴なのかどうかも分からねぇけどな。ただ、奴に水妖を直撃させた時に、黄金の宝箱を落としやがった。」
ノイドがマグナに宝箱を見せた。それは、片手で掴める程の小さな物だったが、黄金で出来ていた。
宝箱には分厚い金の錠前が付いており、開封することは出来なかった。
「開かねぇのか。でも、黄金だ。これだから海賊はやめられねぇ。」
フェイレイの死にひどく動揺したベルケが口を開いた。
「あの頭が殺られるなんて。クソッ。それで、頭がいなくなって、これからどうする?」
「船幽霊は消えた。俺達の船もかなり沈められちまった。それに、この島は落ち着かねぇ。一旦、拠点に戻ろうや。」
讐怨亭の者達が船に戻った時、マグナはテンマ達がいる近くに海坊主の船が着岸しているのを確認した。また、その近辺で何者かが激しい戦闘をしていた。マグナは船員から望遠鏡を奪うようにして手に取り、レンズを覗くと、死んだはずのタタラと赤の女王が戦っていた。
「あいつ。なんで生きてやがる?」
マグナはフェイレイがタタラの死を確認している様子を遠目で見ていた。
ベルケが隣に来てマグナに質問した。
「誰と誰が殺りあってんだ?」
「マドリーナ王国の国王と赤の女王だ。」
「あっ?国王は頭と相討ちになったんじゃねぇのかよ?」
「そうだと思ったがな。生きていたようだ。」
「あいつ、絶対に許さねぇ。落とし前をつけてやる。」
「よせ。奴は強い。船幽霊を消したように、計画を練って、準備を整えて事を進めなきゃ、こっちが殺られる。」
「頭が殺られたんだぞ?我慢出来るかっ。」
「だからこそ、確実に奴を仕留める方法を探るんだよ。」
「ちっ。そういや、お前、双竜兄妹は殺ったんだろうな?」
マグナは不機嫌な顔付きで、持っていた望遠鏡をベルケの胸に強く押し付けた。
「うるせぇ。」
マグナは船内に入っていった。
「なんだよ。図体がでけぇだけで、あいつ何も成果を出してねぇじゃねぇか。」
ノイドが相づちをうった。
「使えねぇ野郎だ。ベルケ、頭の敵討ちだ。計画を練ろう。」




