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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第66話 讐怨亭の頭

 タタラが飛竜の翼の骨を生やして空を移動していると、テンマ達のいる島の反対側で、讐怨亭(しゅうおんてい)が魔法を連発し、船幽霊(ふなゆうれい)を追い詰めている様子が伺えた。


余所見(よそみ)をしていると、上空にいるタタラを目掛けて、風を切る速度で(もり)が正確に飛んできた。


タタラは身を(ひるがえ)して(かわ)すと同時に(もり)()を手に取り、身体を回転させて、さらに速い速度で発射元に投げ返した。


(もり)の飛んでいく先には船の甲板(かんぱん)に立った人間の男がいた。巨体で筋肉質なマグナとは対照的に、一見するとひょろりとした体格のその男は、タタラの目に視線を合わせたまま、極めて無駄の無い動きで、(もり)をひょいと(かわ)した。タタラは彼のいる船に降り立ち、二人は(にら)み合った。


「どうやら、俺らは分かりあえねぇようだな。」


彼の声は低く、それでいて快活な話し方だった。


何故(なぜ)、初対面の僕のことが分かるの?結論付けるには、まだ早いよ。」


「いや、俺には分かる。お前と俺では目指す世界がまるで違う。」


何故(なぜ)、そう思うの?」


「直感だ。お前は、規律ある社会の中で、制限された自由を重んじるヒト特有の表情をしているからな。一方で、俺の自由に制限はない。つまり、他人の何かしらの権利を侵害する自由も、俺にはあるってことさ。別に、他人を困らせたい分けではないし、他人を搾取(さくしゅ)することが目的な分けでもない。ただ、自由なんだ。俺はな。お前は、そんな俺の自由を制限しに来たんだろう?」


「君の論理でいくと、君の自由を制限するのも、僕の自由ってことになるけど。」


男は初めてタタラから目線を()らして、海を見た。波が無限に形を変えて、太陽の光を反射し、キラキラと輝いていた。


「お前の言う通りだ。だから、俺は戦うんだ。毎日、他の海賊共や、海坊主(うみぼうず)や、船幽霊(ふなゆうれい)や、お前らのようなまともか偽善者(ぎぜんしゃ)かよく分からない連中とな。」


男は再びタタラの目を見た。


「ところで、お前はまだ俺の質問に答えていないぜ。」


「僕は君の自由を制限しに来たんじゃない。誰もが他人の権利を侵害しない選択をすれば、君も皆も自由のままだ。僕はね、そういう世界を(つく)りたいんだ。」


男は上着の内ポケットからパイプを取り出して、口に(くわ)え、魔法で火をつけた。美味(うま)そうに吸い、長い時間をかけて、白い煙を吐き出した。


「俺は、誰かに言われた通りに選択して、行動させられるのが嫌いなんだ。俺の道は俺のもんだ。」


男は後方に立っていた船員から(もり)を取った。そして、替わりにパイプを渡した。


「君が讐怨亭(しゅうおんてい)(かしら)なのかい?」


「他の者達からはそう呼ばれている。だが、俺が組織した海賊団じゃない。したいことをしていたら、他の者がついてきた。それだけだ。」


「僕は、マドリーナ王国、国王、タタラ。」


「フェイレイ。」

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