第65話 気になるあの子
カジキの尖った先端がリョウコを貫く寸前、結界術が張られ、それに衝突した水妖が大量の水飛沫となって辺りに散った。驚いたリョウコとテンマは結界を凝視した。
「にゃぁぁん。」
茶々丸が上目遣いでテンマを見た。
「茶々丸っ。」
テンマは声を張り上げた。
「えっ?なになに?この可愛いにゃんこ何なの?」
茶々丸はリョウコの目をじっと見た。そして、リョウコの膝下に自分の首の付け根をこすり付けた。
「ど、どこから来たのかな、この子。」
「この結界術を張ってくれているのが茶々丸だ。」
「えっ?嘘でしょう?」
「にゃあ、にゃあ。」
「茶々丸、タタラも来てるのか?」
「んにゃ。」
茶々丸は空を見上げた。テンマも空へと顔を上げた。上空では、ウヅキとサツキがハルピュイアと交戦していたが、タタラが加勢し、ハルピュイアを撃退していた。
マグナが茶々丸を見て怒号を上げた。
「お前、あの時の化け猫。なんなんだお前は?」
茶々丸はマグナの方をちらりと視線を向けた。そして、前足をペロペロと舐めた。マグナは茶々丸のその仕草を見て頭の血管が浮き出る程に怒り、地上にいた2人のハルピュイアに身体を持ち上げてさせて宙に浮き、茶々丸達のいる船の甲板に上がろうとした。
茶々丸はその隙だらけのマグナへ目掛けて火炎術 迦具矢を放った。
マグナは海まで吹き飛んでいった。それを見たリョウコは驚愕した。
「このにゃんこ凄すぎない?結界術を使いながら、とんでもなく強力な火の魔法も発動させて。しかも、準備中の敵を容赦なく狙い打ちした。」
「にゃあぁぁ。」
茶々丸が得意気に胸を大きく反らしていると、タタラが上空から船の周囲にいる敵を火炎術でなぎ払った。その後、タタラは甲板に降り、テンマに声をかけた。
「遅くなってごめんね。湖都から結構、距離があったからさ。ここの座標を伝えておいてくれてよかったよ。」
「タタラと茶々丸が来てくれて助かった。危ないところだったんだ。」
タタラはリョウコを見て、テンマに聞いた。
「こちらの方は?」
「海坊主の下で働いてるリョウコだ。俺達の仕事を手伝ってくれてる。リョウコ、こちらはマドリーナ王国のタタラ王だ。」
「ええっ?王様?どうもリョウコと申します。」
「タタラ・マドリーナです。」
タタラはリョウコと握手を交わした。タタラの眉がぴくりと上がった。
「海坊主の下で働いているのですか?」
「ええ。そうです。」
「タタラ、ツバキが倒れたんだ。」
テンマはこれまでの経緯を簡潔にタタラに伝えた。タタラは船内で眠っているツバキの元に行って膝をつき、熱を測るかのように、掌をツバキの額にそっと当てた。
「ふむふむ。心配なさそうだね。」
タタラは立ち上がって、テンマと茶々丸に伝えた。
「茶々丸はここにいてツバキ達の護衛をお願い。僕は、気になったあの子の所にちょっと行ってくるよ。」
「にゃあ。」
「あの子って?」
テンマがタタラに質問した。
「あの大きな蛸さんのことだよ。」
そう言って、タタラは船内を出て、飛び立っていった。




