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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第6話 僕達の名前

 2週間程で、猫はすっかり元気を取り戻した。()せ細った身体(からだ)はそれなりにがっしりとし、淡い茶色の毛並みは(つや)を帯び、お腹のくすんだ白い毛は純白となった。


 猫は身体が健康になっただけでなく、孤独から解放されて、心も晴れやかとなった。夜は安心して熟睡し、気持ちの良い気分で一日の始まりを迎えた。たたりもっけは猫に深い愛情を持つようになり、猫もまた、たたりもっけのことが大好きになった。


 しかし、たたりもっけは(さび)しい気持ちを(こら)えて、猫に別れを告げることにした。


「僕はこれから餓者髑髏(がしゃどくろ)っていう、何だかとっても怖そうなヒトに会いに行って、転居(てんきょ)をお願いしなきゃならないんだよ。とても危険だから、これでお別れだよ。」


「にゃあ、にゃあ。」


 猫は拒絶した。たたりもっけの足にしがみついて離さなかった。


「でも、危ないよ。」


「にゃあ、にゃあ。」


 猫は(かたく)なに(ゆず)らなかった。


「それじゃあ、君も訓練して、術を鍛えて、強くなるかい?」


「んにゃ。」


「それって、これから先、ずっと僕と一緒にいてくれるってことなの?」


「にゃあああぁ。にゃあ。」


「ふむ。何を言っているのか分からないけれど、そうだよってことなんだね。」


 たたりもっけは猫の魂を読み取れば、猫が何を思っているかを理解出来たが、それをしなかった。身体を得られたことに対する感謝の気持ちから、出来る限り、言葉や身振り手振りの意思疏通(いしそつう)を大切にしたかった。


「にゃん。」


 たたりもっけは別れを拒否してくれた猫のことが愛おしくてたまらなかった。ありがとう、と何度も猫に伝えた。


 こうして、たたりもっけは猫と一緒に鍛練(たんれん)をすることにした。まず初めに、たたりもっけは猫に名前を付けた。


「君には名前が無いようだから、僕が命名してあげるよ。その前に、自己紹介するね。僕は、たたりもっけのタタラ。タタラ・マドリーナ。」


 タタラは受肉してから、半年かけて考えていた自分の名前を名乗った。


「そして、今日から君は茶々丸(ちゃちゃまる)だ。」


「んんんにゃあ。」


「よろしくね、茶々丸。」


 タタラは茶々丸をぎゅっと抱きしめ、頬擦(ほおず)りした。


 タタラは奥義 憑依進化(ひょういしんか)によって茶々丸に憑依した。そして、奥義 曼荼羅(まんだら)によって、茶々丸の火炎術を自身の魂に刻印し、それを秘術 飛縁魔(ひのえんま)と呼ぶことにした。さらに、憑依した状態で、末那(まな)()り方、それによる結界術の使い方や強力な鬼火(おにび)の発動の仕方の感覚を、自身の末那を通して、茶々丸に伝授した。


  タタラは自身の肉体に戻り、茶々丸に説明した。


「いいかい、茶々丸。僕は、自分の身体がどれだけ傷を負っても、奥義 受肉改変(じゅにくかいへん)で元に戻すことができるんだ。でも、茶々丸が傷を負ったら、それを(いや)すことはできないんだよ。魂の宿った肉体に、直接、干渉(かんしょう)することは不可能だからね。だから、敵と遭遇(そうぐう)した時や、怪しい末那を知覚した時は、すぐに僕が教えた結界術を発動するんだよ。」


「にゃあ。」


「僕が考案した結界術 羅生門(らしょうもん)は末那が続く限り有効だし、外開きの門だから、内側から鬼火を外に放つこともできるからね。ただし、鬼火を放った箇所は、その瞬間だけ門が開いてしまう状態になるから、気をつけるんだよ。」


 茶々丸の末那は日増しに大きくなっていき、半年後には、タタラが(うな)る程の火炎術と結界術の使い手となった。


 タタラは満足し、餓者髑髏に会いに行くことに決めた。


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