表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
57/252

第57話 海蛇レビュラス

 テンマは丁寧(ていねい)に自己紹介し、サーペンスにタタラからの連絡事項を伝えた。サーペンスと、そのやや後方に(ひか)えていた2人の男は表情の欠いた顔でテンマの話を聴いていたが、副党(ふくとう)のカゼラは、今後、海賊行為をしなければマドリーナ王国に(むか)え入れられ、(あた)り一帯の治安は王国が保証するという話を聴き、驚いている様子だった。


 テンマが話をしている間、(いかり)が引き上げられ、船は港から離れて行った。海蛇党(うみへびとう)の者達は別の船に乗り込み、党首(とうしゅ)が乗る船を追った。赤の女王が港の方へ振り返ると、ほとんど全ての船が出港していた。


 テンマが連絡事項を伝え終えると、サーペンスは右手に持っていた杖を目線の高さまで水平に持ち上げた。左手で杖の中央を握って左側に(すべ)らせると、刀身(とうしん)が出てきた。


「あなた方は誤解されている。私達は敵同士なのです。」


党首(とうしゅ)っ。」


カゼラがサーペンスに思い(とど)まるよう叫び声を上げたと同時に、サーペンスはテンマに、後方にいた2人の男はツバキとリョウコに襲いかかった。また、それを合図に、周りの船から、船尾にいた赤の女王に向けて無数の矢と魔法弾(まほうだん)が放たれた。


 赤の女王は一瞬にして上空に回避した。赤の女王はいつもの丸みを()びた(おだ)やかな声を発した。


「俺に攻撃してきた者には容赦(ようしゃ)しないよ。」


赤の女王は左手首に()めている赤黒い腕輪に末那(まな)を注入した。そうすると、腕輪は液体に変化して腕から離れ、球体となって宙に浮いた。それは次第に体積を増し、ヒトの頭程の大きさとなった後、尖頭状(せんとうじょう)の固体へと変形した。


赤の女王はそれを矢と魔法弾(まほうだん)を放ってきた船に向けて目にも止まらぬ速度で放った。それは海蛇党(うみへびとう)の船を一瞬にして(つらぬ)いた。赤の女王は他の船から上空へ放たれた魔法弾(まほうだん)を回避しつつ、海に(もぐ)った物体を手元に戻して、再び末那(まな)を注入し、別の船を攻撃した。


それを繰り返し、テンマ達が乗船している船の周囲にいた5(せき)の船をあっという間に沈没(ちんぼつ)させた。その光景を見たサーペンスはテンマへ剣撃(けんげき)すると同時にぼやいた。


「はぁぁぁ。全く、どこまでも使えない連中ですね。」


余所見(よそみ)をするとは良い度胸(どきょう)だな。」


「お互い様でしょう?ご兄妹(きょうだい)が気になる様子。」


 テンマが想像していた以上にサーペンスは手練(てだ)れで、お付きの2名の男達も剣と魔法の腕が相当高度であった。


「お前ら、ここらの海賊の者じゃないな?剣の腕、身のこなし、魔力、よく訓練されてる。讐怨亭(しゅうおんてい)の者達とも比べ物にならない。何者だ?」


「あんな野蛮(やばん)な連中と一緒くたにされては困ります。それに、死にゆくあなた方には関係の無いことです。」


 サーペンスは魔力を全身に(みなぎ)らせた。すると、彼の筋肉が爆発的に膨張(ぼうちょう)し、上半身の服が(はじ)け飛んだ。さらに、水の魔力によって剣に海水を(まと)わせると、テンマに向けて振り下ろした。強力な水圧を伴うその剣撃(けんげき)は、テンマの風の魔法、風魔(ふうま)による風の刃を(はじ)き、テンマは(あわ)ててそれを(かわ)した。


 サーペンスの強力なその一撃は船を半壊させた。船に入った切れ込みは、バキバキと音を立てながら次第(しだい)に広がっていき、船が左右に割れ始めた。


 テンマは風の魔力を()り、空を飛んだ。


 ツバキは、態勢(たいせい)(くず)したサーペンスの部下の一瞬の(すき)をつき、剣で串刺(くしざ)しにした。しかし、その男はにやりと笑い、腹に力を込めて剣を抜けなくし、ツバキの両腕を(つか)んだ。


「サーペンス様ぁ。」


「さすが、我が部下、リーマス。見事です。」


 サーペンスは魔力を海へと放った。すると、そこから巨大な海蛇(うみへび)、レビュラスが勢いよく海面から飛び出し、(あご)の骨を外して大きな口を開け、リーマスもろともツバキを襲った。


 一瞬の出来事でテンマは腕をツバキの方へと向けたが間に合わなかった。そこへ、レビュラスの末那(まな)を感じとっていた赤の女王がツバキの元へと飛んできて、リーマスもろともツバキを押し倒した。代わりに赤の女王がレビュラスに喰われ、レビュラスはそのまま海中へと消えていった。


 ツバキはリーマスに突き刺さった剣に風の魔力を放ち、リーマスを海へと吹き飛ばした。そして、沈みゆく船の(へり)に立ち、海蛇(うみへび)(もぐ)っていった海中を見て、全身に風の魔力を(まと)った。それを見たテンマが叫んだ。


「よせ。行くなツバキ。」


 ツバキは兄の声を聞く間もなく、海中へと飛び込んだ。


「ツバキィィィ。」


 サーペンスは2匹目のレビュラスを呼び、宙に浮いているテンマを真下から襲わせた。テンマは風の防壁を造り出し、喰われるのを防いだ。


 その時、サーペンスのもう一人の部下を倒していたリョウコが電気を(まと)わせた手甲型(てっこうがた)の短剣で、テンマに集中していたサーペンスの首を目掛けて斬りかかった。サーペンスは寸前で避けたが肩に深い傷を負い、全身に電気が走った。


その(すき)に、リョウコはもう片方の腕の手甲型(てっこうがた)の短剣で彼の腹部を刺した。サーペンスの分厚い筋肉に(はば)まれて致命傷には至らなかったが、サーペンスは苦悶(くもん)の表情を浮かべた。リョウコが両腕の手甲(てっこう)からバチバチと電気を放ちながら、鋭い目付きで言った。


「あんたを殺しに来た。」


リョウコがサーペンスにとどめを刺そうと、転覆(てんぷく)しかかっている船の上で一歩を踏み出した時、突然、辺りが一瞬にして霧に包まれた。リョウコが驚愕(きょうがく)の表情で声を()らした。


「しまった。船幽霊(ふなゆうれい)か。」


 サーペンスは濃霧(のうむ)の中で、テンマを襲わせていたレビュラスを呼び、自身を喰わせて海蛇(うみへび)口腔(こうくう)内に避難し、海の中へと消えていった。

Dear Worldの番外編、サクラクルクル 全5話公開中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ