第56話 海蛇党の党首
テンマ達は海蛇党が支配する島に向かっていた。テンマはリョウコのことを信用していないため、サツキにツバキと同乗することを認めず、自分と一緒にウヅキに乗せて、島まで飛んできた。
島の名前はサクスムと言った。島には巨大な一枚岩が北部にあり、上空から、岩を背に集落が築かれ、東側の海岸に数十の船が停泊している様子が伺えた。
テンマ達が島の東に接近すると、灯台を兼ねている物見矢倉にいた者が警鐘を鳴らした。海蛇党の対処は速く、海岸に飛竜を迎え撃つ戦士達が集合し、多くの者達が弓を構えた。テンマは叫んで、島の西側に降り立つことをツバキと赤の女王に伝えた。
サクスム島に着陸したテンマ達は、集落に向かうことはせず、待機することにした。海蛇党が来ることは分かっていたし、島の中央に進んで挟み撃ちにされることを警戒した。
「話し合いにならなさそうだね。」
ツバキがテンマに声をかけた。
「今回は連絡事項を伝えて、立ち去ろう。」
赤の女王はリョウコに近付き、声をかけた。
「どう?この島は?」
「この島?この島がどうした?」
リョウコの声は低音で、芯のある明瞭な発音で言葉を話した。
「だって、来たかったんでしょ?普段、来ることが出来ないこの島に。」
「ああ。あの岩山、あんなにも大きいのだな。」
「そうだよねぇ。岩山のてっぺんはどうなっているのかなぁ?良い眺めなんだろうねぇ。行ってみたいな。」
「まぁな。」
「島の東側から血気盛んな海賊が、残虐な武器を持ってこっちに来ようとしているのに、君は全く不安に思ってないようだね。」
「ただの海賊には、興味がないからな。実践を積んだ者達は思い切りがいい。ヒトを躊躇なく攻撃する。だが、武術の訓練を積んだ上で、さらに実戦を学んだ者には決して敵わない。私はそれが分かっている。連中は分かっていない。だから、恐れを感じない。」
「まるで、兵士みたいだね。君は。」
暫くして、百人程の海蛇党の者達が武器を携えてやって来た。その中に党首はおらず、副党が前に出た。副党は背が高く、赤毛の筋肉質な女性で、額に3本の角が生えており、2本の三日月刀を手に持っていた。
「私は海蛇党、副党のカゼラ。」
「マドリーナ王国、警備大臣の双竜兄妹、テンマだ。争いに来たわけじゃない。タタラ・マドリーナ国王の連絡事項を伝えに来ただけだ。」
海蛇党の者達がザワザワと小声で話し、悪態をついた。
「連絡事項とやらは党首が聴く。だが、党首は船にいる。そこまで来てもらおう。」
テンマはツバキを見た。
「いいんじゃない?船上で取り囲まれて攻撃されたら、反対に、綺麗に片付けられるよ。」
テンマはカゼラに返答した。
「分かった。では、案内してくれ。」
テンマはウヅキとサツキにヒトのいない別の島で待機するように言い、テンマ、ツバキ、赤の女王、リョウコの4人は海蛇党に囲まれながら、東側の港まで歩いて行った。
4人が案内された船は、装飾が施された最も大きな船ではなく、停泊していた船の中では中位の大きさの一般的な船であった。甲板に、3名の男が立っていた。テンマ達と副党のカゼラが船に乗り込むと、一人の男が前に出た。
彼はやや長い灰色の髪を頭の後ろで結んでおり、綺麗に整えた灰色の髭に、耳には無数の輪のピアスを付けていた。服装は、黒色の上品な上着とズボンに、同じく黒色の皮のブーツを履いていた。ズボンの裾はブーツの中に収まっていた。一見すると初老を迎えた紳士に見え、到底、海賊を思わせる風貌をしていなかった。
「海蛇党、党首、サーペンスと申します。」
男は、非常に聞き取りやすい響き渡るような声を発した。




