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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第55話 エスペランザの財宝

 海坊主(うみぼうず)はテンマ達が讐怨亭(しゅうおんてい)海蛇党(うみへびとう)といった海賊と交渉する時、自分に不利な結果とならないように監視役として腹心を付き()わせることを要求した。


 テンマはそれを()ね付けた。ただでさえ敵対心の強い海賊はマドリーナ王国建国の話に聞く耳を持たないかもしれず、そこに海坊主(うみぼうず)の部下が立ち会っていると、余計に話がこじれると思った。


 そこで、海坊主(うみぼうず)の島で物資調達係を(にな)っている女性が志願した。彼女はリョウコという名で、顔も名前も知れ渡っていない自分なら問題ないと主張した。テンマは、リョウコの言い分は監視役としての前提条件であり、何故(なぜ)志願したのか、その理由を彼女に問うた。


 リョウコは、自分は海坊主(うみぼうず)の島の出身ではなく、ここで働かせてもらっていたのは海の生活に(あこが)れを持っていたからで、決して行くことの出来なかった海賊達が根城(ねじろ)にしている他の島に行くことが出来るなら、是非(ぜひ)行ってみたい、と返答した。それに、高名(こうめい)双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)と行動を共に出来る機会はもう巡ってこないだろうから、という理由も付け加えた。


 それを聴いた海坊主(うみぼうず)は釈然としない様子だったが、しぶしぶ了承(りょうしょう)し、テンマとツバキもリョウコの同伴を承諾(しょうだく)した。こうして、テンマとツバキ、赤の女王、リョウコの4人で海賊が縄張(なわば)りとする島を巡ることになった。


 テンマは海坊主(うみぼうず)船幽霊(ふなゆうれい)についての情報を聞いた。


()たいの知れない奴だ。船幽霊(ふなゆうれい)は霧の魔法を使う。奴の霧に閉じ込められると、身動きがとれなくなる。この辺の者達は、自然の霧が発生した時、それが船幽霊(ふなゆうれい)の霧と判別出来ねぇから、決して海には出ねぇ。奴は何がしてぇのか分からねぇんだ。ただ、何かを探してるようではあるがな。」


ツバキが質問した。


「探すって何を?」


「さぁな。まぁ、テチス(かい)にはエスペランザの財宝がどこかに眠っていると言われてるからな。それかもしれねぇ。讐怨亭(しゅうおんてい)海蛇党(うみへびとう)も、水面下で探し回ってるって話だ。」


テンマが発言した。


「世界中の海を航海した伝説の海賊、元13柱(じゅうさんちゅう)の悪魔、エスペランザか。」


「そうだ。たまに、海底で金貨を拾うマーメイドがいてな。財宝があるってのは真実だと思うが、皆、探し回っても出てこねぇんだ。ディープホールにでも飲まれたんだろうよ。お前らもディープホールには気を付けろよ。」


「ああ。リア市長にも注意された。」


「その名前は出すな。虫酸(むしず)が走る。」


 島を出て行った4人を見送った後、海坊主(うみぼうず)の妻、時雨(しぐれ)が心配そうに口を開いた。


「良かったのかい?あの女に行かせて?」


「まぁ、讐怨亭(しゅうおんてい)海蛇党(うみへびとう)の連中が王国に従うとは思えねぇ。かと言って、あの双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)や赤の女王が敗けるこたぁねぇだろ。腕の立つリョウコが行けば、勝率も上がるだろう。あいつらが、連中を消してくれるんなら、願ったりだ。だから、どう転んでもこの島の不利益にはならんさ。」


「でも、連中には海の怪物がいる。それに、船幽霊(ふなゆうれい)がどう出るか。それによってはひっくり返る可能性もあるんじゃないのかい?」


「かもな。そんときゃ、そん時に考えようや。」

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