第54話 罪には罰を
風が止み、辺りはまたしんとした静寂に包まれた。赤神ダンテは誰とも視線を合わせず、無言で廃墟となった街の通りを歩き始めた。赤神スースが赤神ナナセに質問した。
「茶々丸って誰のことなの?」
「マドリーナ王国のお庭番衆。要人の警護とかの任務をするねん。皆が会議に参加してた時、あたしがこっそりと探ってたんやから。」
赤神ダイボスがじろりと赤神ナナセを睨み付けた。
「あとはねぇ、マドリーナ王国でお店をやってると、あの双竜兄妹が来るかもしれへんやん。あたし、ナトレイク領で本人達を見たことあるねん。なんか下品な連中をバッサ、バッサと切って血の雨を降らせた後、飛竜の背に乗って、颯爽と去って行く姿が、噂通りめっちゃ格好良かってん。痺れたわ。テンマ君も素敵やけど、何と言ってもツバキちゃん最高。あのピンクの髪と鱗に敵の血を浴びた姿が凄かった。格好良い、綺麗、可愛い、全部揃ってたからね。まぁ、竹虎ん時みたいに、たぶんタタラ王にも反発してるやろうから、王邸のある街に出店しても来ぇへんやろうけど。」
赤神スースは、赤神ナナセが喜ぶであろうことを伝えた。
「そう言えば、白髪の国務大臣が言ってたわよ。タタラ王が、混迷を極めるテチス海に警備大臣の双竜兄妹を遣わしたって。」
赤神ナナセは驚いて言った。
「えっ?警備大臣?それってテンマ君やツバキちゃんがタタラ王に協力してるってことなん?」
「まぁ、そうなんだと思うよ。」
「タタラ王、やるやん。じゃあ、お店出したら双竜兄妹にも会える可能性が高いな。ますますやりたい。頭領、お願い。」
赤神ダンテは街の中央広場らしき所の手前で立ち止まり、突然、全身に強大なオーラを纏い、片腕を太陽の方へと上げた。勢いよく腕を振り下ろすと、太陽から1本の巨大な光の矢が隕石の如く広場の中心に落ちてきて、凄まじい衝撃音と共に、地面にへこみが生じた。
光の矢は、太陽の化身 フレアへと姿を変えた。フレアは頭が鷹のヒト型をしており、大きな両腕には羽毛が生えていて足は無く、無形の下半身はゆらゆらと揺れる水蒸気のような姿をしていた。フレアは広場の片隅に埋もれていた大きな岩を軽々と持ち上げ、光の矢でへこんだ広場の中心にどすんと置き、霧が晴れるように消えていった。
「昔、ある男が我に問うた。お前は何を望む?我は答えた。誠の世界だ、と。国家も、一族も、ヒトも、正しきは繁栄し、悪しきは滅びる。我はそんな世を望んでいる。それはアカガミも例外ではない。我の統治に間違いがあれば、我もまた滅ぶべきなのだ。では、この街の者達はどうか。誰かの父も母も息子も娘も、全てのヒトが悪しき者達だったのか。否。因果に恵まれなかったその者達を想い、我らは悼むべきだ。」
赤神ダンテはフレアが設置した縦長の岩を指差して言った。
「あれは墓標なり。黙祷。」
赤神ダンテの号令により、5人は暫くの間、目を瞑った。
「安らかなれ。」
赤神ダンテは4人の方に身体を向けた。
「正しき者が不幸になり、悪しき者が富を成すことがある。何故か。悲しきかな、因果応報とはヒトが生み出した思想であり、自然の摂理では無いからだ。だからこそ、我らは、確固たる意志を持って、正しき者達を守り、正しき道を整えねばならない。だからこそ、我らは、確固たる意志を持って、悪しき者達に鉄槌を与え、悪しき道を排除せねばならない。この世に天罰などない。我らが、我らの意志によって、悪しき者共に罰を降すのだ。」
赤神ダンテは、よりいっそう声を張り上げた。
「罪には罰を。」
4人は神妙な面持ちで赤神家頭領の言葉を聴いた。
「ナナセ。」
「はい。」
「タタラ・マドリーナはバクター殺害を告白した。当該案件に対処せよ。」




