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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第54話 罪には罰を

 風が()み、辺りはまたしんとした静寂(せいじゃく)に包まれた。赤神(あかがみ)ダンテは誰とも視線を合わせず、無言で廃墟(はいきょ)となった街の通りを歩き始めた。赤神(あかがみ)スースが赤神(あかがみ)ナナセに質問した。


茶々丸(ちゃちゃまる)って誰のことなの?」


「マドリーナ王国のお庭番衆(にわばんしゅう)。要人の警護とかの任務をするねん。皆が会議に参加してた時、あたしがこっそりと探ってたんやから。」


赤神(あかがみ)ダイボスがじろりと赤神(あかがみ)ナナセを(にら)み付けた。


「あとはねぇ、マドリーナ王国でお店をやってると、あの双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)が来るかもしれへんやん。あたし、ナトレイク領で本人達を見たことあるねん。なんか下品な連中をバッサ、バッサと切って血の雨を降らせた後、飛竜の背に乗って、颯爽(さっそう)と去って行く姿が、噂通りめっちゃ格好良かってん。(しび)れたわ。テンマ君も素敵やけど、何と言ってもツバキちゃん最高。あのピンクの髪と(うろこ)に敵の血を浴びた姿が凄かった。格好(かっこう)良い、綺麗(きれい)可愛(かわい)い、全部(そろ)ってたからね。まぁ、竹虎(たけとら)ん時みたいに、たぶんタタラ王にも反発してるやろうから、王邸(おうてい)のある街に出店しても()ぇへんやろうけど。」


 赤神(あかがみ)スースは、赤神(あかがみ)ナナセが喜ぶであろうことを伝えた。


「そう言えば、白髪(はくはつ)の国務大臣が言ってたわよ。タタラ王が、混迷を極めるテチス海に警備大臣の双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)(つか)わしたって。」


赤神(あかがみ)ナナセは驚いて言った。


「えっ?警備大臣?それってテンマ君やツバキちゃんがタタラ王に協力してるってことなん?」


「まぁ、そうなんだと思うよ。」


「タタラ王、やるやん。じゃあ、お店出したら双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)にも会える可能性が高いな。ますますやりたい。頭領、お願い。」


 赤神(あかがみ)ダンテは街の中央広場らしき所の手前で立ち止まり、突然、全身に強大なオーラを(まと)い、片腕を太陽の方へと上げた。勢いよく腕を振り下ろすと、太陽から1本の巨大な光の矢が隕石の如く広場の中心に落ちてきて、凄まじい衝撃音と共に、地面にへこみが生じた。


 光の矢は、太陽の化身(けしん) フレアへと姿を変えた。フレアは頭が(たか)のヒト型をしており、大きな両腕には羽毛が生えていて足は無く、無形の下半身はゆらゆらと揺れる水蒸気のような姿をしていた。フレアは広場の片隅に埋もれていた大きな岩を軽々と持ち上げ、光の矢でへこんだ広場の中心にどすんと置き、霧が晴れるように消えていった。


「昔、ある男が(われ)に問うた。お前は何を望む?(われ)は答えた。(まこと)の世界だ、と。国家も、一族も、ヒトも、正しきは繁栄し、()しきは滅びる。我はそんな世を望んでいる。それはアカガミも例外ではない。(われ)の統治に間違いがあれば、(われ)もまた滅ぶべきなのだ。では、この街の者達はどうか。誰かの父も母も息子も娘も、全てのヒトが()しき者達だったのか。(いな)因果(いんが)(めぐ)まれなかったその者達を想い、我らは(いた)むべきだ。」


 赤神(あかがみ)ダンテはフレアが設置した縦長の岩を指差して言った。


「あれは墓標なり。黙祷(もくとう)。」


赤神(あかがみ)ダンテの号令により、5人は(しばら)くの間、目を(つむ)った。


「安らかなれ。」


 赤神(あかがみ)ダンテは4人の方に身体を向けた。


「正しき者が不幸になり、()しき者が富を成すことがある。何故(なぜ)か。悲しきかな、因果応報(いんがおうほう)とはヒトが生み出した思想であり、自然の摂理(せつり)では無いからだ。だからこそ、我らは、確固(かっこ)たる意志を持って、正しき者達を守り、正しき道を(ととの)えねばならない。だからこそ、我らは、確固(かっこ)たる意志を持って、()しき者達に鉄槌(てっつい)を与え、()しき道を排除せねばならない。この世に天罰などない。我らが、我らの意志によって、()しき者共に罰を降すのだ。」


赤神(あかがみ)ダンテは、よりいっそう声を張り上げた。


(つみ)には(ばつ)を。」


4人は神妙な面持ちで赤神家(あかがみけ)頭領(とうりょう)の言葉を聴いた。


「ナナセ。」


「はい。」


「タタラ・マドリーナはバクター殺害を告白した。当該(とうがい)案件に対処せよ。」

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