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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第53話 赤神ナナセの提案

 赤神(あかがみ)ダンテ達はタタラとの会談を終えた後、再び大鷹(おおたか)に乗ってバルバレイ領を訪れた。ナウゼラ・バルバレイと面会する前に、(むし)に飲み込まれた街を視察することにした。ヒトがいなくなり、廃墟(はいきょ)となった街中は、不気味な静寂(せいじゃく)に包まれていた。


「タタラ王はどんな感じやったん?」


いつもの口調で、唐突に発せられた赤神(あかがみ)ナナセの声は周囲に響き渡った。


「もう。驚かさないでよ。」


赤神(あかがみ)スースが赤神(あかがみ)ナナセを(たしな)めた。


「だって、マドリーナ王国を出るまでは白髪(はくはつ)のヒトがぴったりとくっついてたし、大鷹(おおたか)に乗ってる時は風で声が届かへんし、気になってたんやもん。頭領(とうりょう)、タタラどうやったん?あ、いや、ちょっと待って。頭領(とうりょう)が何か言う前に、あたしが先に言うとくけど、あたしはマドリーナ王国と敵対するんは嫌やで。」


赤神(あかがみ)ナナセの発言に水野京爾郎(みずのきょうじろう)(いぶか)しんだ。


何故(なぜ)、急にマドリーナ王国を(おもんばか)ることを言うのです?」


「ええぇ?そりゃあ、あれやんか。」


「どれです?」


「あのぉ、なんか礼儀正しい国やったし、なんか色々と、あれやったし。」


「あれだったとは、何です?」


「もうええから、頭領(とうりょう)、タタラはどうやったん?」


 赤神(あかがみ)ダンテは扉が外れた無人の家屋(かおく)の入り口の前に立ち、中の様子を探りながら、口を開いた。


「タタラ王の印象は、深淵(しんえん)だ。注意深く(のぞ)き込んでも、そこには深い闇しかない。底が無く、出口が無く、終わりも無い。まるで、光や空間や時間さえも飲み込む異次元の穴のような存在であったわ。」


 廃墟(はいきょ)に風が吹いて5人の髪が揺れた。砂が舞い上がり、どこかで家屋(かおく)が崩れる音がした。


頭領(とうりょう)がそこまで言うやなんて珍しいやん。タタラ王はあたしらの敵になりうるん?」


赤神(あかがみ)ナナセの質問に水野京爾郎(みずのきょうじろう)が答えた。


「こちらが下手につっつかない限り、アカガミ国の脅威(きょうい)にはならないでしょうね。それと、タタラ王より貿易の提案がありました。」


「ほんまに?やったぁ。じゃあさ、王邸(おうてい)のある街にアカガミ国の特産品を販売する店を開こ。そいで、あたしが店員になりたい。出来立てほやほやの国やからさ、多少は危険も(はら)んでるやろ?でも、強いあたしなら対処出来るし、愛嬌(あいきょう)もたっぷりやし、可愛(かわい)いし、お客さんいっぱい来て繁盛(はんじょう)するで。外貨(がいか)を獲得して、ついでに、ちゃんと監視しとくからさぁ。なぁ、頭りょぉぉう、お願い。」


水野京爾郎(みずのきょうじろう)が口をはさんだ。


「前例がありませんよ。しかも、監視がついでなんですか?逆じゃないですか。アカガミ国は黄泉(よみ)統一を(かか)げていますから、他国に出店するとなると、方針転換を宣言しているようなもので、反対するヒトが多いと思いますよ。それに、誰が可愛(かわい)いんです?」


赤神(あかがみ)ナナセは水野京爾郎(みずのきょうじろう)のお(しり)を軽く()りながら述べた。


黄泉(よみ)統一って言っても、スメラギや他の13柱(じゅうさんちゅう)の悪魔やエル大陸からの干渉(かんしょう)がある中で、全ての国をアカガミ国に併合(へいごう)するなんてこと、非現実的やん。元々、統一目標は、全アカガミ国民が平穏に、幸せに生きていくために(かか)げたもんやろう?それって、全ての国を併合(へいごう)せんでも叶うことやん。例えば、ヨミ大陸の全ての国がアカガミ国の友好国になれば目標達成ってことでええんちゃう?せやから、マドリーナ王国とかバルバレイ領を友好国に認定したらええねん。まずは、マドリーナ王国に出店して、それを試金石(しきんせき)にして、その後で本格的に考えたらええんちゃう?そして、あたしは可愛(かわい)いから。」


「さっきも聞きましたけど、どうしてナナセさんはそんなにマドリーナ王国に肩入れするんです?」


「ああっ、もうっ。しつこいな。分かった、言うよ。あたしは茶々丸(ちゃちゃまる)が好きになってん。」

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