第44話 他国からの新書
「そうか。俺は讐怨亭のマグナ。お前が竹虎の後釜か。どんな豪傑かと思っていたら、吹けば飛びそうなガキだとはな。」
「他人の命や財産を奪う権利はお前達には無い。これからは、海賊行為はやめてもらうよ。」
マグナは眼をむいて、大声で答えた。
「俺達にはな、奪う権利があるんだよ。陸を追われた祖先の恨みをはらしてんだよ。海に出た俺達がどれだけ辛酸を舐めてきたか。お前が国王様ならな、俺達に賠償しろ。」
タタラは鋸鎌をヒトの手に戻した。
「君達には、子ども達への無償の教育と貿易の基盤を提供するつもりだよ。」
マグナはいきり立った。
「そんなもんに何の価値があんだよ。」
「物凄い価値があるよ。この綺麗なエメラルドグリーンの海と同じ位にね。」
「酒と金と飯を寄越しゃいいんだよ、この唐変木。」
そう言うと同時にマグナは再び銛でタタラに襲いかかった。そこへ茶々丸が2本の尾に予め溜めておいた火炎術 迦具矢を放ち、マグナを遠くの海まで吹き飛ばした。
「あっ。」
マグナの魂を読み取り、讐怨亭の情報を得ようとしていたタタラの計画は潰れた。タタラは茶々丸をちらりと見た。
「にゃにゃん。」
茶々丸は目をキラキラさせて、タタラを見上げた。
「茶々丸ってば。茶々丸はいつも僕を助けてくれるね。ありがとう。」
「んんにゃん。」
テンマとツバキはもう一隻の海賊船に乗り込み、敵を全滅させていた。讐怨亭の情報を得ようとしていたタタラの計画は、再度、潰れた。
タタラは魂の空間軸に保管しておいた暗黒物質を取り出し、奥義 受肉改変により2体の骸骨竜に変化させ、それらを秘術 餓者髑髏によって操作し、2隻の海賊船をクラングランの港まで曳航させた。
海岸沿いには大勢の市民が集まっており、そこには市長代理のアメリアの姿もあった。波止場は街の西側にあり、市庁舎はその近くにあった。タタラが骸骨竜の動きを止めて、船を桟橋の横につけた時、芭蕉から通信が入った。
タタラは秘術 餓者髑髏によって、王邸、バルプロ山脈、ハビキ村、クラングランに背の高い骨塔を建て、その内部に同じく骨で出来た勾玉を設置した。骨の勾玉は他にも複数造り、その全てを同じ形、同じ大きさにそろえた。骨の勾玉同士が末那で繋がっている状態で、どれか一つの骨の勾玉に振動を与えると、同型の他の骨の勾玉にも全く同じ振動が起こった。遠く離れた位置にある骨の勾玉が各骨塔を介して末那の送受信をすることにより、骨の勾玉を持つ者同士で、骨振動によって会話を行うことが出来るようにしていた。ただし、骨塔と骨の勾玉には定期的に末那を注入しておかなければならず、それは骨を自在に操る神通力を持つシヴァか、秘術 餓者髑髏を行使できるタタラの末那に限定されていた。
「タタラ王、聞こえるでしょうか?」
「うん。ばっちり伝わっているよ。」
「他国より親書が届きまして、とあるお方がマドリーナ王国への訪問をご希望されております。」
「ほほう。マドリーナ王国に来たいだなんて。ふふふ。どちら様でしょう?バルバレイさんかな?」
タタラはマドリーナ王国が他国にまで知れ渡っていることに喜びを感じた。
「赤神ダンテです。」
「んあ?」
一瞬にして、タタラの頭の中は真っ白になった。
「赤神家の頭領で、13柱の悪魔で、非常に恐ろしい人物で、赤神バクターを殺されて怒り心頭の赤神ダンテが王邸にいらっしゃるそうです。」
芭蕉はいつもと変わらない声色で、最後に多少の嫌味を付け加えた。
「ええと、こ、来ないで下さい。」
「来ます。明日。」
「ば、芭蕉さんに会いに来るのかな?」
「タタラ王に会いに来ます。」
「ただいまタタラは席を外しておりますので、戻り次第、折り返し、こちらからお骨話をさせていただきます。」
「ふざけてないで、早くご帰還下さい。」
「うう。分かったよ。」
意気消沈のタタラを見て、テンマが声をかけた。
「俺達も一緒に行くよ。」
タタラはテンマとツバキを順番に見て言った。
「ありがとう。でも、君達はこのままクラングランに残って。もし、僕に何かあったら、西の国境に向かったシヴァと分福丸と合流して、どうかマドリーナ王国の人達のために行動して欲しい。」
テンマはツバキと目線を合わせ、こくんと頷いて、言った。
「分かった。約束しよう。」
タタラは背中に飛竜の翼の骨を生やして、飛び立とうとした。その時、茶々丸がタタラにしがみついた。
「茶々丸はここにいないと駄目だよ。怖い人に会いに行くんだから。」
「にゃあ、にゃあ。」
茶々丸は拒絶した。
「なんか、前にもこんな事があったね。」
「んにゃ。」
「全くもう、茶々丸ってば。それじゃあテンマ、ツバキ、申し訳ないけどクラングランのことはよろしく頼むよ。このまま市長のリアに会いに行って、マドリーナ王国は全力で海賊を排除することを明言しておいてほしい。ただし、今後、海賊行為を止める者に対しては王国に受け入れることも伝えておいて。あと、赤神ダンテの相手をするために、僕が市長に会いに行けなくなったことも。」
「承知した。気をつけてな。」
タタラは茶々丸を抱えて、湖都の王邸へと飛び立った。タタラはテンマが、気をつけてと、自分を慮ることを言ってくれたことが嬉しかった。




