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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第43話 南の都市クラングラン

 ヨミ大陸とパンゲア大陸の間に広がるテチス(かい)には無数の島が散在しており、マドリーナ王国の領域内だけでも、700(あま)りの島があった。


 マドリーナ王国最大の都市であるクラングランはテチス海に面する港町であり、湖都ことユマよりも(にぎ)やかであった。しかし、その周辺の海域には各島を縄張(なわば)りとする多数の海賊団がいて、クラングランの天使の市長、リアの頭を悩ませていた。


 タタラはテチス海の治安回復を目的に、リアと協議するため、茶々丸(ちゃちゃまる)双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)を連れて、クラングランを訪れていた。クラングランは砂浜に沿って街に大通りが通っていて、様々な店が並んでいた。建物は煉瓦(れんが)造りで、一階建てがほとんどであったが、どれも天井が高く、必ず屋上があって、そこに椅子(いす)とテーブルが設置されていた。砂浜と大通りの間には平行してヤシの木が植えられていた。街は人間が半数を占めていたが、多様な人種や種族がいて、ごく(まれ)に天使の姿もあった。


 大通りには、多数の旗が整然と立て掛けられていた。その旗には、正面から見た白鳩(しろばと)が頭上の太陽を背景に、左右に別れた波の上を羽ばたく様子が描かれていた。それはクラングランを象徴(しょうちょう)する絵柄(えがら)であった。


 店先に食べ物を並べている店が多く、イカの丸焼きや火にかけたサザエの香ばしい匂いで、タタラのお腹が鳴った。ココナッツジュースを店頭に並べた店の前を通った時は、タタラは自然とにやけた顔になった。タタラはわくわくが止まらなくなり、一軒一軒の店を周りたい衝動をぐっと(こら)えた。タタラが店の前で立ち止まる(たび)に、ツバキはタタラの背中を押さなければならなかった。


 タタラ達が砂浜を左手に大通りを歩いていると、何人かの通行人がタタラ達をじっと見て、振り返って見直す者もいた。次第に、視線が集まるようになり、遂に、一人の人間の子どもが声を上げた。


「あっ、双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)だ。お母さん、そうだよね?」


子どもの母親は息子を優しくたしなめたが、その声に周囲の人々が反応し、人だかりができた。皆、双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)歓迎(かんげい)した。


「テンマとツバキって、こんなにも人気があったんだね。」


「街中を歩くと、よく声を掛けられる。」


「早く行こうよ。私は落ち着かない。」


 突然、誰かが大声で叫んだ。


讐怨亭(しゅうおんてい)が出た。漁船が襲われてるぞ。」


 タタラ達はヤシの木を通って砂浜に出た。沖の方を見ると、中型の漁船が2隻の大型の海賊船に襲われていた。タタラは背中に飛竜の羽の骨格を生やして茶々丸を(かか)えて飛び、テンマとツバキは指笛(ゆびぶえ)でそれぞれ相棒の飛竜、ウヅキとサツキを呼んで背に乗り、漁船へと向かった。その光景を見たクラングランの市民達は大歓声を上げ、双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)を応援した。


 タタラが漁船に近付くと海賊船から鳥の千家(せんげ)、ハルピュイア達が飛び立って、脚の鉤爪(かぎづめ)によって攻撃を仕掛けてきた。それに対し、タタラの両腕に抱えられた茶々丸が強力な鬼火(おにび)により、全て撃墜(げきつい)した。


 タタラが漁船に乗り込むと、海賊の三日月刀(みかづきとう)で切られて倒れてる船員がおり、また、身代金目当てに、人質として縄で縛られている者もいた。タタラは激昂(げきこう)し、奥義 受肉改変(じゅにくかいへん)により両腕をカマキリの鋸鎌(のこぎりがま)に変化させ、次々に海賊をなぎ倒していった。


 人間の2倍はある大きな体格をした、頭に(つの)の生えた者が(もり)でタタラに襲いかかった。タタラは、双竜兄妹(そうりゅうきょうだい)から体得した風の魔法、風魔(ふうま)を発動させ、鋸鎌(のこぎりがま)を振りかぶると同時に風の(やいば)を敵へと放った。しかし、巨体の男は防御した両腕に傷を負いながらも持ちこたえた。


「貴様、何モンだ?」


「マドリーナ王国、国王、タタラ。」

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