第40話 鱗の民への敬意
タタラは鱗の民の長に依頼して、鱗の民に長の屋敷へと集合してもらった。シヴァ、茶々丸、分福丸も同席した。その集会で、タタラは演説を行い、国の3本柱として、平和、教育、交通を掲げ、鱗の民を説得した。
「全ての根幹は平和にあります。平和が実現しない限り、ヒトの幸福と国の発展は成り立ちません。私は命を賭して、ヒトを、国を守り続けます。そして、教育を充実させ、全ての国民が読み書き計算を出来るようにいたします。教育によって、ヒトの可能性は無限に広がり、人生の選択肢が増え、心のままに生きていくことが出来るようになります。また、マドリーナ王国の全ての街や村に街道を敷きます。ヒトと物の流れを促進することによって、多様な生活を送れるようにします。鱗の民の皆さんはお酒やお醤油やお味噌の製造を盛んに行っていらっしゃいます。それを流通させ、反対に新鮮な海産物を取り入れるようなことも可能になります。私は、わくわくするような国造りに励んでまいります。どうか、私に、皆さんのお力をお貸し下さい。」
会場はしんとしていた。野次を飛ばす者はいなかったが、頷く者もいなかった。双竜兄妹が立って、発言した。
「蟲との戦闘で、国王のタタラと国防大臣のシヴァの強さを目の当たりにした。2人が13柱の悪魔だと言われたら、俺はそれを信じただろう。それ程の練磨された強さだった。それに、今の国王の演説は非常に重要な内容を含んでいた。俺達双竜兄妹、櫛名田テンマと櫛名田ツバキは、マドリーナ王国とタタラ国王を支持する。」
会場にいた者は、皆、ざわざわと小声で意見を寄せ会い、唸った。そんな中、ツバキの幼馴染みの女性が立ち上がって、発言した。
「ツバキちゃん。ツバキちゃんも、本当に同じ気持ちなの?」
「アザミちゃん。私も兄貴と同じ気持ちだよ。強制されたものではなく、協力していきたいと思ってる。ヒトの交流が増えれば、変化に対応していかなきゃならない所が出てくるだろうけど、変化を伴わない成長は無い。変化を伴わない発展は無い。医療技術も進歩していけるかもしれない。教育には時間がかかると思う。でも、今から始めれば、20年後にはより良くなっているかもしれない。反対に、今始めないと、100年後も今と何も変わっていない。」
皆、静まり返って、ツバキを見た。
「それに、タタラは竹虎とは違う。全然違う。」
「じゃあ、私もマドリーナ王国を支持します。ここにいる皆はね、ツバキちゃんが幸せになれるためなら、何だってするんだから。そうでしょ?皆。」
その場にいた鱗の民は、一斉に、当然だと、声を上げた。村よりも、国よりも、ツバキの幸せが第一だと叫ぶ者もいた。ツバキは動揺し、困惑した。
「み、皆、何を言ってるの?私の幸せ?」
長が立ち上がり、ツバキに言った。
「ツバキ。これが、わしらの答えだ。これが、わしらの答えなんだよ。」
「どういうこと?」
「これまで、お前が、どれだけ苦しんできたか、どれだけ辛い想いをしてきたか、わしらはよぉぉく分かっとる。でもな、ツバキ。もおぉぉ、十分だ。お前は、よぉ頑張った。誰も、シュレイのことは忘れはせん。これからも、シュレイの魂はわしらの心の中で存在し続ける。だからな、ツバキ。お前は、お前自身のために前を向いて進んで行きゃええ。お前は、お前のために生きたらええ。」
ツバキは目を真っ赤にして、涙をいっぱいに溜めた。そこへ、アザミがツバキに駆け寄り、抱きしめた。
「ツバキちゃん。自分が、幸せになったら駄目だなんて、そんな事、思わないでね。私は、これから先ずっと、ツバキちゃんが幸せいっぱいになれるように願ってるから。」
この光景を見たタタラとシヴァは無意識の深層で鱗の民に敬意を抱き、最上の礼を持って接することを魂に刻み込んだ。




