第39話 マドリーナ王国への勧誘
「タタラは何でもありで、価値観がぶっ飛んでるし、お前達兄妹はこれだし。何だか、私が一番、常識人な気がしてきた。」
テンマは、シヴァのその発言には意見を述べず、タタラを話題にした。
「国王のタタラは、価値観がおかしいのか?」
「普通じゃないのは確かだな。」
「例えば、どんな所が?」
「タタラが王に即位した晩に、湖都の王邸で宴を開いたんだよ。タタラと私、茶々丸と分福丸、それに国務大臣の芭蕉に、書記官と護衛官の皆で。タタラはテーブルに出された果物が気に入って、その中でも、桃を美味しい、美味しい、って言って食べてたんだ。結局、全部、桃を食べ尽くしちまった。そしたらさ、まだ食べたいとか言って、次の瞬間に椅子に座ったまま、頭をテーブルにどんっと置いて、死んじまったんだ。」
テンマは驚いて聞き返した。
「死んだ?」
「そう。死んだんだ。呼吸も、脈も止まってた。皆、大騒ぎさ。即位したばかりの王様が、食事中に、いきなり死んだんだからな。ただ、それまでずっとタタラと生活を共にしてきた茶々丸は落ち着いた様子で、ぴくりとも動かなくなったタタラの頭に前足を添えて、にゃあ、と皆の方へ向けて声を上げたんだ。暫くして、タタラはただの眠りから覚めたかのように起き上がった。それからさ、あいつ、どうしたと思う?」
「さぁ。話しの内容が奇天烈で、全然分からん。」
「なんと、タタラは腕から小さな桃の木をにょきにょきと生やして、桃を結実させたんだ。そして、それをぷちっと収穫して、皮を剥いて、食べ始めた。全員、どん引き。茶々丸以外は。茶々丸はタタラからその桃を貰って、むしゃむしゃと食べてた。」
「あの、その話、ちょっと、怖い。」
「だろ?もはや怪談だよ。タタラはやべぇ。」
茶々丸は巨大な火柱を発した。それを見た分福丸は結界術を発動させながら、巨大な飛竜の幻を出現させ、空に向かって口から火を吹かせた。その後、幻の飛竜は広場に置いてあった丸太を噛み砕いた。
「あれ?分福丸の術は幻じゃないのか?」
シヴァはテンマの質問に答えた。
「幻の一部にエネルギーを集中させて硬質化することによって、攻撃出来るようにしてるんだよ。ただの幻だと油断してる敵は、あれでいちころだぜ。」
テンマは改めて茶々丸と分福丸の脅威を実感した。
「それでさ、お前達もマドリーナ王国を手伝ってくれよ。お前達は強いし、信用できるし、飛竜も格好良いし。やべぇタタラは面白いぜ。」
「俺は構わない。でも、妹のそばを離れるつもりはない。」
そこへ、鱗の民の長の所へ行っていたタタラが帰ってきた。茶々丸と分福丸はタタラに駆け寄った。
「よしよし。」
「タタラ。テンマは国造りに協力してくれるって言ってるけど、妹のそばを離れないってさ。」
タタラはテンマの方を見て言った。
「ありがとう。じゃあ、ツバキにもう一度、お願いをしてみるよ。」
「妹を説得出来るのか?」
「ううむ。」
シヴァはタタラに耳打ちした。
「ふむふむ。そうなの?じゃあ試してみるよ。」
タタラは茶々丸と分福丸を両手で抱え込んで、双竜兄妹の家に入った。
畳の上で寝転んで、茶々丸と分福丸に想いを馳せていたツバキはタタラ達を見て、慌てて上半身を起こした。タタラは靴を脱いで畳の上に上がり、茶々丸と分福丸をツバキに近付けて言った。
「どうか、国造りに力を貸してほしいんだ。お願いします。」
ツバキは茶々丸と分福丸を見つめながら返答した。
「で、でも、わ、私は何をしたらいいのか。」
「にゃん。」
「みいぃ。」
「協力します。」
こうして、タタラは双竜兄妹を警備大臣として迎え入れた。




