第32話 2つの天体
茶々丸と分福丸はツバキに近寄り、彼女をじっと見つめた。
「な、何よ?」
茶々丸と分福丸は同時に声を発した。
「にゃあ。」
「みぃぃ。」
「か、可愛い、子ぶったって私はなんとも思わないからね。」
顔を赤らめてそう言ったツバキはそっぽを向いた。
「にゃあぁぁん。」
ツバキはちらりと茶々丸の方へと目をやり、こっそりと頭に触れようとした時、シヴァが話し始めたので、さっと腕を引いた。
「私達、ここから離れて、東から来る蟲を迎撃するわ。蟲が群れでここまで来ちまうと、お前ら兄妹を守りながら戦闘するのは難しそうだからな。行こうぜ、茶々丸、分福丸。」
シヴァ、茶々丸、分福丸、そして、二体の骸骨竜は東へと向かって行った。ツバキは見えなくなるまで、茶々丸と分福丸の後ろ姿を見つめていた。
タタラは空中で、圧倒的な数の蟲を前にして身震いした。それは形をうねうねと変化させる巨大な生きた黒い雲のようで、世界を滅ぼしうる天災そのものであった。曼荼羅を検索しても、このような規模の事例は確認出来なかった。
「カゲツノハムシさん。ごめんなさい。君たちは精一杯に生きているだけだけれど、このままだと、世界が荒廃しちゃうんだ。」
タタラは曼荼羅に保存した分福丸の技、秘術 隠神刑部を発動し、巨竜の幻を創り出して、蟲の群れの上部に飛ばした。
空を覆い尽くす蟲はさらに高度を上げ、巨竜に向かって飛び、たかり、巨竜を核として、蟲が蠢く不気味な球体を作り始めた。地上に這っていた蟲も羽を広げて飛び上がり、地面が顔を出すと、結界を張って、蟲の脅威から逃れていた兵士達がいた。全員が手傷を負い、ひどく憔悴し、末那もほとんど残っていない状態だった。
タタラは魂の空間軸に保存していた暗黒物質を改変し、ヒトの骨格を出現させて、兵士達の結界に張り付かせ、その骨格を起点に結界術を発動させて兵士達を保護した。
幻の巨竜を核とした蟲の球体はさらに増大した。
「今度は、茶々丸の技を使わせて貰うね。」
タタラは火の末那を練って、大きな炎の球体を出現させた。地上から空を見上げると、黒と赤の天体が観察される異様な光景となった。
タタラは炎の塊を圧縮し、小さな球体とし、さらに炎を追加して先程の大きさまで拡張し、再び小さな球体とした。これをもう三度繰り返し、最後に極限にまで圧縮した炎を蟲の天体に放った。
「秘術 飛縁魔。」




