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Dear World  作者: 山波 孝麻
第1章 たたりもっけと餓者髑髏
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第26話 シヴァの怒り

 櫂鳴(かいな)が広大なバルプロ山脈の裾野(すその)を眺めていると、目の前に、空からゆっくりとシヴァが舞い降りてきた。巨大な骨の(てのひら)の中には飛竜がいた。五つの目は櫂鳴(かいな)を鋭く(にら)みつけ、長く(あか)い髪は炎のように、風に揺らめいていた。


「お前が(むし)の親玉か?」


櫂鳴(かいな)は首を横に振った。


「お前が蟲に飛竜を襲わせてんのか?」


櫂鳴(かいな)は再び首を横に振った。


「じゃあ、お前は何なんだよ?」


「僕は、ただの僕だよ。」


苛立(いらだ)ちを隠さず、シヴァが怒鳴(どな)った。


「私がお前に何を聴きたいのか、分かっているんだろう?とっとと答えろ。」


櫂鳴(かいな)はその場に腰を下ろし、覇気(はき)のない表情で返答した。


「僕には、カゲツノハムシの世羅潮(せらしお)という家族がいた。見たことは無いけれど、おそらく世羅潮(せらしお)単位生殖(たんいせいしょく)による産卵をしたのだと思う。その子どもがまた産卵をして、個体数が増えた。僕は、ヒトに暴力を振るったことは一度もない。でも、ヒトを嫌っていた。蟲達は、そんな僕の精神に感応してヒトを襲ったのかもしれない。街は崩壊した。蟲がバルバレイ領のどこまで広がったのか、僕は知らない。僕と世羅潮(せらしお)は南へと逃げて、ここまで来た。そして、世羅潮(せらしお)は1箇月前に亡くなった。」


シヴァは櫂鳴(かいな)の目の前まで歩み寄った。


「お前なら、止められたんじゃねえのか?」


「止めることが出来なかったから、逃げた。」


「止めようとはしたのか?」


「しなかった。」


シヴァは飛竜を鷲掴(わしづか)みにしていない方の手で櫂鳴(かいな)の胸ぐら掴み、激しい口調(くちょう)で言った。


「いいか。街が崩壊したんだろ?多くの子ども達を見殺しにしておいて、被害者(づら)してんじゃねぇぞ。」


シヴァは片腕にもう一つの巨大な骨の腕を造り、飛竜と同じように櫂鳴(かいな)(にぎ)った。


 シヴァは山頂まで飛んで地面に降り立ち、山の向こう側のバルバレイ領を確認した。蟲は視認できなかったが、遥か先に途方もない数の蟲のエネルギーを感じ取った。シヴァが末那識(まなしき)の感覚を鋭敏(えいびん)にしていると、背中側から大きなエネルギーが接近しているのを感じた。振り返ると、2頭の飛竜がシヴァに向かって近づいてきていた。そして、その背中には鱗の民の姿があった。


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