第12話 魔人転生
タタラは魂の空間軸に保管していた暗黒物質を取り出し、餓者髑髏の骨格のひびを修復し、魂が宿った軸椎を何重もの硬い骨板で包み込んで胸に隠した。その後、頭蓋骨の内部に脳を、肋骨の内部に各種臓器を造り、全身に神経と血管を張り巡らせ、強靭な筋肉を付け、皮膚で覆った。タタラは骨を自在に操る神通力を秘術 餓者髑髏と命名し、奥義 受肉改変と組み合わせて軸椎に宿る魂と肉体を接続することに成功した。タタラは自身の肉体に戻り、上半身を起こして言った。
「どう?上手くいったと思うけど。」
「すげぇ。見える。感触もある。腕も足も動く。すげぇぞ。」
「僕も、初めて5感を得た時は本当に感動したよ。」
餓者髑髏は泉の水を口に含んだ。
「美味い。水が美味い。喉越し爽やか。食道を通って、胃が冷える感覚も分かる。」
「よかったね。」
「よかったよ。すげぇよ。まるで、奇跡だ。」
餓者髑髏は再び泉の水を手で掬い、飲んだ時、泉に映った自分の姿を見て、勢いよく水を吹いて咳き込んだ。
「ごりごりの男じゃねぇか。」
「え?そうだけど。」
「私は女だ。私のことを何だと思ってたんだ。」
「骨かな。」
「やかましい。」
餓者髑髏は筋肉で盛り上がった腕や足、お腹を見て、少し悲しい顔で言った。
「これって、変えられない?」
「変えられるよ。変えるかい?」
餓者髑髏は、ぱっと明るい表情に変わった。
「よろしく頼む。あと、目を3つ追加して。」
「何で?怖いよ。」
「怖くない。格好良いだろう。普段は閉じて目立たないようにするからさ。髪は長めで、真っ赤にして。背中に金の鱗を付けて欲しい。」
「髪の色は楓の葉っぱの色にできるけど、金の鱗は情報がないから出来ないよ。」
タタラはもう一度、餓者髑髏の肉体に受肉し、女性の姿に変化させた。眉毛を無くして、そこにもう一対の目を足し、額に縦向きの目を追加した。さらに、こっそりと茶々丸の尻尾を生やしておいた。
「これでどうかな?」
餓者髑髏は泉に映った姿を見直して、満足した。
「最高。信じられねぇ。目がいっぱい。しかも、特殊な光も視えるようにしてくれたんだな。」
「うん。追加した目は紫外線や赤外線も感知できるようにしたよ。」
「ありがとう。」
タタラは餓者髑髏にお礼を言われたことで、照れた。
「僕の名前はタタラ・マドリーナ。この子は茶々丸。君の名前は?」
「シヴァ。」
「じゃあ、これから君の名前は、シヴァ・マドリーナだ。」
「シヴァ・マドリーナ?シヴァ・マドリーナか。新たな人生の始まりだな。」
こうして、餓者髑髏の一件を解決できたことに、タタラは胸を撫でおろした。