下着認識ソフトウェア
その女子高では校則で下着の色が定められていた。
抜き打ちで教師が下着の色を確認するのだ。
しかし、時代の流れか、教師が下着の色を確認することはセクハラで問題であるとある生徒が指摘した。
校則からの下着の色のチェックを外そうという意見もあったが、既にその校則の導入の経緯の記録が失われていて、本当に廃止しても良いのか誰も判断できず、この校則については存続することになった。
下着の色をチェックするのを女性教師のみにするという案も出たが、生徒と女性教師の双方から反対があった。
生徒からは、たとえ女性教師でも下着の色をチェックすることはセクハラであるという抗議が、女性教師からは女性教師にのみその業務が付与されるのは男女差別だというのだ。
とはいえ、下着の色をチェックする校則が残っている以上、誰かがチェックするしか手段がない。
ここで、情報の教諭が提案した。
その提案というのはこうだ。
ウェブカメラでスカートの中を撮影し、画像認識で下着を確認、その下着を確認すれば良いというのだ。
その提案は、採用され、情報の教諭がソフトウェアを開発することとなった。
ロジックはこうだ。
・画像で所定の位置に立ったかを判定する
・下着の位置を推測し、画像から下着の部分を抜き出した部分画像を生成する
・下着の部分画像から色を判定する
とりあえず、コードを書き終えた後、は情報の教諭が身を張って、デバッグと学習をさせた。
そうやって、ウェブカメラを埋めた板の上に教諭自身が制服を着て立ち、下着の色を学習させ、校則に従っているか判定できるようになったのだ。
きちんと判定できるようになってから数日、ついに実際に生徒の下着をチェックすることとなった。
生徒は抗議したが、装置の幅だけ校門が開いており、どうしてもそこを通らざるを得ないという状況の中で仕方がなく、生徒たちはその装置の上を通り始めた。
「合格」
「合格」
「合格」
「合格」
「違反、赤色!」
「合格」
「合格」
パソコンから次々と判定が出てくる。実際に、「違反、赤色!」と言われた生徒の下着を教諭がチェックすると実際に赤色だったということで、そのソフトウェアの判定の正しさが生徒たちにも認識された。
そこで、学校はこの画像認識で下着を確認し、その色を判定するソフトウェアを毎日運用することとした。
ところが、ある日のことである。
画像認識ソフトがNull Pointer Exceptionで例外を吐いて停止してしまったのだ。
ちょうど、情報の教諭が校門での下着チェックの担当をしていたので、エラーコードを確認したところ、画像から抽出された部分画像が全く存在しなかったために、色を判定するところで、オブジェクトが存在しないということになった様だった。残念ながら、撮影画像はプライバシー保護のために残さないことになっていて、既に消えてしまっていた。
情報の教諭は、画像認識ソフトがその例外を吐いた時に乗っていた生徒を呼びつけた。
「下着、改めさせてもらうわね」
そう言って、教諭がスカートをめくったところ、そこには下着がなく、むき出しの下半身があるのみであった。