4.質問と教会までの道中
「それじゃあ、まずはこの世界について教えてくれないか?」
俺達はこの世界に来たばかりで、この世界について何も知らない。まずは、それを知ることから始めよう。
「わかったわ。まず、この世界の名はフィラス。5つの大国を中心として成り立つ世界よ」
「5つの大国…?」
「まず、ソルリン王国…人間の国の中で一番の大国。私の居る教会もその国の管轄なの。その国には大きなギルドがあって、冒険者達もこぞってやってくるわ」
「へぇ、ギルドがあるんだ!行ってみたいな!やっぱりクエストを受けたりもするのか?」
「えぇ。よく知ってるわね」
「やっぱりそうなのか!早く行きたいな!」
「まずは、しっかりと魔法を使えるようになってからね」
「了解……ま、目標ができたと思って頑張るさ」
「前向きなのは良いことよ。さて、もう少し詳しく説明したいところだけど、自分で確かめた方が早いかもしれないわね…ソルリン王国については現地に着いてから案内するわ」
「ありがとう!」
「どういたしまして…さて、他の国についてだけど……」
そう言って、レナは他の国についても話してくれた。
レナが話したソルリン王国の他に、海の近辺に存在する国で冒険者や冒険者以外の人達が観光に来る国、リヴァイウォールや、鍛冶職人の人が多く居て、冒険者や兵士の人が使う防具や武器を作っている国、ガイアラスが存在しているらしい。
「残り2つの大国は?」
「残り2つは因縁深い国ね…1つは人と魔族、どちらにも属さない中立の国、シルブリーズ。そして、魔族達の国、ルナドーン」
「魔族達の国…」
そうか…俺が勇者として召喚された以上、魔王が居たっておかしくない。というか、居て当然だと思う。
何か、ますます今俺達が居る世界はファンタジー世界という実感が湧いてくるな。
ただ、今の所、そこまで大きな戦いが起きているようには思えないけど。
「…今は平和そうに見えるけど、他の所で争いが起きてたりするのか?」
「そうね…ここ200年ぐらいは大きな戦いは起きていないわ。ただ、200年前の勇者はこんなことを言っていたみたい」
「どんなことを言っていたんだ…?」
「“新たな勇者が誕生する時、それは新たな戦いの幕開けとなるだろう”そう口にしていたらしいわ」
「新たな戦い…じゃあ、俺が召喚されたことでまた争いが始まっちゃうのか?」
「自分が召喚されなければ戦いは起きることはなかったんじゃないか、とか考えてるの?それは気にしすぎよ。そもそも勇者が誕生する時なんて、大抵は世界に危機が迫っている時でしょ。レン、あなたは世界を救う為に呼ばれたんだから、胸を張って良いのよ」
「そうか…ありがとう、レナ……やっぱり、レナって結構優しいよな」
「私は優しくなんかないわ…ただ、あなたに借りを作る為に協力してるだけよ。私達の平和の為にも勇者には頑張ってもらわないといけないもの」
「そうだとしても、ありがとう。レナのおかげで色々と助かってる。これからも協力してくれると助かるよ」
「……はぁ、しょうがないわね…わかった、これからも私に出来ることなら協力してあげる」
そう言って、レナはこれ以上言うなと言わんばかりにそっぽを向いてしまう。
ちょっと図々しかったか…?まぁ、確かにレナを頼りすぎてしまったかもしれないな…気をつけよう。
結局、何だかんだで協力してくれる辺り、レナはやっぱり優しいけど、それに甘えすぎないようにしないとな。
「ごめん、ありがとな。レナ」
「フフッ。お礼ばっかりね…素直というか、なんというか…でも、悪い気はしないわ」
そう言って、レナは微笑んだ。
そんなレナの表情に思わず目を奪われる。
……今さらだけど、レナってかなりの美少女だよな。街中にこんな子が居たら、誰だって目を奪われると思う。
「どうしたの?私の顔に何か付いてる?」
「いや、ちょっとぼーっとしてただけだ…」
「大丈夫?教会に着いたら、まずは休息を取りましょうか」
「そうしてもらおうかな…そういえば、教会ってどの辺なんだ?大分歩いた気がするけど」
「もうすぐよ……ほら、見えてきた」
レナが指差す方へ視線を移すと、そこには大きな教会があった。
「えっ!?さっきまでこんなの全然見えなかったのに…結界でも張ってあるのか?」
「さすがに理解が早いわね!その通りよ。この結界は教会の関係者と勇者以外には見えないし、教会にも入れないようになってるの」
「へぇ、詳しい仕組みはさっぱりだけど、すごい結界だな…ちょっと中に入るのが楽しみになってきた」
「それじゃあ行きましょうか」
「あぁ!」
そう返事をして、レナの後を追う。
この結界の中にある教会に心を踊らせながら。
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〜side レナ〜
レンがこの世界のことについて聞いてきた。当然だ、彼はこの世界に来たばかりで何も知らないんだから。
私はその質問に答える。特に反応が良かったのはソルリン王国の話…ギルドについて聞いた時のレンは子供みたいにはしゃいでいた。
ある程度教会で過ごしたら私が案内してあげよう。そう思って、現地に着いたら案内すると伝えると嬉しそうにお礼を言ってくれた。
少し話してわかったけど、レンはお礼をよく言ってくれる。良くも悪くも素直だ。
「そうだとしても、ありがとう。レナのおかげで色々と助かってる。これからも協力してくれると助かるよ」
ほら、こんなふうに。私のちょっと捻くれた返事にもこうやって言葉をくれる。
あまりにも真っ直ぐすぎる言葉に照れくさくなり、ついレンから視線を逸らす。
大丈夫よね…?変な勘違いとかされてないわよね…怒ってるとか思われてないわよね?
「ごめん、ありがとな。レナ」
やっぱり少し勘違いされてる…?いや、でもそんな感じはしないし……フフッ、それにしても、またレンはお礼を言ってるのね。
何だか勘違いされてないか不安になるとか、そんな小さなことがどうでも良くなってくる。
レンとなら、楽しい冒険ができそう。教会に着いたらマザーに許可を貰うのもありかもしれないわね。
そんなことを考えていると、教会が見えてきた。レンは教会に張り巡らされている結界に驚いていたけど。
「へぇ、詳しい仕組みはさっぱりだけど、すごい結界だな…ちょっと中に入るのが楽しみになってきた」
そう言うレンの顔はとても期待に満ち溢れていた。
期待に応えられるかはわからないけど、教会はとても良い所だからレンにも気に入ってもらえるはず。
「それじゃあ行きましょうか」
そう言って、私は結界の中にレンを招き入れるのだった。
今回は、少しレナ視点も入れてみました。今後も別の視点を入れていこうと思います。
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!