ゼスティア戦記

　『光の帝国』と呼ばれる大国がある。厳格な君主制を敷きながらも市民寄りの政策と善政を牽き続ける数多くの王に尽力の甲斐もあり、今では非常に長い歴史を持つ。
　かの国の建国を支えた今尚存続する『太陽の騎士団』の初代騎士団長がかの大国の初代皇帝であり、彼に纏わる武勇伝は数多く存在し『光の帝国』では子供に利かせる寝物語として定番のものになっていた。
　一方、市井にはほとんど知られておらず偏執的な歴史研究家にのみに愛されている傭兵団『月の傭兵団』も同時代存在した。彼らは帝国の岐路に度々登場するのだが、結局詳細な情報の多くが後生に残ることはなかった。
　と思われていたのだが、近年彼らに関する詳細な情報が残っていることがわかった。それは大国の外、共和制を重んじるとある都市群で人気の演劇の演目であった。その名は『ゼスティア戦記』。これは、同名の手記をもとに作られているという。
　これはかの傭兵団を発足したとされる人物の物語、眩い光に埋もれた一人の少年の物語。