迷子チャイルド事件最終話
あれから三日が過ぎて再びツマとニッパーは天記神の図書館でぬくぬくしていた。
「ああ、あの子、無事だったみたいね。足の怪我も大したことなかったんですって?」
今日の天記神はやたらとツマ達に優しかった。ツマとニッパーは最高級おせちとお雑煮をごちそうになりホクホクした顔をしている所だった。
「そうそう。頑張った甲斐があった。ニッパー君の火花が良かった」
「ツマっちゃんの推理がけっこうさえていたっす」
お互いをやたらと褒め合う二神を眺めながら天記神が食後のお茶をすばやく出す。
「ほんと、あなた達には今回ばかりは感謝します」
天記神はほほ笑みながら閲覧コーナーの椅子に腰かけた。
「ところで……」
「ん?」
ツマが何か言いかけていたので天記神とニッパーは耳を傾けた。
「私、探偵やめようと思う」
「え?なんだか突然ねぇ……」
「ええっ!推理ごっこやめちゃうんっすか!」
ツマの発言に天記神は呆れた顔をし、ニッパーは心底驚いた顔をした。
「うん。なんか今回の事件を考えると私のやりたいことは推理じゃなくてレスキューなのかもって思った」
「れ、レスキュー……」
ツマの言葉に天記神とニッパーは驚きすぎて声が出なかった。
「な、なんだかいやな予感がするっす……」
「……わたくしもなんだかいやな予感が……」
天記神が閲覧コーナーの机に積んであった沢山の山岳レスキュー本をちらりと見る。いつの間に本棚から出されたのかわからないがツマが熱心に読んでいたようだ。
「しゅ、趣味が変わったようね……」
天記神が顔を引きつらせてニッパーに目を戻した。
「しかも山岳レスキュー……まさか全国の山を回るってわけじゃないっすよね?」
「ニッパー君!今もどこかで遭難してしまった人もいるかもしれない!冬休み時期だ!山登りをして迷った人がいるかもしれない!助けるぞ!ニッパー君!」
「やっぱりそうなるっすか!」
ツマの目の輝きを見て半泣き状態になったニッパーは天記神に助けを求めるべくアイコンタクトを取った。
「そんな目で見られても……彼女は一回言ったら聞かないでしょ……。どうせ暇なんだから行ってきなさい」
「今日はお雑煮食べてのんびりぬくぬくする予定だったのに!」
ニッパーの叫びもむなしく、やる気満々のツマにニッパーは引きずられるように連れて行かれた。図書館を出るまでニッパーは何か叫んでいたが全く意味をなさなかった。
「ふう……探偵ごっこは一年で飽きたか……。しかし、今年一年もあの子達とは戦わないといけなそうだわね……」
天記神はため息交じりに半開きになっていた図書館のドアを閉めた。
こうして事件だらけの一年間は終わったのである。




