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迷子チャイルド事件1

 新年を迎える少し前。

 十二月三十一日。ツマとニッパーはのんびり天記神あめのしるしのかみの図書館で年越しをしようとしていた。


 「あなた達ねえ……ご家族と一緒にいなくていいのかしら?」

 天記神が年越しそばを準備しながら呆れた顔でツマとニッパーに尋ねた。天記神は図書館奥の給湯室で現在山菜を入れてそばを煮ている。


 「いいの。私は正月に集まる予定だから」

 ツマは年越しそばのかおりを十分に楽しみながら天記神に言葉を返した。


 「私もそうっす。年越しは暇っすねぇ」

 ニッパーも年越しそばを気にしながら同じように天記神に返した。


 「……まあ、なんでここにいるのかわからないけど……とりあえず……年越しそばできましたよ」

 天記神がため息交じりに年越しそばを運んできた。


 「おお!年越しそばだ……」

 「年越しっす!」

 ツマとニッパーはすぐにそばに食らいついた。

 山菜たっぷりの温かいそばだった。


 「うまいっす!」

 「山菜をいただくのは木種の神としてごちそう……。皆ありがとう」

 それぞれ感想を言いながらツマとニッパーはあっという間にそばを食べ終わった。


 「……なんというか……すごい食欲だわね……。カウントダウンイベントとかに行ってくればいいのに……」

 天記神が頭を抱えながら言った言葉にツマとニッパーが反応した。


 「カウントダウン!?」


 「そうよー。イベントどこでもやっているわよー」

 「行きたい!」

 天記神に食いつくようにツマとニッパーが詰め寄った。


 「そ、そうねぇ。いってらっしゃい。……ん?」

 天記神がいつものようにイベント会場を教えてあげようとした刹那、図書館に何かが通り過ぎた。


 「え?何?今の……?今、なんか通った……」

 ツマとニッパーが不安げな顔を天記神に向ける。


 「……。魂が通ったわね……今……生きている人間の子供の魂が……」

 天記神は眉を寄せると図書館を通り過ぎた魂がどこの魂なのか検索を始めた。この図書館は霊魂の世界や夢の世界の通り道にある図書館だ。そして天記神は生きている者の魂がこちらの世界に入らないように監視をしている神でもある。


 「い、生きている子供の魂がここを通ったらやばいっすよね?こっから先は黄泉の国というか……死者の国というか……夢の国というか……」

 ニッパーがガクガク震えながら天記神に救いを求めるようにつぶやいた。


 「まずいわね……。魂の検索は終わりましたよ。日本人の子供。七歳の子。カウントダウンのイベントで夜の森に入った所、行方不明。寒い地域で雪が積もる山の中で迷子。そのまま眠ってしまっているようね。それにしてもおかしいわねぇ……。カウントダウンイベントは山の中ではやっていないのだけれど……なんでこの子は山で迷子に……」


 「とにかく、ここを通ったって事は生命が危険って事!こうしちゃいられない。ニッパー君!助けにいこう!」

 天記神の説明を聞いていたツマはいてもたってもいられなくなった。


 「行っても私達は人間に見えないから助けられないっすよ!」

 「それでも何かできるかもしれない!天記神はこの図書館から外に出られない制約つけられているんだから私達がなんとかするしかないでしょ!」

 ツマは怯えるニッパーを無理やり引っ張り、天記神に怒鳴った。


 「場所はどこ!」

 「……場所は……」

 天記神に場所を教えてもらったツマは不安げなニッパーを連れて図書館を飛び出した。


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