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やきポテト事件1

 木種の神、ツマツヒメ神と刀神のニッパーは女の子のための焼き芋パーティに夢中だった。

 季節は十一月。落ち葉も沢山落ちていて芋を焼くには最適の環境。おまけに冬が近づきなかなかに寒い。風も若干ある。


 そんな寒さにも負けずにふたりの少女はウキウキした顔で集めた落ち葉の中に芋を入れた。


 「天記神からサツマイモ貰えるなんて運がいいね」

 ツマは少し長めの木の枝で芋をつつきながら軽くほほ笑んだ。


 「ツマっちゃん!最近の女の子は女子同士でサツマイモパーティをやるなんてシャレてるっすねー。じゃあ、火をつけるっす」

 ニッパーは半分よだれをたらしながら火をつけた。ニッパーは刀神なので指をならすと炎を出すことができる。本来は刃物を鍛えるための炎なのだが今は芋を焼く炎になった。


 天記神はツマ達が神々の図書館から出て行かないので苦肉の策でてきとうなパーティ名を上げ芋を渡して追い出したに違いないのだがこの幼い少女達がそこまで気がついているわけがない。


 「焼き芋―!焼き芋―!」

 ニッパーはパチパチと燃える落ち葉を眺めながら手を叩いた。


 「でも、これけっこう時間がかかりそうだ。ちょっと山の中でキノコでもとらない?」

 ツマが木の枝でまだ生なサツマイモをツンツン突き刺しながらすぐ近くにある山を指差した。

 ここは一応、空き地だが直接山に入れる道がある。


 「そうっすねー。芋が焼けたら取ったキノコを焼くのもいいっすよねー。キノコ狩りするっす!」

 「じゃあ、いっぱい取ってキノコ汁にもしよう。この芋が入っていたカゴにいっぱい入れるの」

 すぐに目的が変わってしまったツマとニッパーはキノコを採るべく、近くの山へ素早く入って行った。


色々と見込んでいた天記神が他にきっと何か取ったりするだろうとわざわざサツマイモをカゴに入れてツマ達に渡したのであった。

 しばらくして芋が入っていたカゴにはキノコがいっぱいになった。


 「うわー!キノコこんなにあったっすね。ツマっちゃんのキノコ見る目は正しいっすから毒キノコが混ざっているわけないっすよね?」

 「もちろん。私は森の神なんだから」

 カゴいっぱいのキノコを抱えながらツマとニッパーは山を下りた。先程の空き地に戻って来ると焼いていた芋がなかった。芋どころか落ち葉も散らされてきれいになくなっていた。


 「あーっ!芋がないっす!火も消されて……」

 「なんだって!芋が盗まれた……ニッパー君、これは事件だ!」

 ツマは木の枝で落ち葉があった所を念のため探してみたがどうみてもなにもなかった。


 「これは大事件っすね!キノコを採っていた時間はそんなに長くないっすから犯人は近くにいるやつっす!」

 ニッパーはどことなく怒っていた。


 「まあ、盗んだのが動物なわけないしな……。動物は火の中に自ら入っていったりしない」

ツマはどこか悲しげな顔をしていた。まさか神が人間からものを盗まれるとは考えていなかったからだ。

 空き地のまわりには民家があるがとても静かである。窃盗をする人間がいるとも思えなかった。


 「……なんだか色々と勘違いをしているかもしれない。人間をそんなに悪く言ってはいけないな……。調べてみよう」

 ツマとニッパーはまず、落ち葉で埋まっている辺りを散策しはじめた。落ち葉をかき分けてみたが人間の足跡も動物の足跡もなかった。


 「うーん……落ち葉が多すぎて足跡がついていないっす……」

 ニッパーも手掛かりを探すがなかなか見つからなかった。焼け焦げた落ち葉すらない。


 「……もう仕方ない。木々に聞いてみよう……」

 ツマは自力で考える事を諦め、木々と会話をすることにした。ツマは木種の神のため、木々と会話ができる能力があるが、ツマが現在推理趣味のため縛りをつけているので木々はYES、NOクエスチョンしか答えてくれない。


 ツマはさっそく近くにある木に手を置いた。


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