ハローウィン事件最終話
「ツマっちゃん!彼が動いたっす!」
「むむ……」
ニッパーとツマは張り込みの刑事っぽく男の子を追いかけた。男の子は先程怒っていた女の子の元へと走って行った。
「あー!リュウセイ!遅い!何してんのよ!」
女の子は相変わらず怒っていた。
「リュウセイ……ああ、心配した。寄り道してたの?」
母親は若干呆れたような顔をしていた。
「ううん。ちゃんと時間通りに来たよ」
男の子は母親の言葉に首を横に振った。
「時間通りって……過ぎてるじゃない……」
女の子は男の子をしっかり睨んだ。
「ねえちゃん!過ぎてないよ!三時十分前だよ!ね?」
「はあ?何言ってんの?」
男の子と女の子はケンカを始めたが母親だけはクスクスと笑っていた。
「……?」
ツマとニッパーは眉を寄せながら顔を見合わせた。何やらさっぱりわからない。
その後、すぐに父親が戻ってきた。
「あれ?お前、会場に来てたのか。どこにいたんだよ……」
「うん。そこにいたの」
男の子は父親に先程までいた木々の茂みを指差して言った。
「なんでそんなとこに……?」
「時間じゃなかったから時間になったら行こうと思ってたんだよ」
男の子の言葉に父親も首を傾げた。
母親は事情がわかっているのかケラケラと楽しそうに笑っていた。
「おい、なんでさっきから笑ってるんだよ?」
父親が母親を不気味に思いながら見つめた。
「だって、この子ったらトンチみたいな事……あははは!」
「え?」
「だって今、三時九分じゃない?私達が待ち合わせしたのって何時だっけ?」
母親が心底楽しそうにぽかんとしている家族を眺める。
「三時十分前」
女の子が半分ふてくされた顔で吐き捨てるようにつぶやいた。
そこまで言って父親が気がつき、笑顔になった。女の子はまだ気がついていないのか頬を膨らませて父親と母親を睨みつけている。
「おい、まだ気がつかないのか?ははは!確かにまだ十分になってない!」
父親の発言でやっと女の子が気がついた。
「はあ?あんた、馬鹿じゃないの?三時十分前って二時五十分って事だよ!三時十分の前じゃないんだからー!」
女の子は気がついたが相変わらず怒っていた。それをみた男の子は「はっ!」と気がついた顔になり悲しそうに下を向いた。
「まあまあ、いいじゃないか。今度ちゃんと勉強しよう。そろそろ、ハローウィンパーティのパレードが始まるよ。後でカボチャプリン食べような~。しっかし十分前と十分の前か……天才だな」
父親のこの一言で女の子と男の子は笑顔に変わった。
子供は単純である。
母親は相変わらず爆笑していた。
「な、なるほど……今回は木々に聞いてもなんらわからない事件だったか……」
「ツマっちゃん、探偵もたまには推理できない事もあるっすよ~」
ツマとニッパーは子供の意外な発想に感心しつつ、なんだかんだ言って仲の良い家族にほっこりした気分になった。
「さて、事件は解決したし……あのカボチャプリン、子供は無料みたいだからこっそり頂くとするか」
「量は少ないっすけど無料だから我慢するっす!行こう!ツマっちゃん!」
「おお!先程から無料が気になってた!」
ツマとニッパーは早くも気持ちがカボチャプリンに移っていた。二神はスキップをしながらカボチャプリンが置いてある屋台に飛んでいった。
日本のハローウインパーティはとてもとても楽しかった。




